保土ヶ谷ゾンビ
横浜駅から数駅の保土ヶ谷区に住むゾンビの話。
ゾンビは元々人間だった。
海外ならまだしも火葬が一般的な日本で墓から亡くなった人が再び動き出す、そんな映画やゲームの様なことは起こるはずがない。
だがゾンビは生き返った。
心臓が止まった状態で動き出した。
冬の深夜のことだった。
「ドンッ!」と低音と共に体が跳んだ。
交通事故だ。車に轢かれた。と思った数秒後には意識を失った。
気が付いた時は病院だった。
周囲に健康診断で見かける名前の分からない器材があり、そこからコードが体に繋がっている。
着ていたスーツは脱がされて、ベットで寝かされている。
暗い室内に1人きりだった。
意識がモヤモヤしながら目だけを動かしている時、1人の看護師が入ってきた。
無言のまま最低限の室内の電灯をつけて、慣れた手つきで器材の電源を1つ1つオフにしていき、コードを取り外してく。
その表情は暗く「夜勤は大変だな。」と思いつつ看護師を目だけで見ている。
看護師は部屋を出ていき、塗れたタオルと化粧道具を手に戻ってきた。
濡れたタオルで顔、手足、体と拭かれた。
タオルの赤と黒の混じった汚れが目についた。
看護師が化粧道具を手に持ち、化粧を施そうとした時、
「ねえ、何をやっているの?」と声をかけた。