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33/37

ー33ー

《上司の目線》


『それでは、ローマ法王の入場です!』

 会場内に拍手がわき起こる。チケットは当日までにソールドアウトしているだけに、ドーム内にはすごい人だった。

 中身は本当のローマ法王でないド緊張の偽物の上司が階段を上がりステージ中央に立つ。

「今日は、皆様お集まりいただきありがうございます」

 控室からのスピーカーの音声もしっかり会場に届いている。控室のローマ法王には、会場内の映像がモニターから確認出来るようになっている。

 歓声や拍手がおさまるのを待ってしゃべり始める。

 国歌のように賛美歌を歌ったり、聖書の内容を読み上げていく、途中までは式典が最後までなんの不安もなく終了すると思われた。

 不穏な出来事は突如として訪れる。

 会場のどこかで銃声のような音が聞こえると、気づいた時にはローマ法王は撃たれてしまった。

「う…………ぅ」

 壇上のローマ法王がよろめく。

「(やっぱり反デモ集団が…どこかに」

 会場内は騒然とし、悲鳴のような声が飛び交う。


『2階席通路から会場を立ち去った黒い帽子に赤いシャツの男を追ってくれ、会場入り口は全面封鎖』


 一応の時のために、人間を装った天使が何十人か配備されている。

 ソルトのインカムからは、冷静な指示が各天使へと飛び交っていた。


『ソル!1階席中央五行目にいる黒い帽子に赤いTシャツの男の所持品を確認して』


「でも、ローマ法王は?」

『そっちは俺が何とかする』

 壇上に向かってきていたソルの代わりに、いまは青年になっている俺が、倒れたローマ法王の元へと駆けつけた。

「あ、あの…僕は死ぬんでしょうか?」

「天界の任務で死ねるなら、本望なんじゃないの?」

 ローマ法王を演じている天使の顔をのぞき込みながら俺は笑った。

「すいませんでした……僕には荷が重すぎです」

「だろうね(こんな土壇場までこないと謝れもしねーのかよ」

 俺は、彼の額に自分の額をくっつけた。

 そして、ゆっくりと瞳を閉じると、次の瞬間に俺はローマ法王として、その重たい体を持ち上げた。

「皆さん、静粛に落ち着いてください。私は大丈夫です」

 そう言いながらも、心臓からは血がどんどん流れている。

「この世界には、キリスト教の人もいれば、またそうでない人もいる」

 ザワザワとしていた場内が、少しだけ静かになる。

「違う文化圏の人々がなにかを恐れ刃物を突きつけようとも、私は何も恐れません。この銃弾が私の心臓を貫いていようともです」

『え、大丈夫なの?!誰がこんなことしたの?!』

 ローマ法王の言葉とは裏腹に、血はどんどん流れる。それと同時に俺の意識も少しずつ薄れ始めている。

「皆さん、犯人を探そうとしないでください。どうか大きな心を持って許し合える世界を作りましょう。それが、私達が信じている神が望んでいることです」

 控室から届けられる本物のローマ法王の言葉ではない言葉に涙する者もいた。

 人から傷つけられても、それを許そうとする寛大なローマ法王に心を打たれた人達なのだろう。

 そんな中で、一階に潜んでいた反デモの人間が俺に銃を構えるのが見えた。

 俺は自分の額を守るように左手で顔を覆った。

 バンッという銃声が聞こえ、左手につけていた指輪に力を込めた。


ーPERFECT GUARDー


 額を見事とらえた弾丸は、強化された指輪にぶち当たると、方向を変えてキィンという音を立てると違う方向へ飛んでいった。


 さすがの俺も身代わりの時間にも限界がきていたので、玉が額に当たったように見せかけて、そのまま後ろに転倒する。

 きっと一階の犯人は、ソルが捕まえてくれることだろう。

「救急車を呼んでください!!急いで!!」

 かろうじて、かすかにある記憶の中で、真後ろにいた青年くんが救急車を呼んでくれた声が会場内に響いていた。

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