第4.6話-半人同盟、エリューセラ条約機構軍
についての内部話しとか
火星、マーズと呼ばれる、地球から約6000万kmから約1億km離れる太陽系の第四惑星。
光の速さでも、地球からは約4分28秒の時差が生まれる、現代でも遠く果てしない場所である。
その場所で今日、火星を盟主と崇める、反地球を御旗に掲げる同士の会合が開かれていた。
「今日、みんなに集まってもらったのは、他でもない、次なる開戦の狼煙をどうあげるか、その相談と言うやつだ」
火星を支配する統合AI「マーズ」から権力委託された男が、この場の議長のように話している。
彼らの名は「メタ」、火星における通商企業を中心として幅広いビジネスを手掛けるビジネスマンだった。
しかし、その正体はAIマーズによって見破られ、彼が人を超えた超越者であり空間管理局の長、その秘密は露見された。
それからはマーズに協力的な...まあ議長とだけここで説明を簡略化しておこう、立場上も似たようなものだが、詳細は複雑化するので正確には省略するのである。
「さて、空間管理局までお越しとは、よほど今回の山はデカいと見る」
次に、銀の髪をした初老の、賢者のような、名を”ギン”という、この男について。
管理局の力関係では下部組織に位置する、次空管理局。
この領域を任される、これも人を超越した存在、その銀色の髪を持つ事から見る者が見れば分かる。
この宇宙を創設した種族、黄金に銀に青銅に鉄、その銀にカテゴライズされる、銀の妖精王の一人が、彼なのだ。
「まあまあ、”彼ら”も来ている事だし、この場は小難しくいかないよ、管理局とか”裏ばなし”を赤裸々にするのは、”ナシ”の方向性で」
メタはギンに手を振って、裏世界管理局、”この様子を見ている”アウター向けの観客席にも手を振るようにニッコリ微笑む。
「ストーリーテラーは退屈なのが嫌いなのさ、放っておけばドンドン視聴率は落ち、この世界も破滅の一途を辿る、常にイケイケに飛んで富んで行かないと?なあ、レイアにカルナ!」
メタの呼びかけに、すぐさま参上した、薄暗い部屋の陰から泥のように這い出す女。
「はい、メタ様」
その姿は女性にしては長身、180cmは下らない。
最も旧きモノとしてギム・ギンガという二つ名があるが、とりあえずこの場ではレイアとだけ呼ばれている女。
それより歪なのは、雰囲気、外見だけでは分からないが、流体金属で構成されたフルアンドロイドの機械生命である。
同時にいつの間にか表れている、研究者風味のモノクルのメガネを掛けている青年と高年間くらいの男。
カルナ・イージー・ファ、通称”時空郷”、管理局の調整役だか牽制役として、この場に、というより”世界”に存在している、よく分からない立ち位置の男。
この四人がとりあえず、AIに支配されている火星において、その実力を人間として発揮できる首脳陣であった。
「蒼き閉塞する地球に鉄槌を!我らが無限の未来の為に!とりあえず、乾杯だなぁああ!!!!」
メタがいきよく、四人に盃を回して、乾杯の音頭をとる、今日の会合が本格的に始まるのは、しばし時間が掛かりそうだ。
さてここで、思想的な話をしてみたい。
その名も、イクシード思想、超人思想というのが、コロニー側に萬栄している考えであるのだが...。
そうなのにはも理由があり、それを歴史的経緯から全て説明するのは省略して、概要だけ話すと。
イクシード思想の系譜に、反地球=地球に閉塞される忌避感から。
宇宙全体に人類の生存権を拡大し、万が一でも決して人類を滅ぼさない。
ある種、神に、神の位階に人類を到達させるためのモノがある。
さらにイクシードの文脈には反出生もあり。
既に人間を悲観的な生き物とし見なす、理想主義的な破滅的なまでの完璧思想、思考からくるものと思われるモノ。
この前提からまず話したのは、火星を中心としたコロニー連合にも二つの枠組みがある為、である。
まず第一に、高度なAIに管理される、AI主体の主導の、火星を本拠地とする中小コロニー連合。
彼らは最も過激なイクシード思想であり、人を超越したAIに統治を完全に委任し、任せていることからも、それが伺える。
もちろん、大コロニーの連合体もAIに行政・内政を任せるところはあり、あっても、その程度は比較して低いのだ。
このような情勢下から、コロニーサイドは纏まった軍隊を動かす経路が二つある。
それは旧日本軍の陸軍・海軍くらいの隔たりが存在する事になるのと同義であった。
この二つの枠組みが手をとりあう、行政上の取り決めを、半人同盟、その行使する軍隊をエリューセラ条約機構軍という。
エリューセラとは、四大コロニーのコロニーエリューセラから取られ、半人同盟を結んだ場所としても知られる。
さて次に、そもそも”四大コロニー”とは何か? というのを説明したいと思う、あまりその存在を公にしていなかったはずである。
まず第一に、中小コロニー以上の、あまりにその存在感・影響力。
純軍事的な”戦力”としての軍隊の規模が大きい、これを俗に、通称”四大コロニー”と呼ばれる、集団である。
そのコロニーの一つ一つが独自の主権を持つクラス、中世ローマの都市国家のよなイメージである。
日本の東京・大阪・名古屋・福岡の、四大都市圏のような感じであろうか。
しかし4大コロニーと言っても、実際には属国化したような大コロニーに対する衛星のように周囲を周回していたりするコロニーもあり、18のコロニーによる連合体と、その形の上では言われている。
この軍隊が基本動くのは、コロニーの議長クラス、その合議の円卓会議と呼ばれる。
もっと言えば、騎士団内での決定に酷く依存する、軍主導の独裁的雰囲気は色濃いと言えよう。
逆に火星に本拠地を置く中小コロニー連合は、AIによる意思決定により、軍隊を動かす。
まさに、今開かれている会議は、その様相、AIによる意思決定の体現を取り巻く状況そのものであった。
今回はこの辺で(触りからちょっとづつ(情報量が多くてつらいので))