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28/37

ー28ー

 書類は1枚も進まないままに、次の日になった。

「えと、会議に出席すればいいんですよね?」

「はい。場所は案内しますので」

 偽物の上司に上着をかける。会議の内容は、出席してみなくては分からないので、あらかじめに何かを用意しておくことも出来ないけれど、とにかく席を空けることはできないので、代わりの人物ではあるが見た目は上司そのものなので、出てもらうことにした。

「それでは、行きましょう!」

 私は、相手が出勤してきてくれてよかった。と、思った。一応、私の後ろをついて歩いてきている。逃げ出しそうになくてよかった。

 会議室の場所へと案内をすると、そこにそうそうたるメンバーが出席してきた。

 メタトロン様にルシフェル様、ミカエル様にベアリエル様…他にも、私がこの仕事をしていなければ出会うことさえないメンバーの顔ぶれに震えが走りそうだった。

「(大丈夫かな……どうか、偽物を会議に出した罪に問われませんように」

 と、私は天界にいながら天に祈った。


 会議が終わったのか、どんよりした偽物の上司が帰ってきた。

「(えっと…部署に帰るまでは、まだ何があったのか聞かないほうがいいのかしら?」

 2人で自分たちの部署に帰ってきた。

「おつかれさまでした。いかがでしたか?」

「……それが…」

 あまりにも暗い表情の上司に、私もソルトさんも息をのんだ。

「今度、人間界で一番神に近い存在の教皇が、別の国で演説があるらしく、もしものことがあってはいけないので………影武者としてボクに死んでほしい…とのことでした…」

『え?』

 いままでにやってきた任務とは、かけ離れた任務すぎて目を丸くしてしまった。

「も、もしもの時とのことですから、もしもがあるとは限らないのでは?」

 私がすかさずフォローをいれた。

「でも、その…演説する国は…キリスト教が主な国ではないようで…」

「反発によるデモが起こる可能性が極めて高いということですね」

 ソルトさんが、オブラートもなしに怖いことを口にしてしまう。

「………うぅ、終わりだ…ボクの人生終わった…」

「でも、会議だったわけですから、当日の警護とかの話もあったわけですよね?」

「教皇を守るための警護であって…ボクを助ける警護ではないような…まー普通に不審者の警護はするでしょうけど」

 あまりにも上司の不安そうな顔に、私も何か出来ることはないか探した。

「当日の警護に私達も加われないのでしょうか…」

 私が、ソルトさんのほうを見ると、頭をフル回転させていそうなソルトさんからも意見がもらえた。

「僕達が、警護に加わるよりは、天界の表の警護とは、べつの観点から警護に加わったほうがいいような気もしますが(上層の警護部隊と同じ動きをさせられるほうが身動きが上手くとれない可能性もある」

「で、でも私達はすでに、本物ではない上司を上司として動かしてしまっているのに、さらにべつの行動をしてしまって……大丈夫なのでしょうか」

 この部署が、治外法権なのは理解しているが、その範囲を逸脱してしまっていないかが不安だった。

「それは、うちの上司が帰ってきた時に、あの人に怒られてもらいましょうよ」

「それは……そうですけど…」

 いまにも泣き出しそうな上司もどきさんをこのままにしておくのは、あまりにも可哀想な気がするんだけど…。

「うぅ…やっぱりボクには無理です…」

 上司もどきさんは、床にヒザをつけると、おめおめと泣き出してしまった。

「ともすれ、もう謝る機会を逃してしまっている以上…教皇のダミーをする以外にはないのでは?」

 少し冷たい意見のソルトさんの言葉に、心が打ちのめされてしまった上司もどきさんが、私に泣きついた。

「リリナさん!ボクをどうか助けてください!」

「え、あー…うーん…」

 上司の見た目をした人が、私の腰に巻き付いている。

「一か八か…検問をするのは、いかがでしょう?」

「演説の日のアンチを除外するってことですか?」

 ソルトさんから質問をされて、私は首を左右に振った。

「いいえ、私達は入れ替わった上司の見た目を知っています。夜になれば、天使は寮に戻りますよね?」

「そこを、引っ捕らえるわけですか?」

 本物の上司を見つけたところで、元に戻ってもらえるとは思えないけど、やっぱり説得する以外には、元に戻れる方法を考えることができない。

 なによりも上司の態度からすると、一生元に戻る気がないのも事実な気がする。

「どうにか頑張って探し出して、もう一回謝ってみましょう!」

 私は、偽物の上司の前に跪くと、上司の手をギュッと握った。

 きっと今度こそ見つける事が出来れば、この偽物さんだってちゃんと謝ることも出来ることだろう。



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