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068 巡る世界

 ドワーフの里の地下のボス討伐から、一週間後。

 俺はアリエスが滞在しているドワーフの長の屋敷に、マリカ様と一緒に訪れていた。


「これはこれは、ようこそおいでなさった」

「失礼いたします」


 出迎えてくれたドワーフの長に、広い客間へと通される。

 毛皮のマットが床に敷かれており、どうやらここに座るようだ。

 俺たちが待っている間に、お手伝いさんたちがお茶の準備を進めていく。

 茶葉が蒸れて優しい香りがほのかに漂うころに、ラディルとアリエスも客間にやってきた。


「マリカ様! 店長さん!」

「ラディル、元気だったか?」

「はい!」


 相変わらずというか、特に変わった様子もなく元気なラディル。

 その背に隠れ、アリエスがうつむきがちに控えている。


「アリエスも、体調に変わりは無いか?」

「は、はい! お気遣い、ありがとうございます」


 いつも通りのマリカ様の対応に、安堵した様子のアリエス。

 ようやく顔を上げて、こちらに見せてくれた。

 額の聖痕が神秘的な雰囲気を漂わせているが、内面や思考は特に変わっていないようだな。


「ほっほっ。みなさん、まずはおかけになりなされ」


 ドワーフの長に促され、俺たちはラグに腰かける。

 そしてお手伝いさんが各々の前に、お茶を並べてくれた。


「改めまして。アリエスを保護していただき、感謝いたします」

「いやいや、大したことは。二人とも、とても良い子にしておりますぞ」


 まるで孫が泊りに来てるような口ぶりの、ドワーフの長。

 ゆっくりとお茶を飲みながら、ラディルとアリエスを眺める。

 マリカ様は出されたお茶を一口飲み、ラディル達に向かって話を切り出す。


「率直に聞こう。アリエス、君はこれからどうするつもりだ?」

「え、あの……」


 お茶に手を付けることも無く、アリエスは緊張した面持ちでマリカ様と視線を合わせる。

 一瞬ラディルの方に視線を向けてから、ゆっくり答えるアリエス。


「……修行の旅を、続けます……」

「そうか」


 アリエスの答えを聞き、お茶をもう一口飲むマリカ様。

 そして今度は、ラディルに問いかける。


「ラディル、君はどうしたい?」

「えっ!? オレ?」


 突然の問いかけに、驚くラディル。

 新米騎士のラディルに、任務に関する権限は無いに等しい。

 これは本人の意向を、確認するものだ。


「アリエスと一緒に、行きたいです」

「……そうか」


 ラディルの意見を聞き、ゆっくりと息を吐きだすマリカ様。

 アリエスたちが、じっとマリカ様の様子を窺う。


「実はアリエスの動向を見守るためにも、騎士団を何名か旅に同行させようという話になっていてな」

「え!? オレも一緒に行きたいです!!」

「無論、そのつもりだよ」

「……よかった」


 緊張が解けて、喜びあうラディルとアリエス。

 てっきりもっと拗れるかと思ってたけど、意外と問題視されないんだな。

 なんだか俺も安心して、ゆっくりとお茶を啜った。


「新たな星巫女の誕生を拝めるとは、長生きはするものですな」


 嬉しそうにラディルたちを眺める、ドワーフの長。

 そういえばドワーフの長は、星巫女について知ってるようだけど――どこまで知っているのだろう?


「あの……新たな星巫女が誕生すると、何か変わるんですか?」


 人間界の脅威と思われてはこまるので、ふんわりと質問してみる。

 アリエス編のエンディングは、誰も居ないイサナ王国に主人公とアリエスの二人が立っているというもの。

 公式設定資料集の製作者コメントでは、イサナ王国が滅びた描写なのか、主人公とアリエスが死後の世界に旅立った描写なのか、プレイヤーの判断に委ねると書かれていた。

 実際の結末がどうなるのか、俺にもわからない。


「わしも実際に見たことは無いが、新たな世界が作られるとかなんとか」

「新たな世界、ですか」


 ドワーフの長の答えは、思っていたよりぼんやりとしていた。

 でも長やドーネルさんが星巫女のシステムを知っているということは、いきなり世界が滅亡する――ってことは無さそうだ。


「時代が変わる、ということでしょうか?」

「ほっほっほ。そうかもしれませんな」


 マリカ様の質問にも、のらりくらりと答える長。

 それでいて、マリカ様は好意的に話を捉えてる顔をしていた。

 話が一段落すると、ドワーフの長は次の話題に移る。


「それはそうと、祭りの話なんじゃが」

「祭り?」


 何それ、聞いてない。

 冷めてきたお茶を一気に飲み干し、長は会話のスピードを上げる。


「地下の魔物が討伐されて、里の民たちが盛り上がっておりましての。やれ、祭りだ祭りだ~!! っとうるさくてかなわんのです」

「はぁ……」


 どちらかというと、酒だ酒だ~の間違いじゃないだろうか。

 酒瓶両手に盛り上がるドワーフたちを想像しながら、マリカ様の方を見る。


「イサナ王国も、じきにカプリコーンの節に入ります。騎士たちの慰労も兼ねて、共に祭りを行うことにしたのです」

「そうだったんですね」


 カプリコーンの節は、イサナ王国の年末年始にあたる時期なんだっけ。

 アリエスの件でバタバタしていて、すっかり失念していたな。

 それにしても……意外と、ドワーフとイサナ王国の友好関係は続きそうだ。


「それで店長殿には、ピコピコの出店や料理の提供を協力してもらいたい」

「そういうことでしたら、ぜひ!」

「ほっほっほ。民たちも喜びますぞ」


 ちょっとラディル達の様子を見に来たつもりだったけど、この日の話は終始祭りの準備についてになった。

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