ー10ー
私は、やっぱり気になって上司を迎えに行くことにした。
控室の前で待っていると、式典が終わったのか、ベアリエル様がやってきた。
「………!!」
あまりにも緊張しすぎて、すれ違いざまに頭だけをペコリと下げた。
向こうも立ち止まると、私なんかに頭を下げてくださった。
言葉には出来ない気持ちでいっぱいになった。
他の天使様もゾロゾロと帰ってくる中で、うちの上司だけがどうも見当たらないような気がする。
「(………まさか、式典に出なかったなんてことないわよね」
ソルトさんがよく「あの人はサボ魔だから」と言ってるのを聞くかぎり、あながち間違いではないのかもしれない。
私は、ベアリエル様と同じ控室の上司の扉をノックした。
扉を開けた先の部屋で、上司が椅子に座ってモニターを眺めていた。
「あれ?りーにゃん?」
「その、まさかとは思いますが、式典にでなかったんですか?」
私の険しい顔に、焦った上司の言い訳が始まった。
「え、その、モニターで会議の内容はちゃんと把握してたよ?」
内容を理解していたとしても、会議に出ていないのなら、上司の考えを他の誰かに届けられないではないか。
「しっかりと毎回参加することに意味があるのでは??」
「俺の意見の必要性はないよ」
「必要あるか、ないかは、議論しなければ分からないのでは??」
私に想像以上に怒られてオタオタしている上司を見るのは初めてかもしれない。
そういえば、この部屋に入っていったベアリエル様を見たはずなのに姿が見えない。この部屋から出てきた所は見ていないのに。
「あの、つかぬことをお聞きしますが、ベアリエル様は…どこに?」
「ああ、この控室の向こうにポータルがあるから、そこから別の場所へ行ってしまったよ?そういえば、憧れの天使様なんだっけね。引き留めておいたほうがよかったかい?」
行き止まりの部屋かと思っていたら、別の場所へ抜ける扉があったみたいだ。
「あ、いえ。ミーハーな気持ちでやってきたわけではないので」
「迎えに来てくれたのかと思っていたのに、残念」
上司は立ち上がり、今日の仕事は終わったとばかりに自分の部署へと戻ろうとしているみたいだ。
「会議にはちゃんと参加しないとですよ?」
もう終わってしまった会議のことで文句を言っても仕方ないだろうか。
「俺は、書紀みたいな役割だったから、これでもちゃんと仕事はしてたよ?」
その言葉を聞いて、少しだけ安心してしまった。
振り返った上司の髪型も喋り方もいつもより丁寧で、なんだか上司が上司じゃないと勘違いしてしまいそうだった。




