ー3ー
私の仕事の終わりの時間を試す。と、上司が言っていたのだから、効率よく回るほうがいいんだろうけど、パソコンくんからメモをもらったのを見ると、この3箇所だけは先に回ること!みたいな指示もある。
迷っている時間はないから、とりあえずでも近くは回っておこうと思い歩き出した。
「あの、すいません。書類です」
一番初めに訪れた場所では、ため息まじりの人が受け取った。
とくに、なにかを言われたわけではないが、なんだか相手の態度が悪かったように思えなくもない。
気にせず次々と書類を渡していくも、
「もう少し早くできないものかね」とか、「いいかげんに期限ってものを守れないのかね」などと、お叱りを受けてしまった。
うちの上司は、天界でそうとう嫌われ者なのだろうか…どこへ行っても「すいません」と頭を下げ続けて1日が終わりそうだ。これが、毎日の仕事になるのかと思うと、さっき上司にここへ異動で大丈夫です。と言ってしまった事を早くも後悔し始めていた。
「あの…………すいませんっ」
ため息まじりに歩いていると、まだ赤ん坊のような天使に出くわした。
「エヴァーガーデンまで行きたいんですが、迷子になってしまって」
「えっと、エヴァーガーデンは…」
私がいま向かおうとしている場所とは真逆の位置にある場所だった。
「そこまで案内してもらえませんか?」
「あ、うん。ちょっと遠いけど一緒にいきましょう」
「優しいお姉さんでよかった…でも、お仕事中じゃないんですか?」
朝からの始まった書類の量は半分くらいが終わりを告げていた。
天界の端から端へと届け物をしているわけではないから、順番が決まっているわけではないし、困ってる人をまず助けようと思った。
「大丈夫、仕事中だけど気にしないで」
私は、歩きで目的地まで向かおうとして、小さな天使に質問をされる。
「お姉さんは、飛んだりしないんですか?」
私の歩く速度に合わせて、天使がパタピタと羽を動かしながら飛んでついてきている。
「羽を使ったほうが目的地まで早くつけますよ?」
「あー………前の仕事では歩きばかりだったので」
確かに、こんなにいろんな場所に行くことになるなら、飛んだほうが早いのかもしれない。
「あとは、あのポータルを使うとか?」
天界には、遠い場所から遠い場所へ向かう用の専用のルートみたいなものがある。
「あれは、上官位の人達しか使えないのよ?」
「そ、そうなんですね………」
ポータルを使う場合は、コンピューターで管理されていて、誰が使ったのかが分かる仕組みになっている。
なので、偉くない人は使う事は許されていない。
「ここがエヴァーガーデンよ」
「あ、ありがとうございます」
小さな天使さんは、私にぺこりと頭を下げると飛んでいってしまった。
「私も残りの資料を早く届けなくちゃ」
来た道を歩いて戻るよりも、さっきの子に言われたように羽を使って飛んだほうが、元の場所に戻るのは早いかもしれないと飛んで戻ることにした。




