表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
24/87

024 ダンジョン支払いとバックヤード

 三連休、二日目の昼。

 今日は店――ダンジョンの支払いの日だ。

 魔導学園からは、トルトが来てくれた。ラディルも、二階住居から店に降りてきている。


「それじゃ、準備はいい? 店長さん」

「お、おう……」


 セルフレジのモニターには、ネット銀行のような画面が表示され、右下には大きな支払いのアイコン。

 なんだか、緊張するなぁ。初めての支払いが強制徴収で、ひどい目にあったから。

 今回は念のため、ドロアーには四十万マジカをいれてある。

 これで問題は無いと思うけど、セルフレジの画面をタップする指は震えていた。


「頑張ってください、店長!」

「ああ。ありがとう、ラディル」


 俺は息を飲んで、支払いボタンをタップ。

 モニターの画面が、【お待ちください】という表示に代わる。


≪来月活動分のマジカを受領します≫


 音声アナウンスが流れ、自動でレジのドロアーが開く。その上空には前回と同じ、異空間のような穴が開いた。

 ドロアーの中に入っていたマジカが、異空間にどんどん吸い込まれていく。

 トラウマのせいで、俺の体も小刻みに震えている。


≪マジカの受領完了≫

≪いたりあ食堂ピコピコ 活動を継続します≫


 完了の音声が流れると、マジカを吸い上げる穴は何事も無かったかのように消えていった。

 レジのドロアーを確認すると四十万マジカから支払った残り、二十万マジカがキッチリ入っている。

 これで、終わりなんだな……。


「店長さん、ダンジョンのレベルが3に上がってるみたいだよ」

「お、本当だ」


 トルトがレジの画面を切り替えて、状況の確認をしてくれる。

 どうやら、新しいスキルも覚えているようだ。


=================


マスターレベルは、レシピに登録されたメニュー数及び来客数に応じて上昇する。


ダンジョンレベルは、継続年数に応じて上昇する。

→【NEW】ダンジョンレベル上昇により、『バックヤード』を獲得しました。

 スキル『バックヤードへの扉』(消費MP1/1分)を獲得しました。


=================


「バックヤード? 食料とか、保管しておく場所のことか?」

「試しに使ってみたら? 店長さん」

「お……おう……」


 急に使えと言われても、出し方とかわからんし……。

 でもゴミ捨てたいなぁって思って叫んだら、ゴミ箱の中身が消えるくらいだ。

 いっそバックヤードと叫べば、扉が出てくるのかも。


「バックヤードッ!!」

「おおっ! 扉が出ました、店長!!」


 本当に出た。

 何も無いところに、濃茶の木製の扉だけがドーンっとそびえる。某猫型ロボットの、ピンクのドアのように。

 あと、もうちょっと技のネーミングには拘った方が良かっただろうか……。


「店長さん、その扉は開けられるの?」

「さぁ、どうかな。開けてみるか」


 扉を開けた先には、別の空間に繋がっていた。

 壁や床は、コンクリートのような質感をしている。

 部屋の広さは、十畳ぐらいだろうか。


「中、結構広いな。あと、かなり涼しい」


 入って左側の壁には、一面スチールラックが設置されている。

 入り口と反対側の壁には三段ほどの階段の上に、別の部屋に繋がる出口があった。


「奥の方に灯りが見える。ちょっと行ってみるか」

「気を付けてよ、店長さん」


 トルトに見守られながら、奥の出口に向かう。

 なんだか見慣れた光景が――左手には階段、正面には店の厨房が見える。


「あれ? ここ、二階住居に上がる階段……?」

「うわわ! 店長がキッチンの奥から出てきました!」


 奥から、ラディルの驚く声が聞こえてくる。

 どうやらキッチンの奥に、新しくバックヤードの空間が出来たみたいだ。


「これは……すごい魔法じゃないか!」


 スキルで出した扉の方から、トルトがバックヤードに入ってくる。

 安全とわかったら、研究心の方が優位になったようだ。


「そうだな。買い物したものを、すぐにバックヤードに片付けられる。一度にたくさん買えるし、涼しいから食材も痛まなそう――」

「もう、何言ってるの! 瞬時に店へ、イサナ王国に帰ってこれるんだよ!?」

「――はっ!?」


 帰還限定だけど、瞬間移動ができるってこと……!?

 そう聞くと、すごいスキルじゃん。


「それに、ここも店のダンジョンの領域なら――ファイアーボール!!」

「うわっ!? 何やってるの!? あつっ! トルト先生?? あつっ――!!」


 バックヤードの宙に、大きな火球を作り出すトルト。

 だがその火は少しの間だけ燃えると、花火の終わりのようにスッと消えてしまった。


「やっぱり……」

「何が!?」

「今の魔法、僕が消したんじゃない。勝手に消えたんだ」


 勝手に魔法をぶっ放しといて、こいつは何を言っているんだ?

 呆然とする俺に、呆れたようにトルトは説明する。


「ここも店――ダンジョンの領域だから、危険行為が無効化されたってこと!」

「はっ……」

「危険な時の、逃げ道にもなるね。さすがダンジョンマスター、って感じの魔法だよ」


 他にも、新しいスキルの使い方を色々模索していくトルト。

 これで俺も護衛必須の一般人から、逃げの瞬間移動ダンマスにランクアップ!?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
他の作品もよろしくお願いします


【 魔王イザベルの東京さんぽ 】
何も無いと思っていた町が、楽しくなる――
女魔王とオタ女が、東京のまち歩きをするお話です。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ