ー23ー
「いきなりどうしましたか?」
上司が泣き出しそうな緑色の瞳でこちらを見つめ返してきた。なんだか、いつもの勝ち気な性格と真逆すぎて調子が狂うわ。
「人間の世界の人口を1000人抹消する。だなんて…そんな書類への承認にサインなんて出来ません!」
「え…」
普段、上司がどんな内容のものと向き合っているのかも知らなかったので、ポンポンと押されていく書類を横目に、もうすこし業務スピードがとか思っていた自分を反省したくなってしまった。
「では、他の書類に」
ソルトさんが、別の書類と交換する。
「こっちにも…人口の削減で、一万人を死亡させる。って書いてあります…。ボクのサインで、ボクの意思でそれが決まるってことなんですか??」
ここに届く書類は、大天使様へ行く手前の段階ではあるが、ほぼ決定事項になるための内容達なことは間違いないと思う。
「ほぼほぼ、そんな内容しかないんですか?」
「…………集団毒殺に導く。……テロによる爆撃…………うぅ、ボクにはちょっと無理です!!」
書類の内容を読み上げているだけでも吐き気がしてきてしまったのか、上司もどきさんが、この部屋から脱走していってしまう。
「困りました…どうしましょう」
「やっぱり入れ替わった側の奴をどうにか探すしかないってことなんでしょうか」
ソルトさんと私は、話し合いの末、本物の上司を探すことにした。
もしも、困ったり伝言があるときは、部署に一度帰って来ることにして、私達はそれぞれ散り散りになった。
とにかく、私は逃げた上司もどきさんを発見して、普段の特徴を聞くのか、一緒に探さてもらえないか。説得を試みるつもりだ。
第三階層の廊下を走っていると、誰かに私は呼び止められた。
「リリナさん?どうされました」
「あ!ルシフェル様!」
いつもより上品な喋り方のルシフェル様とすれ違っていたみたいだ。廊下を走っていることを怒られるのかと思いきや、心配そうに顔を覗き込まれた。
「あ、あのっ!ウチの上官を知りませんか…??」
息を切らせた私が話しかけると、ルシフェル様は少し悩んでから口開いた。
「今日、どこか変なところで一回みたような気がするんだけど、どこだったかな。すごい下層にいたような気がするけど」
「あ、ありがとうございます!」
私はリュシフェル様に頭を下げると、下層への道を走り出した。
「(あらあら、純朴な配下ってちょっと可愛いじゃない…(苦笑」
ルシフェル様の言葉通り私は下層に行くことにした。正直、下層の天使と入れ替わったとしても、まともに働いている姿を想像できなかったので、行けばすぐに分かるだろうと思っていた私の心は見事に裏切られることになる。
『えいほ、えいほ』
ー最下層の間ー
そこは、まだ羽が生えたばかりの天使達がよりそって、何かを成し遂げる場所になっている。
例えば、雨を降らせたり、虹を作ったり、カミナリを作ったりということを人力で行っている場所となる。
赤ちゃんの天使からお兄さんの天使までいるが、誰も彼も真面目に自分の仕事に向き合っていてサボっている人など見つけることすら出来ない。
「(まーそれがあたりまえよね…」
私は、すこしため息まじりに歩き始めた。




