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061 ピコピコ交流会

 キーリウ会談から数日後――

 ピコピコの定休日に、三人のドワーフを招いての交流会が行われることに。


「今日はよろしくたのむ、店長殿」

「はい、マリカ様」


 交流会には王国側から、マリカ様が同席してくれることに。

 緋色の狐騎士団スカーレットフォックスやラディル達は、もう地下の魔物討伐に向かっちゃったからな。

 とはいえ、交渉事ならマリカ様が一番安心かも。

 ちょっと強引だけど、ちゃんとフォローもしてくれるし。


「あれー、あの人たちじゃん? おはよーございまーす!」

「やや、お待たせしてしまいましたな」


 里の広場で待っていると、三人のドワーフが駆け寄ってきた。


「いやはや、本日はよろしくお願いいたします」


 丁寧な口調の男性は、先日の会議で進行を務めたドーネルさん。

 彼はドワーフの里の、ダンジョン管理をしているらしい。


「今日はよろしくね!」


 元気な挨拶をしてくれた女性は、フーワさん。

 そして――


「……ぉぅ」

「アンタッ! ちゃんと挨拶しなっ!!」

「おう、よろしくたのむ」


 ちょっとシャイなのは、フーワさんの旦那さんのドワワさんだ。

 フーワさんとドワワさんは、食料となる動物の狩りをしてる猟師さん。

 ダンジョンと食料関係ということで、いたりあ食堂ピコピコとの交流が提案されたのだ。


「私は白銀の鷹騎士団(プラチナ・ファルコ)の団長、マリカだ。こちらが、いたりあ食堂ピコピコの――」

「天地洋です。皆さんからは、店長と呼ばれています」


 紛らわしい名前で呼び方に困らないよう、店長呼びを推奨する自己紹介。

 ドワーフのみなさんも、ちょっと和やかになる。


「では店長殿、さっそくお願いします」

「はい。――バックヤード!!」


 マリカ様に促され、バックヤードへの扉を出す。

 突然現れた扉に、フーワさんとドワワさんは驚いて少し飛び退く。


「それではみなさん、中へどうぞ」

「では、おじゃましますね」

「お、おう……」

「すごい……この先が人間の国なのね」


 真っ先に扉をくぐるドーネルさんを、フーワさんとドワワさんが追いかける。

 三人が店に入った後に、俺とマリカ様も店に入った。


「ここは、食糧庫ですかな?」

「はい、店のバックヤードなんです。ささ、店内の方へどうぞ」


 興味深そうにあたりを見回すドワーフたちを、店の中へと招き入れる。

 中ではフェルミス君とトルトが、お茶会の準備をして待っていた。


「いらっしゃいませ! ドワーフのみなさん」

「どうぞ、こちらに席をご用意しております」


 ドワーフたちを出迎え、席へと案内する。

 バーカウンターのある部屋のテーブルに、ナプキンやカトラリーが綺麗にセットされていた。


「うわぁ! すごい、カワイー!!」

「酒! 酒が大量にあるぞ!」

「アンタッ!!」


 カウンターの奥に並べられたお酒に引き寄せられるドワワさんを、フーワさんがテーブルへと引っ張っていく。

 店内を見回しながら後を追うドーネルさんが、レジのあたりで立ち止まる。


「……おや? これは……」

「どうかされましたか? ドーネルさん」

「ああいえ、なんでもございません」


 何か気になったようだったが、他の人を待たせないように席に着くドーネルさん。

 俺とマリカ様、ドワーフの客人たちが席に着く。

 落ち着いたところで、フェルミス君がお茶を運んできてくれた。


「コーヒーとティラミスでございます」

「わあぁ、良い香り!」


 目の前に並べられた食事に、目を輝かせるフーワさん。

 ドワワさんも、キョロキョロと他の人の反応を見ている。

 食事を並び終えたフェルミス君に、俺はそっとお礼を言う。


「休みの日なのにありがとう、フェルミス君」

「いえ。僕もドワーフの方々のお話に、興味がありますので!」


 そう言って、テーブルの端の席に着くフェルミス君。

 初めからしっかりしてる子だけど、最近やけに気合入ってるんだよな。

 この前、ガルガンダ先生が来た頃からか。


「では交流会を始めましょう」

「おう! カンパーイ!!」

「……アンタ……」

「あははは……コーヒー、いただきますな」


 マリカ様のかけ声で、俺たちの交流会が始まった。

 と言っても格式張ったものではなく、普通にお茶会って感じで――


「んんんっ! あっまーい!! のに、ほろにが……美味しい!!」

「一時はどうなるかと思いましたが……このような交流会で、安心いたしました」


 なんだかとっても、まったりしている。

 特にドーネルさんが肩の力が抜けたみたいで、突然の苦労話が始まった。


「なんせ先日の重大な会談では、なぜダンジョン技師の私が進行役をやるのかと……胃を痛めていたのです」

「えっ……そうなんですか……!? 実は俺も、王国の重鎮たちと一緒に並べられて、場違いだなぁって思ってたんですよ」

「なんと! それはそれは……お互い災難でしたなぁ」


 こんなところで、シンパシーを感じるとは。

 ドーネルさんはダンジョン関係の仕事をしてるみたいだし、なんだか話が合いそう。


「ドーネルさんはダンジョン技師として、どのような事をしているのですか?」

「私は主に維持や管理……通路や地形の補正や、天候の調整などです」

「すごい! そんなことが出来るんですね」

「操作できるのは簡単な場所――低階層のみ、ですが」


 それでも、外の地形を操作できるなんて……。

 ドワーフの技術って、やっぱりすごいんだな。

 感心していると、ティラミスを食べ終えたフーワさんが会話に参加してきた。


「あたしらはドーネルが管理してる階層に、動物を狩りに行くのさ」

「オラは牛を狩るのが得意だ」

「そうなんですね。牛か……興味ありますね」


 イサナ王国で手に入る肉は、鶏と豚がメインなんだよな。

 牛肉がたくさん仕入れられたら、タリアータやカルボナーデとかも作りたい。

 ホルモン系も使えるなら、トリッパも作れるじゃないか。

 フーワさんたちの話に聞き入っていると、よこからドーネルさんが声をかけてきた。


「あの、質問なんですが……あちらのマギメイは、何に使っていらっしゃいますか?」


 おずおずと上目遣いで、店の入り口の方を指さすドーネルさん。

 入り口のあたりのマギメイと言えば――


「あちら……ああ、セルフレジ! えっと、お金の計算とか管理とか……」

「他にはありませんか?」

「ええっと……」

「ダンジョン! ダンジョン管理に使ってるよ!」


 俺とドーネルさんの会話に、トルトが声をあげる。

 ダンジョンの支払いや増設――当たり前のように使ってて、すっかり失念していた。


「ああ、そうだ! 俺が店のダンジョン管理に使ってます」

「やっぱり……」

「やっぱり?」

「実はドワーフの里にも、同じようなマギメイがあるのですよ」

「え……ええっ!?」


 ドワーフの里に、セルフレジが?

 困惑する俺を、ドーネルさんはうずうずと落ち着かない様子で見上げる。


「少し……触ってみても、よろしいでしょうか?」

「ええ!? ど、どうしよう……?」

「新しい力を、解放できるかもしれません!」


 ドーネルさんの突然の力説に、思わず圧倒されてしまう。

 まぁ、最終的に俺が操作しないと、何も起きないよな?


「お、おねがいします……!」

「わかりました。では、失礼して――」


 足早にセルフレジへ向かって行く、ドーネルさん。

 俺とトルトも、急いで後を追う。

 セルフレジを前にしたドーネルさんは、迷いなくモニターをタップしていく。


≪解放設備を アップデートします≫


 ものの数分程度で、レジの操作が終わったようだ。

 音声と共に、新たな設定画面が現れる。


「終わりましたよ!」

「はやっ!? どれどれ……広場、夜空、石畳……えっ!?」


 これって、もしかして……


「外が、作れるってこと!?」

「いいじゃーん! 里と人間の国に直通トンネル作ったら、お店にも来やすいし」

「酒も気楽に飲みに来れるな!」

「直通トンネル……!?」


 軽い感じに話す、フーワさんとドワワさん。

 その横では、マリカ様が頭を抱えていた。

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