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第2話 街への帰還

 ラビット族の集落で生活を始めて2週間が経過した。集落の皆と溶け込み始め、森と共存する無欲な生活もなかなか悪くない。


 相変わらずホロロ鳥を狩っているが、経験値が低くレベルの変化がない。新たに覚える気配術スキルに向けて、種を食べまくり、残りスキルポイントを100まで蓄えた。


 レベル1上昇でスキルポイント1上がる。つまり今の俺はレベル350近く上昇したスキルポイントを得たことになる。問題はステータスと装備、レベルを上げないとスキルポイントだけではステータスの変化がない。


 転生したが目標の無い俺はこれからの生き方に悩んでいる。有り余るスキルポイントを生かして冒険者として活躍するのはいいが、金稼ぎとレベル上げならやっぱりダンジョンか、この世界の街も見てみたい。


 「一度ヨークの街に行ってみるか」


 そう呟いた俺は長老の家に向かった。


 「―何、人里に帰りたいと?」


 「はい、ここでの生活も楽しいのですが色々とやりたいことがあります」


 「お主の人生、好きにするがよい」


 「また来ても宜しいでしょうか?」


 「構わんよ。お主なら何時でも受け入れる。また来るなら塩やコショウ等調味料を持って来てくれないか?森で得るにも限りがある」


 そう言った長老は大きな袋を渡してきた。これで調味料と交換ってことか。……長老これ、スキルの種じゃないですか。


 「長老、スキルの種のようですけど…売れば災いを受けるのですよね?」


 「もちろん受ける。その種をやるから塩コショウを集落に運んでくれ。物々交換なら災いは受けないから」


 「分かりました」


 「アレスさん、行ってしまうのですね」


 「君達のおかげで助かった、感謝しきれない。このウサ耳や尻尾なのだが…」


 「私達はありますし、アレスさんが持っていてください」


 こんなチートアイテム…いや呪い装備、簡単にくれるラビット族は無欲の塊だ。次来る機会があれば塩、コショウいっぱい持ってこよう。


 「ありがとう。それじゃ名残惜しいけど行くよ」


 相変わらずモフモフで可愛いミーファとミーティアに見送られ早朝集落を出発した。


 ヨークの街までの道程は北に50キロ、早足で歩き続ければ1日で着ける。2週間前なら死を覚悟したが、レベルも上がり剣と弓の加護がある今は、熊さえ出会わなければ大丈夫だろうと安堵している。時折魔物を感知するが、矢の制限もあるので戦闘は避けて街に向かい、その日の夕方到着できた。


 「まずは冒険者ギルドに向かわねば」


 アレスは死んだが…おそらく俺は死んだことになっているので、早く生存報告しておかないと色々面倒になりそうだ。


 「アレスさん!よかった、生きていたのですね!」


 冒険者ギルドに入ると受付の若い茶髪でギャルメイクの女性が喜んでくれているが…すいません、誰なのか全く分からないです。幸い名札に『クリス』と書いていたので適当に話を合わせることにした。


 「―それであの時キリングベアから負傷したが、なんとか逃げ延びて、傷が癒えるまでアロンの村に居たってことですか?」


 熊にやられた服を見せながら頷く。


 「そうですね、報告遅れてすいませんでした。あの熊どうなりました?」


 「討伐隊がキリングベアを討伐しましたが、3人…いや2人の冒険者が命を落としました。アレスさんの死体がなかったので、もしかしてと思っていましたが…」


 「そうでしたか…ところで、ヨーゼフとリーゼはどうしていますか?」


 「リーゼさん、私達を庇ってアレスさんが死んだって塞ぎ込んでいるみたい…。ヨーゼフさんが毎日励ましているみたいだけど…」


 「分かりました。後で顔を出します」


 幼馴染との関係も把握しておきたい。アレスはリーゼが好きだったが、それを知っているヨーゼフが敢えて見せつけ優越感に浸っていたと俺は予想している。

 まあ、一度話せばどんな人間性かも分かるし、会ってみよう。ここで最重要事項に気付く俺、アレスの家が、自分の家が分からない…。さり気なく聞こう。


 「クリスさん、僕の家から一番近いダンジョンは何処でしょう?」


 「えーと、アレスさんの家は、4丁目のレストラン『ホロホロ亭』の隣でしょ。そこからなら『セメタリーダンジョン』ですね。ただあそこの魔物強いから、今のアレスさんじゃ厳しいかな」


 『ホロホロ亭』の隣、説明ありがとうございます。

 ダンジョンのことを更に聞いてみると、この街には3つあるとのことだ。他のダンジョンの場所も確認したし、明日からダンジョンに潜ろう。後は、種の価値だ。


 「スキルの種買うならいくらですか?」


 「うーん、難しい質問ですね。スキルの種、まず出回りません。買うなら100万ゼニー以上で、オークション次第では300万を超えることもあります。どうかしましたか?」


 「いえ、ホロロ鳥が落とすと聞いたことがありますので」


 「それはやめたほうがいいですよ。ドロップ率が悪く、ベテランの狩人でも年に5個も拾えないとか」


 なるほど、予想通りのドロップ率。種が高額なのは予想していたが…この種を売り捌けば大金持ちだが災いを受けてしまう。厄介な災いはチートの代償みたいなものだ。


 クリスと会話を続けていると突然鑑定察知をする。ギルドなら鑑定士が居て当然か、会話を打ち切り逃げるようにギルドを飛び出した。


 遅い夕食を『ホロホロ亭』で取り、ポケットに鍵が在ったので鍵を開けて帰宅した。


 家に入り物色中だが、アレスは絵が上手だったようだ。両親の絵、下書きを終えた笑顔のリーゼ、絵のリーゼはまるで天使のように慈愛に満ち、幸福の笑みを浮かべているが、この絵が完成することはないだろう。アレスがリーゼを愛していたのがよく分かる。


 貧しい生活を送っていたのか、家具がほとんどない。母を去年亡くし、絶望に打ちひしがれる日記を読んだときは目頭が熱くなった。


 驚いた事に失意のアレスをリーゼが抱擁し、何度も慰められた。神託の儀で授かった気配術、両親のいない僕ではリーゼを幸せに出来ない。勇者になる可能性を秘めているヨーゼフがきっとリーゼを幸せにしてくれる。思いを告げられないがせめてリーゼを見守りたいと書かれていた。こいつ、相当苦しみ抜いたのか…。


 なんだか猛烈にヨーゼフをぶん殴りたくなった。


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