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技術指南役

「喜べ。偉大なる発明家であり稀代の錬金術師でもあるレオンハルトが、わが国の技術指南に就いてくれると先ほど申し出てくれたのだ」


 大広間全体に届くような大声を張りあげながらパーセルが大戦果だと自慢すると「皆も聞くが良い」とレオンハルトを招聘した理由を語りはじめた。


「先日の親善試合を見て、儂はよーく分かった。これからの戦は騎士の力ではなく、機動甲冑をより多く持つ者が勝敗を制するとな」


 ヒトより巨大な機動甲冑の圧倒的な稜力と腕力を目の当たりにして、次代の戦争は機動甲冑の有る無しが戦況を大きく左右すると確信したのだという。


「僅か1騎で熟練の騎士十数人分に匹敵する強大な力を持つ反面、複雑なカラクリゆえに日々の手入れが大事となる。それゆえレオンハルトが仕えてくれるのは、わが軍の戦力強化に多大なる恩恵となるであろう!」


 自慢がいつの間にやらアジテーションになり「儂には見える!」と大風呂敷を広げ始める。


「機動甲冑が戦場で縦横無尽に活躍する姿が。少々値が張るのが難点だが、数さえ揃えばワの国のような大国とも渡りあうことも可能だろう」


 パーセルの強気な宣言に周囲の重臣たちも「おお」と色めき立つ。


「ワの国をも凌駕とはまた豪気な!」


「これでわがナの国も、大国の仲間入りが出来ようぞ!」


 猪突猛進なマニッシュやオルテガイアなどは既に勝ったような弾けぶりだが、翔太ははしゃぐ2人とは対照的に醒め視線で「どーかなぁ」と懐疑的。それがパーセルの琴線に触れたのだろう。


「貴公は儂の考えに間違いがあるとでも?」


 上機嫌に水を差すような翔太の言葉にプライドを害されたのか、パーセルが般若もかくやというくらいムッとした表情で訊いてくる。しかし世界史の成績が並な翔太の目から見ても、パーセルの考えは稚拙というかお花畑そのもの。


「数がモノをいうなら、大きな国ほどよりたくさんの機動甲冑を揃えれることにならない? なら国力の小さいナの国に勝ち目なんか無いよ」


 先の大戦でアメリカに負けた決定的理由を思い浮かべながら、翔太がパーセルの理論の穴を指摘する。

 かの大戦は負けるべきして負けたのだ。真偽のほどは定かではないが、開戦前に行った机上演習でもそれは証明されているという。冷静に考えれば回避するのが得策なのだが、それが出来ないのがヒトの持つ性。

 案の定脳筋な家臣から「お館さまに逆らうか!」と非難が飛ぶが、歴史が冷酷に証明している。


「いち早く高性能な兵器を揃えたところで、相手が大国なら金の力でその差は直ぐに埋められちまう。それどころか2倍3倍の兵力差を付けられのがオチだって」

 

 どこかの機動戦士でも刺刺の将軍が言っていたが、近代戦では「戦いは数」なのだ。ならば勝敗は最終的には国力というか経済力が勝敗を決することになる。

 理詰めな翔太の戦力判断にパーセルが「うーむ」と唸ると、側に控える宰相のカールハインツに「ショウタ殿は斯様に申すが、汝はどう思う?」と意見を促した。

 カールハインツは筆頭騎士らをチラリ見回したうえで「恐れながら」と己が意見を口にする。


「お館さまの「機動甲冑が戦を変える」の言は誠にその通りかと、未来を先読みするご慧眼には唯々敬服する次第でございます。しかしながら其処なショウタの言もまた真、戯言と一蹴は出来ぬかと?」

 

 翔太の意見に託けるような形で、遠まわしながら短絡的な考えに諫言を寄せたのだった。

 2人揃っての耳の痛い話に、パーセルが癇癪を起こすかと思いきや、さに非ず。

 パーセルもまた己が思考に拘るほどの頑固者ではないようで、眉間に皺を寄せて少し考えると「確かにそうよのう」と宰相の諫言を受け入れ翔太の言に理解を示した。


「今は未だかも知れぬが、いずれはワの国も噂を聞きつけ機動甲冑を揃えることになろう。国力の差を考えれば向こうは我が国の2倍3倍の数を揃えることが可能であり、そうなればショウタ殿の予言通り我がナの国の優位性は欠片も無くなるのう」


 反芻するようなパーセルの言葉にカールハインツが「御意」と頷く。

 少し考えれば至極当然な真理なのだが、中には理解できない御仁もいるようで「そんな弱腰でどうするのだ?」と咆える家臣もチラホラ。しかし脳筋な家臣たちがカネや大国の論理を理解することをできないのか「ならば商人から金を借りれば良かろう」と見当違いな解決策を出す始末。

 声のデカい無知ほど始末の悪いものはなく、当初は取り合っていたカールハインツも早々に匙を投げ「わかったわかった」と困ったように翔太に視線を遣る。

 オマエがまいた種なんだからオマエが何とかしろと、言外に訴えているのだが翔太にしたらいい迷惑。


「完全なとばっちりじゃないか」


 ガックリと愚痴ると、今までだんまりを決め込んでいたレーアが「余計なことを言った後始末よ」と耳元で囁く。雉も鳴かずば何とやらかと、乾いた笑いを浮かべるとこれまた世界史を思い出しながら「あー」と宰相らの意を汲むことにする。


「機動甲冑が遠からず戦いの主力になるのは、オレも間違いないと思う。だけど数が正義かと訊かれたら、オレは「間違いじゃないけど正解でもない」と答えるぞ」


 マルでもバツでもない翔太の具申にパーセルも「何とも曖昧な答えじゃな」と苦笑い。


「単純に「数が多い」ってのは、それだけで強いからね」


 不変の真理だけに、今の今までだんまりを決め込んでいたレオンハルトも「道理だ」と頷く。


「戦上手と愚兵が戦うとして、双方1対1ならば結果は問うまでもないが、愚兵が百人・千人ともなればいかに戦上手とて勝ち目はない」


「うむ。数の力とはそういうモノだ」


 レオンハルトの補足にパーセルも納得したように頷く。この例えは脳筋連中にも分かり易かったようで、誰一人として反論する者もいない。


「カールハインツが躊躇ったのも、大国のワの国ならば愚兵どころか強力無比な機動甲冑を2倍・3倍と揃えれるから、正攻法として立ち向かったら勝敗は見えているからであろう?」


 パーセルが問うとレオンハルトが「いかにも」と頷く。


「道ばたの童でも解ける簡単な図式。だがそれでも貴公には、その不利な状況から反攻に打って出る〝妙案〟があるのだろう? 後学のために是非とも聞いてみたい」


「あー。それは、わたしも」


 レーアまでもが割り込んでハードルを上げていく。さらにはパーセルまでもが身を乗り出して「そんな妙案があるのなら早く申せ」と発言を促す始末。すっかり高くなったハードルに「べつに妙案というほどのモノじゃないぞ」と前置きして翔太が私案を披露する。


「手としては簡単、数で劣るなら質で優位になるんだ。単騎でも圧倒的なら手を出すのも躊躇うだろうし、相手の顔面をパンと叩いて、驚いている間に手打ちにすれば勝ち筋もあるって話だ」


 自衛隊の基本思想と真珠湾攻撃の本来の意図を思い出しながら、小国なりの戦いかたを提示してみせる。

 すると意外に画期的だったのか、レオンハルトが「なるほど」と膝を叩き、脳筋連中は理解の範疇外かポカーンとしたまま。国王と宰相は「もう少し詳しく」と詰め寄るも最後まで質問を続けることはできなかった。

 大広間に雨でびしょ濡れの兵士が現れ、足元もおぼつかぬ疲労困憊の中「長雨による河の氾濫で大橋が崩れました」と交通インフラの大動脈が寸断したと報告したのであった。




 



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