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7、迷探偵ピラット

いつもご覧いただきありがとうございます!

ブックマークいただきました! 重ねて御礼申し上げます!


ついにやってきました。真の主人公が大活躍!!(?)

迷探偵のカレーな推理が炸裂し、爆裂し、粉砕します!

「謎は全て解けたっす! 犯人はこの中に居るっす!!」

 手を広げ、聴衆に宣言するピラット。そして微妙な空気が流れる。


「……」

 一同はどのように反応していいのかわからず、思考を停止している。

「ふっふっふ」

 その沈黙を"期待の表れ"と勝手に解釈したピラットは、得意な表情で先を続ける。

「犯人はヴィライナ様ではありませんし、もちろんそこに居るクロス氏でもありません」

 どこかで見たことのある名探偵の推理シーンのように、ピラットは人々の前をゆっくりと往復する。

 だが、そのような演出は、一部の人間には逆効果だったようだ。

「単刀直入に言ってくれるか?」

「あ、犯人は"虚空"です」

 イラつき、危ない気配を滲ませるレクスリーにビビったピラットは、即回答した。


「"虚空"ですか?」

「それは白鱗の虚空か?」

 答えを聞いたのにピンとこないジャスとレクスリーは、うっかりピラットに問いかけてしまった。

 やったぜ食いついたぜ! と言わんばかりにピラットは調子を取り戻す。

「そうです。虚空なら遠距離で敵を斬ることができます」

「し、しかし虚空はシャニシシャラ公爵の持ち物。犯人はシャニシシャラ公爵だとでも言うつもりですか?」

 ジャスの指摘にピラットはチッチッチと口で言いながら指を振る。

「いえ、たしかに、"白鱗"には血縁による使用者制限がある。がしかし、それは直系の後継者のみ、というわけではない。そうですね?」

「うん、そうだと思う」

 いきなり問いを向けられたヴィラは、ごく自然体で答えた。


「いい加減にせよ! どちらにせよこの学園にはシャニシシャラ公爵の関係者はおらん!」

 再び話が長引きそうな気配を察知したレクスリーは、声を荒げてピラットの言を止める。が、これこそが狙いと言わんばかりにピラットは止まらない。

「いえ、一人だけいます。そうですよね? ププト先生」

 ピラットにより急に名前を出されたププトに向け、全員の視線が集まる。

「ぼ、僕、ですか?」

 ププトは自分に指をさし、驚き戸惑っている。


「貴方は現シャニシシャラ公爵の三男。庶子でもある貴女は家督は継げない。そのため学園で教師職に就いた。実家との縁を切る意味でも、元々庶民であった母方の姓を名乗っている。そうですね?」

「……」

「沈黙ですか……、ですが、調べてもらえばすぐにわかることです」

 ププトはふぅと一つ息を吐くと、ピラットの問いかけに答えた。

「そうですね、僕にとってはあまり良い思い出も無いので、あえて明言はしてませんでしたが……。しかし"虚空"が犯人というのも、状況証拠に過ぎないのでは? そもそも僕が"虚空"を持っているというのも貴女の想像では?」

 ピラットの発言にある様々な問題点、いやむしろアラしかない状態だが、それをププトは冷静に指摘する。


「ヴリハスパティ侯爵令嬢が亡くなった夜、彼女は"あの方は"というような言い回しをしていました。つまり、何者かの指示で動いていた、ということです」

「まさか、それが僕だと? 身に覚えが無いのですが……」

 酷いこじつけに、ププトは飽きれた表情だ。


「蒸気機関車が鉄機獣の襲撃を受けた際も、ププト先生は乗車していましたね? 襲撃を仕組んだのは貴方では?」

「これまた身に覚えのない……、確かに鉄道には乗りましたが、他にも乗客はたくさんいましたよ? それに自分の乗った列車を襲わせますか?」

 ばかげたことを、と呟きつつ、ププトは首を振る。


「えっと、"推理"の要素が見当たらないんだが……」

 不安になったクロスが声をかけるが、ピラットはまったく動じない。

(なんだろう? なんでこんなに自信満々なんだ、こいつ)

『見上げた精神力だねぇ』

(あ、スミシー居たんだ!? いやトレイターって呼んだ方がいいのか?)

『えっ、今それ聞く場面? いや、僕は厳密にはトレイターじゃないから、今まで通りスミシーでいいけど……』



「自分の食事に毒が盛られていることもありました。これも貴方が、いえ、貴方が指示をしてやらせたことでは?」

「初めて聞く出来事なのですが……、当然覚えがありません」

 もはやププトは失笑気味である。


「街中と、探索帰りの合計2回、ならず者にも襲われました。こちらも貴方の手配では?」

「お、おい」

 さすがのレクスリーも、あまりのピラットのしつこさに戸惑っている。

「いい加減しつこいって」

 クロスがピラットを止めようと肩に手をかけ──


「だから"覚えが無い"って言ってんだろうがあぁぁぁぁ! 言い掛かりを延々と続けおって! 愚鈍愚鈍愚鈍っ!』

 ププトが突如激高し叫び始めた。その声色が徐々に変わっていく。


 全員が驚愕の表情を浮かべる。ピラットも驚愕している。

(お前が驚いてどうするよ!)


「や、やっと本性を現したっす! 自分の狙い通りっすね!」

(こいつ、乗っかりやがった!)

 まさに計算通りという顔でピラットは高らかに述べる。

「謎解きするんじゃなかったのかよ……」

 ノリノリのピラットには、クロスの呟きは届かなかった。


『このような手段で我を貶めようなど片腹痛い』

 声色の変わったププトが一同を睥睨するように叫ぶ。

「とかなんとか言って、結局、正体を現してるっす」

『……』

「やめたげて」


「プ、ププト先生?」

 突然の事態に、レクスリーは未だ戸惑いの渦中にあった。

『クハハッ! 凡愚なる貴様らに我が高貴なる名を教授しよう』

 ププトがその左手を掲げると、上空から飛来した一振りの刀がその手に納まる。

『我が名は"虚空"』

 ププト、いや虚空は、飛来した"白鱗(はくりん)虚空(こくう)"を抜刀する。


『元より隠匿に然したる意味は無し。既に我が策略は成せり』

 刀を天高く掲げ、浪々と歌い上げるように述べる虚空。

「負け惜しみっすね」

「やめとけって」

『……』


「ププト先生! まさか虚空に乗っ取られているのか!?」

 ジャスが叫ぶように訴えかける。が、それが面白かったのか、虚空は邪悪な笑みを浮かべた。

『乗っ取り? クハッ! これだから蒙昧の輩は……。虚空(われ)の使用者は虚空(われ)という知性の恩寵を受けるのだ。シャニシシャラの、いや、この皇国の、500年の繁栄は虚空(われ)の恩寵あってこそである!』

 上機嫌で高らかに宣言する虚空。だが、急にその表情は憂いを含んだものに変わる。

『なればこそ、虚空(われ)こそが皇帝に相応しいというのに……』

 急に見下ろすようにヴィラを睨みつけ、虚空の独白は更に続く。

『にも関わらず、あぁ、忌々しき、チャンドラの血族。幾たびも我が道を阻む……』

 ププトの体を動かしているであろう虚空の感情が、ププトの表情を通じて露わとなる。そこには強烈な憎悪が垣間見える。


『しかし、そんな貴様らも最後には役立った』

 トンッという音を残して虚空は跳躍し、聴衆たちの頭上を越える。そして静止して動かない漆黒竜の前に着地した。


『こやつの制御は"不可能"と考察していたが、貴様らが"核"を弱らせてくれた……』

「まさか、"大崩壊の亡霊"の封印を解いたのも虚空っすか!?」

 虚空は答えず、ただにやりと笑みを浮かべるのみだった。


「奴をとめろ!!」

 レクスリーの声に応じ、全員が一気に虚空へと躍りかかろうとして……、


『手遅れよ!』

 未だに空洞を晒している漆黒竜の頭部へ、虚空は身を翻して飛び込んだ。


 漆黒竜の暗黒へと沈みつつ、虚空は呟く。

『分身体を発生させるのは白鱗(はくりん)霧消(むしょう)の力。つまり"大崩壊の亡霊"は白鱗の"使用者制限"を無視できる! ならば、"虚空(われ)"の使用者となりえる!!』

 虚空は暗黒に沈む"大崩壊の亡霊"の本体、黒いスーツの男にたどり着く。黒いスーツの男は依然として精神的ショックから立ち直れていないようだった。

『さぁ、"大崩壊の亡霊"よ、我が恩寵の元に!』




 "大崩壊の亡霊"が再び動き出す。その体が形状を変えていく。

 竜の姿であった"大崩壊の亡霊"は、その胴体から何本も足が生え、巨大な蜘蛛のような形状へと変わっていく。さらに、周囲に黒い染みが現れ、10体の黒いププトが出現した。その手には虚空を持っている。

『クハハハハハハハ! 愉悦! 愉悦なり!』

 巨大な蜘蛛が高笑いする。

『我覇道はついに成就する! さぁ、貴様らには滅びを与えよう!』

 10体のププトが一斉に右手の虚空を掲げる。遥か彼方より多数の砲弾が飛来する。着弾した場所からは次々と鉄機獣が現れた。その数30以上。


「ぐっ、こんな、ことが……」

 再びの絶望的な状況に、レクスリーが膝を折る。


 そのレクスリーの前に、ヴィラが立った。

「殿下、諦めるのが早いです」

 ヴィラは魅力的な笑顔を浮かべ、その表情とは対象的に全身には強烈な閃気を纏っている。


『待たせたね。何とか間に合ったよ』

 スミシーの報告を受けクロスは空を見上げる。遥か彼方から彼に向けて飛来する多数の物体が見えた。


 クロスもヴィラの隣に並び立つ。

「そうですよ、殿下。戦いはこれからです」


「いい加減、真面目バージョン予告とか、うんざりっす、うざいっす」

「お前、"うざい"が口癖になってない?」

「自分の出番がないとか、誰得だよって感じっすよ」

「いや、お前が出ても誰得だよ……」

「え~? そんなこと言っちゃっていいんすか? 自分のカレーな推理のおかげで、愛しのヴィライナ様の潔白が証明できたんすよ? もっと自分を崇め、奉るべきっすね」

「ありゃ自爆だろ」

「ふっふっふっ、私の頭脳にかかれば、それすらも計算通りっす!」

「あー、んじゃ、そのカレーな頭脳で、この先どうなるか、しっかり予告してくれ」

「え……」






「とりあえず、下にある評価押せばいいんじゃないすっかね?」

「いや、強引にそこへ持ってくのかよ」


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