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保土ヶ谷ゾンビ

食事をしながらのドライブは3時間程で終わる。

毎回なぜか寝てしまい犬山さんの「着いたよぉ!」の声でゾンビは起きる。

車は既に地下の駐車場に停車し、場所の詳細は分からない。


車から降り3人は犬塚さんを先頭に自動ドアに向かう。

慣れた手つきで無人の受付を操作した後、「またね!」と手を振る犬山さん達に会釈しゾンビは奥に進む。


そこからは人間の時の健康診断と同じだ。

簡易な柔らかい布地の検査着に着替え廊下に描かれた案内の順に進む。

違うのは健康診断を受ける患者がゾンビ1人なことと検査を担当する医療関係者が誰も話さないことだ。


最初は戸惑ったが、元々口数の少ないゾンビは身振り手振りやドアや壁をノックすることで対応していった。

今では担当する医療関係者もお互いに慣れたものだ。


手元の検査のチェックシートを全て埋め、担当した医療関係者から終了の合図を貰い、ひと段落をつく。

最初の更衣室に移動し、検査着を脱ぎ私服に戻り更衣室を出て、最後の問診に向かう。


ドアをノックし「どうぞ」の声と同時に部屋に入ると、白衣を着た医師は先ほどの検査結果を見ながら声をかけてくる。


「最近はどう?」

「変わらずです……」

「食事と睡眠は?」

「いつも通りです……」


医師はキーボードで数文字を電子カルテに入力した後、聴診器を持ち「そう、胸を見せて」と言った。

服をはだけ、ペタペタと聴診器が触れるのをゾンビは感じる。

「後ろも」と言われ素直に椅子を回転させる。

またペタペタと聴診器が触れるのを感じる。

「もういいよ」と言う言葉で前に向き直る。


医師は既に視線を電子カルテに向けつつ「変化なし……今回も不明」と独り言をつぶやく。


医師は少し椅子を動かしゾンビに話しかける。

「今回も君の心臓が動いていない原因は分からなかった、本当に体に異変は無いかね?」

「無いですね……」

「そう……何か気になることがあれば些細なことでも言ってくれ」

「はい、分かりました……」


その後、2、3会話を繰り返した後、医師が言った。

「他に何か気になる事は無いかね?」


ゾンビは一瞬戸惑ったが、気になることを聞いてみた。

「先生は今日、何でネコ耳なんですか?」




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