新たなる機動甲冑
「ドロールで物足りなかった分、満足できる性能の機動甲冑が用意できている」
レオンハルトが親指を館に向けると「ついて来い」と手招きをする。
「って、新型があるのかよ?」
思わず食らい付いた翔太にレオンハルトが「当然だろう」と鼻の穴を広げる。
曰く「好き勝手やらせてもらった分は結果で応じさせてもらうさ」とのこと。それだけ聞けば「なんとも義理堅い」と感心もできるのだが、雇用主のレーアに言わせると「好き嫌いが激しい」とか。
「興味があることだと望んだこと以上の成果を出してくるけど、興味のないことだとお父様が直接要請してもノラリクラリなんだもん。宰相相手に愚痴っているのをよく聞いたわ」
呆れたように両手を広げながら、内実を暴露する。
「完全にマッドだよなあ」
「翔太の言うマッドやらの意味はよく分からないけど、言いたいことは何となく分かるわ」
ディする二人に不満があるのか、レオンハルトが「のらりくらりと放置しているのではなく、中身が中身だけに、結果を出すのに些か時間を要しているだけだ」と強固に主張。
「好き放題に私のことを貶めてくれているが、結果はきちんと残しているぞ」
「どうだか?」
なおも半信半疑なレーアがジト目で睨むが、レオンハルトに堪えた様子は無く全くもってどこ吹く風。
「それを証明するために連れて来たんだ。我が直接手掛けた機動甲冑の出来がどんなものなのか、その目でとくと見るが良かろう!」
レオンハルトが鼻息高く吼えるように主張すると、地下に設けられた工房の扉を開ける。
思い鉄扉の奥。天窓から差す月明かりのみの薄暗い部屋の中央に、2機の機動甲冑と思わしき物体がシートを被った状態で鎮座されていた。
「これは、例の新型なのか?」
日頃から旧型と化したドロールに不満を抱いていたガイアールが早速目を付けると、レオンハルトが首を傾けながら「新型というより、改良型かな?」と何とも微妙な言い回し。
「何故に疑問形?」
ツッコむ翔太に苦笑いしながら「新型の定義がな……何と言うか、あいまいなのだ」と言葉を濁した理由を説明する。
「機動甲冑という括りの中で、どこまでを新たに設計したら新型となるのか? 機動甲冑に限らず作り物全般に、決まりというか基準が無いのだ」
「全部が新設計なら新型、そうじゃなければ改良型だとダメなのか?」
悩むレオンハルトに定義を単純化したら? と訊いてみたが、返ってきた答えは「そんな単純なものではないのだ」とけんもほろろ。
「どれだけ新機軸をつぎ込んだ新しい道具や武具でも、全部が全部新設計なものなどあろう筈がない。たとえ古い設計の部品であろうとも、信頼性があり性能が十分担保されれば継続使用するし、部分的に見ればそれなりの箇所がある。使ったのが1個なら新型か? 1個でも使えば単なる改良なのか? 決まり事なの古今東西どんな文献にも載っていない」
「だったら本人が決めたら?」
理系人間あるあるな面倒臭さに閉口して適当に投げると「そうもいくまい」とまた面倒臭い答えが返って来る。
「私がどれだけ〝新型〟だと主張しようと、依頼主が〝改良〟だと言えば改良になるし、逆もまた然り。すべては依頼主の胸先三寸なのだ」
「そんなモンなのか?」
「ああ。そういうモノだ」
言葉遊びの様なやり取りをしていると、脳筋代表のようなガイアールがしびれを切らせたのか「そんなことは、この際どうでも良い!」と二人の話をぶった切る。
そしてお預けを食らい過ぎて我慢が出来なくなったイヌのように、早く! 早く! と被せてあるシートに手をかける。
「ご託はたくさん。そんなことちょり貴公が手掛けた機動甲冑の中身がどれ程のモノかだ。自信たっぷりに〝不満を解消する〟と申したのだから、このオレを満足させれる代物なんだろう?」
ニヤリと牙を剥いて尋ねるガイアールに、レオンハルトがムッとしながら「当然だ」と言ってのける。
「この〝私自ら〟が手をかけたのだ。工房に作らせるために、やむを得ず妥協したドロールとはモノが違うに決まっている」
何だよそれ! まるでガン〇ムに出てくるグ〇じゃないか。
心の中で翔太はどこの機動戦士だとツッコむが、自信満々なレオンハルトの前で口に出したりはしない。空気を読めないアブナイ人認定は翔太の本意ではないし、言葉遊びでこれ以上引っ張ったら「勿体ぶらずに、サッサと見せろ!」と主張しまくりなガイアールの不興を買うことになる。
「百聞は一見にだな」
「そうそう。先ずは御開帳」
そう片付けて、ガイアールとともにシートを剥がして出てきたのは、鈍色で見慣れたフォルムの機動甲冑。
ガイアールと二人して「え?」と目がテンになり「おいおい」と小さく呟く。
それもそのはず。もともとはパーセルが〝おもちゃ〟としてレーアに買い与え、転じて翔太の愛機となったウィントレスそのものであったのだから知っていて当然だ。
「これのどこが新型なんだ?」
不満たらたらなガイアールに「だから言っただろう。判断に迷うのだと」とレオンハルトが弁明。
「見た目は見まごうことなきウィントレス。実際に外装部品の大半は、ショウタの駆る躯体と同じものを使っている。そういう意味では既存品の改良だな」
「だよな。汚れや小傷がないことを除いたら、まるっきり見分けがつかないや」
「そうよね」
「私も同じ意見です」
自身の駆るウィントレス以外の何物でもないと言う翔太にレーアが頷き、クリスも同意見だと首を縦に振るとレオンハルトが「ふっ」と鼻で哂う。
「さっきも言っただろう、この〝私自ら〟が手がけるのだ。十把ひとからげな機動甲冑とは一緒にしないでもらいたい」
「おおっ! 自信満々」
「当然であろう。そこいらの工房が作る数打ち品とはモノが違う」
「なら問うが、コイツのどこが変わっているんだ?」
上から目線が癇に障るのかガイアールが挑発的に訊くと、またもやレオンハルトが「ふっ」と鼻で哂って、いっそう上から目線で「見た目以外のすべてだ」と言ってのける。
「動きの早さは言うに及ばず、力も装甲もすべてがショウタの駆るウィントレスよりも上を行っている。中身を鑑みればもはや別物だと称しても構わないほどにな」
「何だか戦闘機のアップデートみたいだな」
ボソッと呟いた翔太の感想に「ショウタが告げた言葉の意味は良く分からんが、言わんとすることは私の内容と近似のようだ」とレオンハルトが直感的に理解する。
「どれだけの違いかは実際に駆ってみたら解るだろう、天と地ほどの違いがあるから誰であろうと直ぐに実感できる」
「ふっ、大きく出たな。ならばこのオレが実際に乗ってみて、貴公の言葉が大口か否かを確かめてやろうぞ」
レオンハルトの挑発に、ガイアールが早速とばかりにハッチを開けると、新しいウィントレスにいそいそと乗り込む。
「さあ、動け!」
ガイアールの唸り声と合わせるように、躯体に動力が注ぎ込まれウィントレスが起動した。
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