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「ミネルヴァさんが言った『信心深くない人を殺し、信心深い人を残す』その理念は理解しました。けれど、リストの中には、信心深い善人が含まれているのは、何故でしょう?」
青年に指摘されて、偽物の上司も今一度リストに目を通してみた。
「……あ。とある国の総理とか入ってますよ!!!これは重要人物では!」
「……………チッ」
明らかな舌打ちがミネルヴァ様から聞こえたような気がする。
「いいですか??善人を殺す目的を考えてみてください。善人の中でも、民意的に人から慕われている者が亡くなると、どうなりますか?」
ミネルヴァ様から問われて、偽物の上司が答える。
「えっと………悲しい気持ちになる?」
「そうです!これは、心の揺さぶりです。善人でない人間も心を揺さぶられることにより、善人であることを思い出す輩もいるのです。そのための贄です」
「な、なるほどぉ」
よくわからないけれど、分かったようなフリをする偽物の上司。
「つまりは、相乗効果として80%に近づくためなら善人を殺すことを厭わないと言う事ですね?」
ここは、いつから法定の場になってしまったのやら、青年はミネルヴァ様に詰め寄っていた。
「もちろん、我々も出来るだけの配慮はしているつもりです。けれど、これが最善と思われます」
「たくさんの事を考えて書類は作られていたんですね。そんなにいろんな事を考えた上での書類なのに、何故この部署での承認は必要なのでしょうか?」
それは、私もずっと思っていた事だ。わざわざ、第3階層なんて低次元の場所から承認を出しているのだろうか?
「…?それは、レアル様が人間界のすべての人間に対する人権の管理を担っているからです、よね?」
なんで、そんな当たり前な事のおさらいをさせられているの?と言いたげなミネルヴァ様が眉を曲げている。
『(えーーーーーーーー?!』
そんなにすごい人物だと言うことを、3人がいま知ることになった。
「この部署に来て、レアル様が人権の吟味をされたいと言うことは分かりました。ですが、書類は早めにお願いします」
そう言い残すと、ミネルヴァ様がこの部署から立ち去ってしまった。やはり、皆さん忙しいんだろう。
「それで?なんで、最下層に?」
ずっと黙っていたソルトさんが、青年に向かって口を開いた。
「選ばれた善人の心が汚れてしまった理由を探していたのさ」
『?』
「人間界の生活に一番近い部署が最下層の天使達だ。人間に小さな幸運を届けたり、人の行動に対する指揮をしている」
人間が守護霊からの通達だと思っている、ほとんどが天使からのメッセージなことを言っているのかしら?
「でも、人間側がその受け取り拒否や指揮した道に進んでいないのか、はたまた天界側が故意に伝達していなかったのかを調べに最下層には行った」
「そこで、不用意に上官に文句を言ってきた輩がいて、いまにいたる。と…」
ソルトさんが補足をして、いまの事態が明らかとなった。
「ま、そういうことダネ」
「す、す、すいませんでした!!サボっているなんて言ってしまって」
偽物の上司をした見た目の天使が上官へ頭を下げた。
「謝っているんですから、元に戻してあげてください」
私からもお願いをしてみたけれど、上官はあっさりと否定した。
「それは、無理だね。君が心から申し訳ない。と思わない限り元には戻れない呪いをかけておいた」
「はい?」
「つまり、いまの謝罪で元に戻らないあたり、君は俺に『申し訳ない。』なんて、思ってなんかいないんだよ」
「そ、そんなことは………」
そもそも、天使が他人に呪いを仕掛けるって…大丈夫なの??
上官は、ココで謝ったら元に戻ると思っていたから、部署にやってきたのかしら?いや、元に戻れなくてもいいって言っていたのだから、そんなこと考えてなんていないんだろう。
「それでは、俺もそろそろ失礼するよ」
本物の上司もこの部署から出ていってしまった。




