6「アームストロング日記2」
アームストロングは田園風景が濃いショパンの故郷「ジェラゾヴァ・ヴォラ」にて、木製の小舟にいて、作曲していた。
今度、ショパンとラフマニノフの公開演奏会にゲストとして参加することになったので、その演奏会で自分の曲をピアノで弾くことになったのだ。ショパンのようなピアノ曲を!と意気込んでも、メロディーが浮かんでこない。小舟は空間操作されており、直径5メートルの小舟の中に入ると、自分の体が小さくなり、まるで演奏会場の大ホールくらいの広さに化けるのだ。
まさに霊界だからこそである。アームストロングは熟考していた。素敵なメロディー。そうだ!ショパンとラフマニノフの相棒愛を表現してみたい。感動的なフィナーレを。曲の方向性は定まった。あとはメロディーだ。作曲はショパンに学んで13年になる。しかし、ショパンの作曲力、旋律発想能力は異常だと自分が作曲を学んでみて、身に沁みた。船にカエルが忍び込んできた。「おはよう!今日も作曲かい?いいアイデアは閃いたかい?」アームストロングは田んぼの上で水深が20センチくらいの場所に小舟を浮かべて、作曲していたのだった。
「いや、ショパンは別格だね。たくさんの新しいメロディーを発見し、ピアノ芸術に昇華する天才だからね。彼のようにはいかないよ」
「よせやい、君みたいな有名人に褒められると嬉しいじゃないか」なんと、そのカエルはショパン本人だった。カエルに化けていたのだ。
「ショパンさん!私を見守ってくれていたのか?ありがとう。なぜ、あなたはあんなにも音楽が上手なのでしょうか?」
「こればかりはピアノへの情熱とか、努力とかの問題じゃないよ。僕はピアノから生まれたから。ピアノの王様の子供だから、ピアノの王様の生命遺伝子を受け継いでいるからかな。血だよ。血から違う。僕は生まれたときからピアノの天才だった」
「では、ずるいというか、運でしかないですね。」
「運も実力の内だよ」
「私も天才になりたかった」アームストロングはやはり生まれた時の血筋で天才になったショパンに嫉妬した。
「運命は自分で決められないこともあるよ。自分で選べない運命も現実にはあるよ。それは受け入れるしかないよ。それが強くなるということさ」
「羨ましい……」
「ショパーーン!!!」
いきなりラフマニノフが現れた。
「駄目じゃないか!夢を壊すようなことを言ったら。アームストロングよ!これからは俺のところで作曲を学びなさい。無限に向上していけることを目指そう!ショパンを超えるという壮大な目標を今、ここで立ててもらう!」
「現実主義のショパンと理想主義のラフマニノフ。良いバディだな。なんか、冷めた旋律と元気な旋律を入れたピアノ曲にしよう!」
アームストロングはショパンとラフマニノフに作曲のヒントをもらった。
頭で考えるより、実際に表現したいものに触れて、体験することこそ、自己表現の極意だと学んだ。