第4話 決別
「アレス、よかったー!生きていて本当によかった!逃げ出してごめんね!」
俺を見るなり抱き付くリーゼである。前回、幽体の時は俺も困惑していた上に、イチャつかれたからよく見なかったがこの子かなり可愛いぞ。人目に付く銀髪、大きなアメジストの瞳に二重の瞼、すーと通った鼻、なるほどアレスが惚れて、ヨーゼフが優越感に浸るのも頷ける。
「生きていたなら生存報告しろ、このボケナス!」
「帰ったのが昨夜で、報告遅れてすまない。それで何のようだ?」
抱き付くリーゼを解きながら悪態をつくヨーゼフに問いただした。
「生きていたならまた冒険に連れて行ってやる」
「ずいぶん高圧的だな、お前等がイチャつくせいで俺は死にかけたのだぞ!」
熊にやられた服を二人に見せると、リーゼはハッと表情を変えた。
さっきの抱き付き、今の表情、昨日の日記からリーゼは、幼馴染だが姉弟に似た感情でアレスに接していたのではないか、憔悴しているのも頷ける。リーゼがアレスに対して無関心でないかと思ったが、杞憂なようだ。いずれにしてもアレスにもチャンスはあったのか。まあ、今のアレスにはその気はないが…。
「この傷のおかげで2週間アロンの村で療養していた。3人で冒険してもまたイチャイチャされるならいずれ同じことが起こる」
はっきり言ってこの二人と冒険活動する気は微塵もない。向こうは幼馴染かもしれないが俺にとっては赤の他人、アレスの記憶もない上、こいつらがイチャついていたことしか思い出さず、嫌悪感しかない。
「貴様この俺が誘っているのに!ハズレスキルの気配術のお前はせいぜい斥候や盗賊にしかなれない。剣と火魔法、回復魔法が使える俺は魔法戦士や魔剣士、いずれは勇者にもなれる。リーゼは風魔法と回復魔法で賢者や聖女も目指せるのだぞ!」
ヨーゼフ、二人のスキル説明ありがとうさん。なるほど、戦闘補助の気配術は、ハズレと軽視されている世界か。お前のスキルも予想通り、だがレベルを上げてスキルを磨かなければただの宝の持ち腐れだ。
「俺はこの気配術気にいっているよ。勇者になれるだと…笑わせてくれる。キリングベアごときに驚き、戸惑いを見せて仲間を見捨て逃げた奴が勇者だと…。腰抜け勇者の間違いだろ」
「貴様!…アレスの癖にずいぶん一端の口を効くじゃねぇーか!死にかけたおかげで口調や態度も変わったのか!」
リーゼがハラハラしながら俺達を眺めていた。
「それだけか?用がないなら俺は家に入るが…」
「で、明日から俺達と冒険活動再開するぞ!」
「…いやだ。理由はさっき言っただろ。俺はお前達を庇って殺されかけた。イチャイチャしたいなら俺の知らないところで頼む。俺は俺のやり方で強くなるから」
「待って!アレスはそれで構わないの?3人で強くなろうって誓ったじゃない!」
リーゼが口を開いた。
「リーゼ、悪いがここまでだ。自分の行いを棚上げにして謝ろうともしない傲慢なヨーゼフにはウンザリだ!本当に悪いと反省しているならこのまま帰ってくれ」
呆然と立ち尽くす2人、吐き捨てた俺は玄関の扉を開き家に入った。
夕食を取った後、物思いに耽るが…、2人との接触でヨーゼフがアレスに対してマウント取っているのを理解した。両親がいなく貧しい生活、長い前髪は根暗で陰キャラであったに違いない。あの馬鹿、魔法が使えるから勇者になれるだと…笑わせてくれる。
幼馴染面して気配術を使える俺に魔物を捜索させヨーゼフが横取りする気なのは明白。
それに気配術は戦闘補助だが、ソロで活動するなら決して悪いスキルではない。気配感知に隠蔽で先制攻撃を取りやすい上、弓での遠距離攻撃は相性抜群だ。
気配術だがヨーゼフが言った斥候や盗賊といった職業がレベル30で解放されるのか、いずれにしても職種を見極めて決めないといけない。
「何よりウサギ装備と強くなったのをばれるのが嫌だったのだが…」
そう呟き目を閉じた。
※※※※※
翌朝、俺は『セメタリーダンジョン』に向かった。
◇◇◇◇◇
『セメタリーダンジョン』
推奨レベル35
ダンジョン難度 E級
◇◇◇◇◇
『ヨザラムダンジョン』より難度が上がり、魔物はアンデットが出没する。推奨レベル35、5Fが最下層でボスもアンデットとのこと。もちろん、今日クリア出来るとは思っておらず、今日は1Fで敵と戦闘し、感触を確かめに来たのが本音である。
ダンジョンに入った俺は早速魔物を感知した。
「ゾンビが1体、まさにうってつけの相手だ」
短弓で狙いを、定め矢を放つ。
「グギャー!」
悲鳴を上げるゾンビ、こちらに気付いて襲いかかってくるが動きが早い。もう一度矢を放ち、剣に持ち替えゾンビに切りかかった。一撃で倒せずゾンビの攻撃を受けて吹き飛ばされる。
「ぐっ、なんて威力だ」
すぐさま、起き上がりHPを確認すると、
◇◇◇◇◇
アレス 17歳 レベル 14
HP : 86 → 50
MP : 28
◇◇◇◇◇
ノー!36ダメージ受けている。あれ3発受けると死ぬぞ…!消費MP多いが剣王の舞か、いやまだ一撃耐えられるなら違う剣技だ。
「剣技 連続切り!」
高速で剣を2度振り、ゾンビを切り裂いた。
「加護のおかげでなんとか倒せたが、魔物とのステータスの差が大きい。弓2発、剣で3発繰り出さないと倒せないか…先制取れないなら迷わず剣王の舞がベストだ」
戦闘と検証を終えた俺はすぐにポーションを飲みHPを回復させた。すぐにさらなる魔物を感知する。
「ゾンビにミイラの2体か…」
複数の敵を相手したくないがやり過ごせそうにもないので先制をとれる今しかない!
「弓技 乱れ打ち!」
弓の奥義を放ち矢が次々とゾンビとミイラを襲う。
「グギー!」
悲鳴を上げながら向かってくる2体に、剣技 連続切りでゾンビを切り刻む。ゾンビを切り裂いたが無防備な俺にミイラの一撃が襲い掛かった。
「ぬわー!」
ミイラの一撃で大きく吹き飛ばされた俺は、すぐさま起き上がるが全身に砕けるような激痛が走っている。どうやら痛恨の一撃を受けたようだ。慌ててHPを見ると、
◇◇◇◇◇
アレス 17歳 レベル 14
HP : 86 → 6
MP : 25 → 16
◇◇◇◇◇
OH NO!80ダメージを受けた。死ぬ、間違いなく次の一撃で死ぬよ、俺!鋼の胸当てやっぱりいるよ!今の俺は布の服でダンジョンにいる紙装甲のイカレタ冒険者だ。慌てて、
「剣技 剣王の舞!」
剣の奥義でミイラを切り裂いた。すぐにポーションを飲みHPを回復させ、ドロップした素材とアイテムを集める。
「同時2体相手は無理だ。さっきは本当に運が良かっただけ、いつか死んでしまう」
ぼそっと呟き、更にミイラ一体を感知した。
「弓技 乱れ打ち!」
矢をビュンビュン飛ばし、ミイラを討伐した。
「乱れ打ちならミイラも一撃で終わるか」
今の俺はこのダンジョンでは4体が精一杯、MPポーションを取り出し、空になったMPを回復させる。ステータスを開くとレベルが2つ上がっていた。
◇◇◇◇◇
アレス 17歳 レベル 16
HP : 86 → 94
MP : 28 → 32
力 : 34 → 38
素早さ: 32 → 36
魔力 : 15 → 17
幸運 : 15 → 17
身の守り:19 → 21
スキル : 剣技 100/100 弓技 100/100 気配術 50/50
常時気配感知2 常時隠蔽2 鑑定感知
残りスキルポイント 112
◇◇◇◇◇
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