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002 コスプレ少年とポヴェレッロ

「ん……あれ……?」


 差し込む光に、目が覚める。温かい、太陽の光だ。

 見慣れた天井に、テーブルの裏側。

 どうやら店の個室席で、眠っていたらしい。


「俺、いつ店に戻ったんだっけ?」


 確か中古ショップに寄って、懐ゲーを一本買おうとして――からの記憶が、全くない。

 別に酔っていたわけでもないのに……。


「いや、もう朝なら、まずは店の準備をしないと……」


 俺は個室席を出て、ホール席に向かう。

 店の入り口の横には、新しいレジが設置されていた。


「昨日の中古ショップと同じレジだ……。いつの間に、レジ替えたんだろ……」


 社長から、何の連絡も来てないんだけど。

 それに、店内も微妙に配置が変わっているような……。

 なんとも言えない違和感に落ち着かず、店の中をウロウロしてしまう。


≪カランカラーン≫


 急にドアベルが鳴り響く。

 思わずビクっとして入り口を見ると、男の子が立っていた。

 高校生くらいだろうか?

 なんというか、漫画やゲームのキャラクターのような服装――コスプレをしている。


「すみません、まだ準備中で――」


 もう人が来るような時間だったっけ?

 そんなことを思いながら少年に近づくと、彼はバタリと床に倒れてしまった。


「えぇ!? キミ、大丈夫!?」


 俺はしゃがみ込んで、少年に声をかける。

 少し震えているようにも見えるが、何があったのだろう?


「あの……おなかが……」


 か細い少年の声に続くように、大きな腹の虫がグウウッと鳴く。

 ……なるほど?


「お腹が空いてるんだな。少年、立てるか?」

「はぃ」


 ふらつく少年を支えて、空いてる席に座らせる。

 ひとまずコップに水を汲んで、彼に差し出した。


「いまメシ作ってやるから、これ飲んで待ってな」

「ぁ、ありがとう、ござい、ます」


 少年が一人で水を飲めるのを、確認する。

 それにしても剣とか鎧とか、ずいぶん精巧に作られたコスプレだな。

 今日は平日のはずなのに、何かお祭りやイベントがあったっけ?


「……ま、いっか。メシメシ~」

 

 俺はキッチンに入り、とりあえず鍋に湯を沸かす。

 それから、冷蔵庫の中を確認。

 下茹でしたパスタと、刻みニンニクのオイル漬けはあるな。


「急ぎだし、アレで良いか……」

 

 パスタとニンニクを調理台に乗せ、更に卵を二個出す。

 フライパンをコンロに乗せ、そこにオリーブオイルと刻みニンニクを入れる。

 本当は、刻みニンニクを山盛り入れたいが――空きっ腹には刺激が強すぎるし、我慢しよう。

 僅かな未練を残しつつ、コンロに火をつけて油を温めた。


「お湯も沸いてきたな」


 フライパンの油の中に、卵を二個割入れ目玉焼きを作る。

 目玉焼きをひっくり返して両面にイイ感じの焦げ目がついたら、沸かしたお湯をレードル三杯分と昆布茶を少々。

 グツグツと沸く卵と昆布茶のスープの中に、パスタを入れて茹でていく。


「上にも、目玉焼きをトッピングするか」


 俺は湯を沸かしていた鍋をコンロから外し、フライパンをもう一つコンロに乗せた。

 追加で卵を取り出し、目玉焼きを作り始める。

 今度は黄身のとろける、半熟目玉焼きだ。


「良い感じだな」


 パスタはすっかり茹で上がり、トロリとしたわずかな煮汁を纏っている。

 ここにたっぷりの粉チーズをかけ、絡めていく。

 ニンニクとチーズの香りが、なんとも食欲をそそるな。

 出来上がったパスタを二つの皿に盛りつけ、その頂に半熟の目玉焼きを乗せる。

 貧乏人のパスタ――ポヴェレッロの完成だ。


「おまたせ、少年!」


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