保土ヶ谷ゾンビ
1日目。
目が覚めた。
周囲を見回し部屋が変わっていないことを確認する。
「ふぁぁ」とあくびをしながら、洗面所に向かう。
顔を洗い、代わり映えしない自分の顔を鏡で見て「なぜ、ここにいるのだ?」とゾンビは疑問に思う。
部屋に戻ると、食事が用意してあった。
壁に30センチ四方のガラス扉がついており、そこに食事があった。
トースト、ソーセージ、ゆで卵、リンゴ、牛乳。
プラスチック製のトレイにこれらが並んでいた。
備え付けの机に持って行き食べ始める。
若干、物足りなさを感じる食事はあっという間にゾンビの腹におさまった。
トレイをガラス扉の奥に返却し、ごろりとベッドに横になる。
場所は分からない。
時間は分からない。
監禁する目的も分からない。
「誰かの恨みをかったか?」と思ったが、それならば食事は出さないはずだ。
とりあえず自分を殺すつもりはなさそうだ。と今までの人生で考えたことが無い考えが頭に浮かぶ。
少し仮眠をとるか。と思いゾンビは目を閉じる。
目が覚めた。
体感的には2時間ぐらい寝ていたみたいだ。
やることがないので手持ち無沙汰に昨日と同様にドアの近くに受話器で通話をしてみる。
「もしもし……」
通じている様だが、相手は返事をしない。
1度受話器を置き、何度か通話を繰り返したが相手は返事をしない。
ため息をつきながら受話器を置くとガラス扉の奥に食事が届いていた。
トースト、トンカツ、ゆで卵、リンゴ、牛乳。
朝と同じトレイにこれらが並んでいた。
備え付けの机に持って行き食べ始める。
「トンカツを出すか?」と呟き、監禁される意味を考えながら食べすすめた。
トレイをガラス扉の奥に返却し、再び受話器に向かう。
「もしもし……」
通じている様だが、相手は返事をしない。
今回は根比べだと思い何度もかけ直す。
受話器を持ったまま無言でいたり、突然大きな声を出したり、受話器を壁に打ち付けたり
何をやっても相手は反応しない。
「今日は諦めた。」
これ以上やっても無駄だと思い、その思いを口に出しながら受話器を元の場所に戻し、疲れを癒すためにシャワールームに向かう。
シャワーを浴び、部屋に戻ると、また食事が用意してあった。
トースト、唐揚げ、ゆで卵、リンゴ、牛乳。
トレイを持ちながら、ゾンビは自分を監禁した奴の思惑を考えた。