第7話 職業選択
「―素材代全部で14万ゼニー、MP6と毒1、ポーション3本、木の矢と食料だろ、毎度―」
お馴染の商人と物々交換を終えた俺は、迷わず帰宅し夕食を取る。この後は、待ちに待った職業選択である。ステータス画面を開くと、
◇◇◇◇◇
レベル30以上と各スキルポイントを確認しました。
剣技20以上 職業 戦士解放
剣技30以上 職業 剣士解放
弓技20以上 職業 弓士解放
弓技30以上 職業 狩人解放
気配術20以上 職業 斥候解放
気配術30以上 職業 盗賊解放
気配術50以上 職業 忍者解放
◇◇◇◇◇
各職業が解放されたが、この職業は下級職でこの職業選択が俺の大きな分岐点になる。剣技、弓技スキルポイント100のおかげで各職業が解放されたが既に剣も弓も全振りしているのであまり興味がない。
剣士や狩人の各職業で新たな剣技や弓技を覚えるだろうが下級職で剣王の舞や乱れ打ちを超えるスキルはないだろう。となれば気配術で解放された3つ、斥候、盗賊、忍者はまさに影を生きる者の職業、陰キャの俺ことアレスにぴったり合う。
「斥候は気配術20、忍者や盗賊に比べると比較的に成り易い。盗賊も捨てがたいが気配術50で解放された忍者は別格のスキルを覚えられるはず!」
迷わず俺は職業を忍者に選択した。
◇◇◇◇◇
職業 忍者選択確認しました
忍者によるステータス補正 素早さ+30
職業忍者によりスキル忍術追加
アレス 17歳 レベル 30 職業 忍者
HP : 150
MP : 60
力 : 66
素早さ: 64 → 94
魔力 : 31
幸運 : 31
身の守り: 35
スキル : 剣技 100/100 弓技 100/100 気配術 50/50 忍術 0/100
常時気配感知 2 常時隠蔽 2 鑑定感知
残りスキルポイント 247
◇◇◇◇◇
新たなスキル忍術解放されたか。迷うことなくスキルポイントを忍術に全振りする。
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アレス 17歳 レベル 30 職業 忍者
素早さ: 94 → 144
スキル : 剣技 100/100 弓技 100/100 気配術 50/50 忍術 100/100
常時気配感知5 常時隠蔽5 変化の術5 鑑定感知 忍び走り 忍びの跳躍 煙玉
残りスキルポイント 147
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下忍の星 加護 忍びの誇り
素早さ+50 偽装工作を行い変化の術が鑑定5以下なら見破られない
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やべぇー、全振りした加護の力半端ない。素早さの上昇率が2倍以上、さすが忍者。下忍ってことは、レベル上げた上級職が中忍や上忍が開くってことだろう。
◇◇◇◇◇
変化の術 消費MP20
声、性別、骨格、関節を調整し特定の人物に変化出来る 2時間有効
◇◇◇◇◇
「早速変化の術を使って試してみるか」
加護にある偽装工作、鑑定5以下は気配術と同じと考えれば、鑑定スキルを持った人もスキルポイント30か50に振って、レベル30で鑑定士解放、更にスキルポイント全振りでも鑑定5…普通の冒険者は全振りできるスキルポイントを持っていない。
鑑定6になるには鑑定士の上級職で数々のダンジョンをクリアし、かつスキルポイントを鑑定に全振った強者。まずヨークの街にはいないだろう。
それにしても忍者のスキル戦闘補助に徹したものばかりだ。気配感知や隠蔽も上昇したし、忍び走りや跳躍も後で検証しよう。忍者で有名な火遁や水遁、分身の術は上級職で覚えるのか!?
しばらく思案して考えをまとめ、朝嫌がらせを受けたゴメスに変化した。鏡を見るがどう見ても朝見たチンピラそっくりである。
「この変化の術でこれからやりたい放題出来るわけか」
ニヤリと悪い笑みを浮かべた俺ゴメスは、外に出て魔道具屋に向かった。
魔道具屋『ドリーム』、ヨークの街一番の大きさである。今までここを訪れなかったのは、鑑定士が居る恐れがある為であったが、偽装工作を持つ今は好き放題出来る。
店内に入った俺ゴメスは、迷わずスキルブック売り場に向かい、厳重な鍵のついたショーウインド内にあるスキルブックを睨むように眺めている。あまり数はないようだが特に目についたのは、
【アイテムボックス 3億ゼニー】
【火魔法 1億ゼニー】
【パワーアップ 5000万ゼニー】
【スピードアップ 5000万ゼニー】
【ガードアップ 5000万ゼニー】
【MPアップ 5000万ゼニー】
【気配術 4000万ゼニー】
アイテムボックスは、欲しいが3億は高すぎる…。火魔法1億と比べて気配術は4000万、ヨーゼフが粋がる訳か。まあ魔法は今の俺にはどうでもいいが、各ステータスアップのスキルブックは欲しい。
特にMPアップ、MP増えれば奥義をバンバン使ってレベルアップも早そうだ。今の俺は素早さに優れているだけの平凡なステータスだからな。
「な…何かお探しでしょうか?」
チンピラが睨むように眺めているから男性店員が慌てて声をかけてきた。
「鑑定や回復魔法のスキルブックは見当たらないがいくらだ?」
今後を考えるとソロ活動の俺には、アイテムボックス、回復魔法、鑑定は優先順位が高い、そう思って値段を聞いてみた。
「鑑定は10億、回復魔法は1億5千万ゼニーです」
「鑑定10億!?たけーな、おい!二つとも店に置いてあるのか!」
更にギロリと睨み声を荒げた。
「ひぃー、と言いましても鑑定スキルブックは市場に滅多に出回らませんから…回復魔法は教会連中と冒険者に人気ですし、どちらもここに置いてないんですよ…」
「そうか、邪魔したな!」
乱暴に吐き捨て売り場を移動し、店内で魔道具を手当たり次第乱雑に扱った。そんな俺ゴメスを見ていた一人の男性店員が近づき、
「お客様、さすがにこれ以上騒がれては鑑定局に通報致しますよ!」
更に鑑定感知するが、偽装工作で、
◇◇◇◇◇
ゴメス 25歳 レベル 38 職業 盗賊
HP : 204
MP : 73
◇◇◇◇◇
いい加減な情報にしている。注意した男性店員は鑑定スキルがあるのでニヤリと笑い、
「ゴメスさん、あなた職業ご存じですよ。このまま鑑定局に報告しましょうか?」
と男性店員が言った。鑑定局はこの国の安全・秩序に対する障害を除去する国家権力を持った機関である。適当に暴れ、偽情報を与えて満足した俺ゴメスは、
「分かった。出ていけばいいんだろ!」
捨て台詞を吐いて魔道具屋を後にした。続いて俺ゴメスは、ギルド周辺でクラン『フェンリルの牙』の建物を探すが、
「あれか、白い屋根はあそこだけだな」
1階の窓だがカーテンで中が確認出来ない。中に入ることにするが、本人との遭遇を考慮した俺ゴメスは変化の術を解き、素早く忍びの跳躍で2階のベランダに向かって飛んだ。
「4メートル以上あるのに届くとは…」
ベランダからゆっくり扉を開けて中に侵入した。ずい分不用心だな、それとも俺達つえーから無敵と思っている傲慢野郎達かと思案していると、1階から話し声が聞こえてきた。
どうやら1階で酒盛りをしている様子、10人前後で騒いでいる。聞き耳を立てると、
「しかし、今朝アレスとかいった陰気野郎面白かったなあ。叶わぬ恋心を木っ端微塵に踏み躙るとは俺でも気が引けたぜ」
「ゴメス、その割にはノリノリだったじゃねーか。お前の腕相変わらず見事だな」
「鍵の一つや二つゴメス様の前では朝飯前よ。鍵破りのゴメスとは俺のことだ!」
「ゴメスさん、あの根暗野郎に思い知らせてくれて気持ち良かったです」
「いいってことよ。俺達もあの野郎の金で楽しんだからな」
家の鍵を開けたのはゴメス、あの声はヨーゼフも居るか。朝の件を摘みに盛り上がるこいつらを許さないが、酒盛りは益々盛り上がっていく。クランリーダーのロイドを見たかったが今日は無理、クランを知れたのと鍵破りのゴメスで満足するか、と踵を返した。
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『フクロウの剣士 ∼素振りを20年続けたサラリーマン 刀1本で始まる大冒険∼』
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も連載しておりますのでこちらも目を通して頂けたら幸甚です。