第3話 ヨザラムダンジョン
「勇者になる可能性か」
ぼそりと呟いた俺は、勇者について考える。勇者と言えば、優れた剣技に強力な攻撃魔法、回復魔法まで使えるエキスパート。あのヨーゼフは、そのスキルを神託の儀で受けたわけか。
「まあ、俺には無縁の話だ。そんなことよりレベル上げ、ダンジョンに向かおう」
準備を整えた俺は『ヨザラムダンジョン』に向かった。
◇◇◇◇◇
『ヨザラムダンジョン』
推奨レベル15
ダンジョン難度 F級
◇◇◇◇◇
このダンジョンはヨークの街で最も簡単で3Fまでしかなく、出現する魔物も、ゴブリン、コボルト、オークと弱く、初心冒険者にはもってこいのダンジョンだ。
「まあ戦ってみて対策しよう。今の実力も知りたいし」
ダンジョンに足を踏み入れると早速魔物を感知した。
「20m先にゴブリン、まずは弓で」
弓を構えて矢を放ち、ゴブリンの額を撃ち抜く。
「加護の力凄いな。次は剣だ」
続けてコボルトを感知する。近づきコボルトと向き合い切りつけるが、一撃で仕留めた。
「身体が自然と動く…まるで俺の身体じゃないようだ」
剣聖、弓聖の加護は絶大、通常攻撃一撃でこのダンジョンの魔物は倒せるのでMPの消費がない。現在俺は、見えないようにウサギの尻尾も装備して素材とアイテムドロップ率は4倍である。流石にウサ耳は目立つので外しているが…。
レベルアップが目的なので感知する魔物を弓矢に剣で次々と討伐を続けた。ウサギ装備のおかげでドロップ素材は多くゴブリンの角、コボルトの牙、ポーションを拾いながら、ダンジョン3Fに到着した。
3Fはオークが出現する。オークは体力があり脂肪が厚く、弓矢一撃では倒せなかった。ただ動きが鈍いので次の矢をオークの頭に狙いを定め放つ。
「オークは弓矢のヘッドショットで倒すのが一番、あの脂肪は剣でも一撃は難しそうだし」
ドロップ素材は睾丸で性欲の強いオークらしいものだった。
「こんなの何に使うんだよ」
ブツブツ言いながら回収し、更なるオークを探し討伐を続けると大きな広間に到着した。
「おお、ここがダンジョンボスの間」
ヨザラムダンジョンのボスはトロルである。レベル15のパーティーで倒せる強さらしいが…。クリスさんの話では、ソロで挑むにはレベル20は必要だが、加護のおかげで大丈夫だろう。
ボスの間に入るとトロルが出現したが体長3m近くある。先手必勝、弓スキル使おう。
「弓技 乱れ打ち!」
続けざまに矢を6本放ちトロルにズブズブ刺さった。
「キショエー!!」
痛みでの叫ぶトロル、前進するトロルの足が止まった。好機と見た俺は、剣を抜き一気に間合いを詰めて切りかかった。
「ギョエ―!!」
断末魔を上げたトロルが前のめりに倒れる。
トロル討伐後、ボスの間にクリア報酬の宝箱と帰還石が出現した。
◇◇◇◇◇
ヨザラムダンジョン初回クリア特典
スキルポイント1ポイント上昇しました
◇◇◇◇◇
ステータス画面にも、クリア報酬が表示されている。宝箱には、
◇◇◇◇◇
鋼の胸当て 守備力+15
素早さ ‐3
◇◇◇◇◇
鋼の胸当てが入っていた。素早さが下がるが守備の底上げ、これは装備して使おう。ステータス画面を開くと、
◇◇◇◇◇
アレス 17歳 レベル 10
HP : 50 → 70
MP : 10 → 20
力 : 16 → 26
素早さ: 14 → 24
魔力 : 6 → 11
幸運 : 6 → 11
身の守り:10 → 15
スキル : 剣技 100/100 弓技 100/100 気配術 50/50
常時気配感知2 常時隠蔽2 鑑定感知
残りスキルポイント 106
◇◇◇◇◇
レベルが5つ上がり、帰還石で戻ると昼前だった。店を訪れ素材の値段を聞く。
「―素材全部で7000ゼニーだ」
「この鋼の胸当てはいくらになりますか?」
「それなら1万5000ゼニーだ。ヨザラムでよく取れるから鋼装備は数が出回っている」
なるほど、それなら俺が使ったほうがいいな。ゴブリンやコボルトより、オークのほうが経験値はいい。1F、2Fは戦闘をなるべく避けて、周回するか。
「MPポーション1本いくらですか?」
「1本、2万ゼニーだ」
くっ、胸当てを装備して使いたいが…お金はなるべく取って置きたい。
「さっきの素材とこの胸当てでMPポーションと交換しませんか?」
「俺にとってはありがたい話だが、兄ちゃんはそれでいいのかい?」
「構いません」
今回のMPポーション、これは仕方ない。レベルが上がれば全て解決する。今乱れ打ちでMPを消費し4しか残っていない。MPポーションを飲み干し、ダンジョンに向かった。
今日は周回し続けてレベルと素材集めをするか。
3Fに到着した俺は、オークを倒しつつボスの広間を探す。
「剣技 剣王の舞!」
凄まじい剣撃が次々とトロルを切り刻み一撃で倒した。
「剣王の舞は凄いな。だが消費MPが多すぎて乱発できないか…」
普通の冒険者なら剣王の舞はレベル60以上じゃないと覚えるのは難しいだろう。60まで上がればMPも多いはず。MPの少なさはチートで覚えた地味に痛い問題だ。
2周目のクリア報酬は、
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鋼のグローブ 守備力+7
素早さ ‐2
◇◇◇◇◇
スキルポイントは貰えなかったが、初回だけの特典ってことか。
気配感知と隠蔽スキルのおかげで最小の戦闘、しかも邪魔な敵には不意打ちの状態で先制攻撃が出来る。どんどんダンジョンを進め、3周目、4周目とMP限界まで挑む。
「弓技 連続継矢!」
「剣技 岩裂斬!」
ボスのトロルに覚えた剣技と弓技を使い検証している。3周、4周目で出てきたクリア報酬は、
◇◇◇◇◇
鋼の足あて 守備力+10
素早さ ‐2
◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇
鋼の剣 攻撃力+15
◇◇◇◇◇
鋼の剣は使うが他は装備すると重く素早さが下がるので売却もとい交換することにした。
「全部で3万5000ゼニーだ。なにー、MPポーションとポーション、それに木の矢に食料と交換してくれだとー。こっちは店のもんと交換してくれるからありがてぇ話だが…」
◇◇◇◇◇
アレス 17歳 レベル 14
HP : 70 → 86
MP : 20 → 28
力 : 26 → 34
素早さ: 24 → 32
魔力 : 11 → 15
幸運 : 11 → 15
身の守り:15 → 19
スキル : 剣技 100/100 弓技100/100 気配術 50/50
常時気配感知2 常時隠蔽2 鑑定感知
残りスキルポイント 110
◇◇◇◇◇
レベルも14まで上がった。まずはレベル30が目標、明日もここで稼ぐか、無理を承知で『セメタリーダンジョン』行くか悩む。
「MPも上がったし、一度挑戦してみるか」
明日は『セメタリーダンジョン』への挑戦を決めて帰宅すると、憔悴したリーゼとヨーゼフが家の前で待っていた。
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