ー29ー
最下層の1日は、人間界に一番近いこともあり、朝日が昇って夕暮れが来て終わる。
もちろん夜の仕事を任されているものもいるが、だいたいの天使は眠りにつく。
夕方になり、それぞれが今日自分達が使ったものをしまい始める。
私達は、その天使達が寮へ帰る帰路を1箇所にまとめた。
『お帰りは、必ずコチラを通ってくださーい!』
ビームサーベルのような工事用のライトを振りながら、私とソルトさんと偽物の上司は、天使の帰路を一人一人確認していく。
「(これなら、絶対に逃しはしないはず」
こないだ部署にやってきた青年の見た目を思い出しながら、検問を通していく。
「あ、あら?」
何万人という天使を通しながら、その数がどんどん減っていく。みるみるうちに、天使が寮へと帰還しきってしまった。
「もしかして、検問することがどこかからバレてしまっていたんですかね」
「そんなはずわ!だって、さっき考えた策ですよ?!」
検問の甲斐なく、最後の天使が通り抜けていく。私たちの目の前を通った天使の中から、上官を見つける事が出来なかった。
焦った私は、2人に呼びかけた。
「夜の流れ星製作隊の中も手分けして探しましょう!!」
まだ、仕事をするために雲の上に残っている天使を3人で片っ端から確認していく。
夕暮れ時だったのに、気づいたら真っ黒な夜になってしまっていた。
「見つかりませんでしたね」
「もう…ボクは諦めて寮に戻ります」
偽物の上司がトボトボと歩いていってしまった。
偽物の上司に「寮に戻る」と言われてハッとした。
「そもそも本人が寮をあの見た目で使っているなら、上官が寮に戻るわけもないですよね…」
いまさらながら気づいて愕然とした。
「振り出しに戻ったって感じですかね」
ソルトさんに言われて、私はもう一度上官が行きそうな場所を想像した。
「私、心当たりがあるかもしれません!行ってみます。ソルトさん、付き合わせてしまって、すいませんでした。おつかれさまです」
ソルトさんに手を振ると私は走り出した。
私は上官がいそうなアノ場所へと走った。
また、私は天使入室禁止区域の前に来ていた。本当にここにいると決まったわけではない。もし、見つかったら怒られてしまうだろうけど、ここ以外に考えつく場所がなかった。
キィッと古い扉を開ける。
そこは、最下層ではないからか、いつも通りの青空が広がっていた。
ジャングルのような森の中をどうやって進めばいいのか分からなかった。
耳を澄ますと、遠くの方で女の人の歌声が聞こえているような気がして、それを頼りに歩き出した。




