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※これは、まだハラスメントとかない時代のお話です。もし、ハラスメント等に過敏な方はお控えください。
私の上司が喋っている相手は、なんと悪魔だったのだ。
「……………………え」
天界に悪魔がいるというだけでも驚きを隠しきれないのに、上司はなにやら相手と話し合いをしているようだった。
カメラの映像からでは、どんな会話をしているのかまでは分からない。
「こ…これは……いったい」
密会の瞬間を見てしまったのではないか?と、心がザワザワとしてしまっている。
「大丈夫ですよ。アナタが考えているような事では無いです」
「え」
ソルトさんは、私の不安を取り払うように笑った。
「よくあることです。天国と地獄が争わないための協議をお互いの島で行っているだけです。うちの上司は、魔界の方との話し合いの席に呼ばれることが多いらしいです」
「そうだったんですね」
自分たち天界の内側に敵を招き入れることがあるなんて知りもしなかったけど、それによって天界の安全も守られているのかしら。
「それに、魔界の人からしても親しみやすいのかもしれないですね。うちの上司は、天界で唯一の黒髪ですし」
初めて会った時、たしかにすごいビックリしたことを覚えている。
天界の天使様達は、金髪の髪色に青色の瞳というイメージが多いのに、うちの上司は真っ黒い髪に紫色の瞳をしている。もしも、これで真っ黒い衣装など着ようものなら、それこそ魔界の住人と間違えてしまうかもしれない。…性格も天使様のソレでは全然ないですし。
「無価値なる者」
「え?」
突然のソルトさんの冷たい言葉に息を呑んだ。
「神様があの人に与えたモノです」
「………………え」
あの人というのは、上司のことだろう。でも、上司へ神様が与えたものが無価値というのは…。
「だから、あの人に本来名前はないんです」
「え?!」
「だから、皆さんあの人の事をあだ名で呼ぶんです。階級であったり役職であったり」
名前がないから、私が名前を呼ぼうとした時に戸惑っていたんだろうか?
「誰からも必要とされないから、雑務を担当する『何でも部署』を作り、そしてオイッて人から呼ばれることで、自身の存在の確認をしているんですよ(たぶん」
生まれたばかりの赤ちゃん天使に名前がない。ということはあっても、こんなに上級クラスの人に名前が与えられていないなんて…。
「おそらく、この人が魔界の奴等と会議をさせられているのも……いつ殺されても困らない存在だから、です(それでも、うちの上司はいつも断りもせず仕事をしているわけですけど」
「そんな………」
それを聞いてしまったら、上司が会議に出たくないわけが分かってしまった。
こないだ私が「意見は言ってみなければ分からない」って言ったけれど、この方にはそもそも発言権などというものは与えられていなかったんだわ。
自分も天界で働いていながら、なんでこんな事しているんだろう。って思う時があるけれど、自分に価値がない。と言われながら働くって…どんな気持ちなんだろうか。私には想像も出来なかった。
ボクは家でも学校でも職場でも恋人とも
この扱いだったので…それでも生きないといけないって、なかば人生を諦めざるを得ないんですよ。さらに、死ぬことすら許されないのだから。(大丈夫。苦しくないよ。文章に出来てるから、まだ生きてるよ)同情されるのが一番苦しいから、それだけはやめてほしい。
これは、ただのお願いです。




