第8話 情報収集
翌朝、忍者の能力を試す為、『セメタリ―ダンジョン』に向かった。
「まずは忍び走りだ」
忍び走りは上半身を動かさず、足音をかき消し駆け抜ける忍び独特の走りである。忍び走りと弓矢の相性は抜群で、上半身がフリーなので走りながら弓矢を放てる。アルテミスの加護があるので狙いも十分、瞬く間にアンデットを討伐した。
忍びの跳躍は垂直飛びで軽く2mを飛び、手を伸ばせば5mの高さに届く。助走をつければ更に高く飛べて住居侵入にはもってこい、地味だが戦闘にも役に立つ。
上昇した気配感知5は50m離れても魔物を感知し、隠蔽5は物音を立てなければ5m程度まで近づいても察知されない。素早さが大幅に上がったので移動速度の上昇と攻撃の手数が増え、不意打ち率も急上昇している。
「忍者の能力を生かすには、音のする鎧等防具無しが一番か」
結果に満足した俺はそのままボスの広間を目指す。
「剣技 連続切り!」
「剣技 岩裂斬!」
剣技を繰り出しボスのスケルトンナイトを瞬殺、クリア報酬は、
◇◇◇◇◇
聖銀の剣 攻撃力30
アンデットに1.5倍
◇◇◇◇◇
聖銀の剣はアンデットに特効があるので更に攻略速度を上げ2周目、3周目と探索を続けた。
◇◇◇◇◇
聖銀の兜 防御力12
素早さ‐5
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
銀貨3枚 30万ゼニー
◇◇◇◇◇
2周目、3周目の報酬はまずまず、現金は本当にありがたい。レベルも33まで上がり、素早さの成長が著しいが魔力の成長無し。忍者に魔法は不要ってわけか。
◇◇◇◇◇
アレス 17歳 レベル 33 職業 忍者
HP : 150 → 162
MP : 60 → 66
力 : 66 → 72
素早さ: 144 → 156
魔力 : 31
幸運 : 31 → 34
身の守り: 35 → 38
スキル : 剣技 100/100 弓技 100/100 気配術 50/50 忍術 100/100
常時気配感知5 常時隠蔽5 変化の術5 鑑定感知 忍び走り 忍びの跳躍 煙玉
残りスキルポイント 150
◇◇◇◇◇
「今日は早いな、兄ちゃん。―素材代全部で25万ゼニー、聖銀の兜は20万ゼニー、合計45万ゼニーだがどうする?」
ニコニコした忖度商人も額が大きいので決めかねているようだ。
「MP、毒、ポーションを5個ずつと食料と調味料、残りは流行の男性用、女性用の服を頼む」
「へぇっ!?ああ、構わないがちょっと待ってくれ、服は家内に選んでもらうから」
「男性用が4着、女性用が3着見繕った。兄ちゃん、妹でもいるのか?」
「そんなところだ」
毎度―と商人に見送られ帰宅後、死体から剥ぎ取った財布と女性用の服を持って鑑定局に向かった。本日の探索を早く切り上げたのは鑑定局に向かい情報収集する為である。道中で変化の術を使い、イケメン冒険者に変化する。鑑定局に入った俺は、空いている若い女性の受付に向かった。
「次の方どうぞ―こんにちは、どうされましたか?」
受付女性の名札にはセリーヌと書かれていて、死体から剥ぎ取った財布をセリーヌの目の前に置いた。
「財布を拾いまして届けに参りました」
「それはお疲れ様です。どちらで拾いましたか?」
「ギルド周辺で拾いました。私はハンスと言う冒険者です」
ハンスと名乗ったのと財布をヨークの街の適当な場所拾ったと報告したのは、鑑定局内を伺う口実である。目の前の若い受付嬢セリーヌと、事務所奥にいた40歳前後の哀愁漂う中年薄らハゲ小太り男に目をつけた。
「ハンスさん、ありがとうございました―」
鑑定局を出た俺は、局員が勤務を終えるのを待っているが、いくらイケメンでもいきなりセリーヌを誘うようなことはしない。本日のターゲットは、中年薄らハゲ小太り男である。
勤務を終えたセリーヌと顔が合ったので、笑顔で手を振り見送った。その後すぐに薄暗い路地に身を隠し、変化の術を使いリーゼそっくりに姿を変え、服を女性用に着替えた。リーゼに変化したのは、中年男性に好印象を与えられるから。
薄らハゲの中年が一人で出てきたので、俺リーゼはそっと後をつけて、声をかけた。
「すいません、魔道具屋『ドリーム』を探しているのですが…」
それにしても変化の術有効だ、声まで女性に変わる。
「えっ、わ、私でしょうか?」
困惑する中年薄らハゲ、そりゃそうなるわな、この中年薄らハゲが仕事以外で美少女から声をかけられるなんて人生でそう何度もないはずだ。
「私、この街のことよく分からないので、よかったら一緒に探してくれませんか?」
俺リーゼは上目遣いで尋ねると、美少女の上目遣いに困惑する薄らハゲ。いや、私には家庭が、家内と子供が…と混乱し始めたので止めを刺す。
「教えて、優しいおじ様♡」
首を少し横に倒しあざとい語尾ハート攻撃で中年薄らハゲは吹っ切れたようだ。
「フン、フン!行く、行きますよ、さあこっちです!」
一気に鼻息が荒くなり先導し始めた。『ドリーム』に着いたが、良かったらお礼にお食事でもっと、ハニカミ笑いで尋ねると、
「か、か…可愛い、是非是非お供します!ハ…ハアハア…」
テンション爆上がりの中年薄らハゲ小太り男、完全に俺リーゼの虜だな。俺リーゼはルイゼと名乗り、近くの居酒屋に入り、適当にお酒と摘みを頼み親父に追撃をする。
「優しいおじ様はどちらで勤務されていますか?」
「鑑定局に興味ありますね♡局長ってどんな人?」
「どうしたら入局できますか?入局したら指導お願いします♡」
「お願い、おじ様♡」
と、俺リーゼに質問兼ハート攻めされた中年薄らハゲ、もう我が人生一片の悔い無し状態で、ベラベラと、饒舌になった。
この街の鑑定局局長はパオラで27歳の女性、ブリテン王国首都ヨンドン出身でここへ今年配属されたとのことだ。鑑定スキルと特殊な試験に合格した優秀な頭脳の持ち主で、いずれ首都の鑑定局に戻るエリート官僚だと。
鑑定局も全員が鑑定持ちではなく、スキル持ちは局長を含めて5人しかいないらしい。局長の中級鑑定士がこの街の鑑定局で最も高く、人物鑑定4とのことだ。
鑑定士は奥が深く、下級、中級、上級、特級鑑定士と下級から最上級職まで分類される。鑑定スキルだが『人物』『道具』『武器』『防具』『魔物』に分類されているらしい。
いずれにしても人物鑑定4なら俺の偽装工作でいかようにも出来る。今の俺が恐れているのは人物鑑定6以上の鑑定士のみ。
「ハ…ハアハア…、ルイゼちゃん、この後、もう1軒どう?それと今度いつ会える?僕もうルイゼちゃんにメロメロだな…ハアハア」
紅潮した中年薄らハゲ小太り男の質問に引きつつも、
「また今度ね、優しいおじ様♡」
やり過ごし、店を出て薄らハゲ男と別れた。
「少しやり過ぎたが欲しい情報は全て貰えた」
既にあたりは夜の帳に包まれており人気のない暗い路地で俺は変化を解き、家に帰った。
MPポーションを飲み一息ついていると玄関から何かしら気配を感じる。また『フェンリルの牙』が来たのか?うんざりした表情で向かうと、青い顔をしたリーゼが立っていた。
読者のみなさまへ
評価してくれた方、ブックマーク登録してくれた方
いつも応援ありがとうございます!
『面白かった』
『続きが気になる』
と思われた方は、広告の下にある
『☆☆☆☆☆』の評価、『ブックマーク』への登録
よろしくお願いします!
『フクロウの剣士 ∼素振りを20年続けたサラリーマン 刀1本で始まる大冒険∼』
https://ncode.syosetu.com/n1584gz/
も連載しておりますのでこちらも目を通して頂けたら幸甚です。