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正に急転直下……だよな


「ちゃんと男の身体も用意してあるわよ。というか、こっちが本当のアンタ専用の身体よ」


 そう言ってレーアが翔太の腕を引っ張り上げて居間の奥にある控えの間の扉を開けると、これ見よがしに1脚置いたイスに騎士の服を着せた男性型のマネキンをほうふつさせる〝機動甲冑じゃない人形〟が座って鎮座していた。


「だったら、最初からこれを出せよ!」


「やーよ。そんなことしたってちっとも面白くないから」


 面白いか面白くないかだけだと?


「そんな理由だけで女型の身体に押し込んだのかよ!」


「うん」


 レーアがイイ笑顔で臆面のなく首を縦に振る。


 ふ・ざ・け・る・な!


「チェンジだ! 今すぐ男の身体に入れ換えをしろ!」


 せっかく使用可能な男の身体があるのに、何が悲しゅうて女の身体に押し込めらななきゃいけないのだ。当然のことながら翔太は〝使用する身体の交換〟を要求するのだが、レーアが「イヤよ」と真っ向から拒否をした。

 しかもその理由が何とも身勝手。


「だってその身体、とてもキレイでカワイイじゃない。それを使わないだなんて、あり得ないし勿体ないし、絶対に考えられないわ」


 女の子ボディーのほうが可愛いからという、合理性の欠片もない、ただそれだけの理由なのである。


「それこそあり得ない。オレは男なんだ!」


「知っているわ」


「だから、男の身体を使うのが当然だろう」


「その先入観はどうかしら?」


「先入観云々じゃなくて、自然の摂理で決まっている」


「その発想自体が先入観だと思うけど」


「うがーっ!」


 とまあこんな感じで、話し合いは意見がかみ合うことなく、己が主張をぶつけるだけでとことん平行線。

 翔太自身が元々気が長いほうではないので、頭に血が昇り詰めており、もはやブチ切れるのも時間の問題。

 そも、当然だろう。

 きっかけは偶然の産物だったとはいえ、今やレーアの都合でこの世界に呼び出されているのだ。そんな勝手な召還なのにこの仕打ちでは、怒るなと言うほうが土台ムリな話し。話をするたびにイライラが募っていくというもの。

 我慢するのももはや限界だと思った矢先、さすがにやり過ぎだと察したのか「姫さま、そこまでです」と、クリスがレーアの暴走を窘めにかかった。


「翔太さまをイジメるのはそれくらいになさいませ」


 さすがは忠臣。主の暴走には身を挺して止めるのだなと感心したのだが、よくよく聞いてみるとそうではない。


「姫さまをモデルにしただけあって、確かに大層お綺麗ではありますが、この姿のままではお館様への謁見ができません」


 更なる無理ゲーのために、これ以上翔太で遊ぶなと諭しているだけだった。


「おい、待てや」


 ぜんぜん諫言になっていない勝手な言い草だが、何故かレーアには効果があったようで「そうね、クリスの言う通りだわ」と殊勝に頷く。


「翔太で愉しむのはまた後にしましょう」


「それがよろしゅうございます」


「お父さまとの謁見は何時になってるの?」


「先触れを出しておりますので、午後には拝謁ができるかと」


 当事者無視で話がドンドン進んでいく。

 しかも怒涛とも思えるような展開の早さに頭の理解が付いていけない。

 慌てて「ストップ! ストップ!」と叫ぶと、勝手に話を推し進める2人の間に強引に割って入った。


「国王に謁見なんて聞いていないぞ」


「だから、いま言ったでしょう」


 いや、いや。そうじゃないだろう。


「オレの存在は、アンタたち2人以外には秘密だって言ってなかったか?」


「ええ、その通りよ」


 この世界での翔太の有り様というか状況は、武具というか白兵戦兵器である機動甲冑に意志が宿るなどという不可解な存在。国王を始めとする他の人間に知られてイタイ人認定は真っ平ゴメンという思いから、その事実を知るのはレーアと侍女のクリスのみだったはず。

 レーアもまた王女という身分故の柵から「公になんかできないわよ」と、翔太の存在を秘匿すること関して彼以上に積極的であった。

 しかし「その通り」と断言したレーアの目は泳ぎ、まるでドライアイかのように頻繁に瞬きを繰り返す。

 そして我慢が出来なかったのか……


「ゴメンね。お父さまにバレちゃった」


 レーアが小さく肩を竦めながら、憑依の事実をパーセルに白状させられたとカミングアウトした。


「あれほど秘密にしていたのに?」


 通常の訓練は言うに及ばず、先の親善試合でもレーアが乗っていないときは案山子に徹していたのに、だ。


「それもこれも、その身体を作るためよ」


 何でも〝機動甲冑じゃない人形〟をレオンハルトに発注したところ、王女のポケットマネーをはるかに超える金額を要求されたため、父親であるパーセルに金の無心をして「何故そんな大金が要る?」と追及されたのだという。


「酷いと思わない? 愛娘の可愛いおねだりに「理由を言わねば金は出さん」なんて言うのよ」


 頬を膨らませてパーセルの狭量に不平を漏らすレーアだったが、よくよく聞いてみれば何のことはない。


「酷いのはレーア。オマエのお頭だ」


 ひいき目に割り引いて考えてみても、レーアのおねだりが強欲で非常識過ぎるからだ。


「鎧を纏っているか否かの違いだけで、この身体は機動甲冑を小さくしたのと同じと言ったよな? だったらかかる費用も同額、いや小型化した分だけ割高になっているかも知れない。国として予算付けが必要な代物を、王女だからってホイホイとお小遣いで処理ができるか!」


 ちょっと考えれば分かりそうなもの。

 機動甲冑がもつ桁外れの高機能と戦闘力を鑑みれば、購入価格が相当高価なことは想像するだに難しくない。

 モノが違うので単純比較はできないが、現代日本の戦闘機と同等程度だと考えれば、機動甲冑1体の値段は数十億円程度となる。そんな大金、いくら王族でもポンと出せる限度を超えている。


「とはいえ、姫さまの〝機動甲冑じゃない人形〟購入の意思は固く、他言無用という条件で、翔太さまの秘密をお館様に打ち明けたのです」


 最後はクリスが事の顛末を補足して、事ここに至った理由を翔太に説明して聞かせたのであった。

 金額が金額だから当然何用だと問い詰めるだろうが、バカ正直に秘密事項を相手に話すか、ふつう? 当事者だから否応なく信じざる得ないが、他人の立場で訊いたなら荒唐無稽過ぎてイタイ人認定に一直線だぞ。


「それを国王が信じたと?」


「そうよ。わたしの人徳のおかげでね」


 いや、それはないだろう。

 翔太は心の中で断言する。事実「それは違います」とクリスまでもが即座に否定。


「親善試合で見せつけた、ウィントレスの破竹のような快進撃。どのように誤魔化したところで不信感を完全に払しょくすることは叶わず、お館様に無断で剣客を匿っていると思われたようです」


 その者が影武者となって孤軍奮闘したと推測したのだろう。当たらずとも遠からずのパーセルの推理に、翔太が「あはは」と渇いた笑いを浮かべる。


「姫さまのねだった金子を、お館さまは剣客へ支払う扶持だと思ったようで、そんなまどろっこしいことをするくらいなら「儂が直接召し抱えよう」という流れから翔太さまの存在がバレてしまったと」


 クリスが淡々補足説明をするが、その目はあからさまに「おバカでしょー」と訴えているし、聞く翔太もレーアのバカさ加減に呆れてモノも言えない。


「経緯は分かったけど、聞けば聞くほど「なんだかなー」だな」

 

 自分で言うのも何だが無機質なパワードスーツもどきや他人の身体に憑依するのもどうかと思うが、ヒト型サイズ人形を得るために秘密が露呈するとは代償が大きすぎる。


「そこはもう「姫さま」ですから」


「五月蠅いわね!」


 そこはかとなくディするクリスをレーアが一喝して黙らせると「翔太にそれだけの〝値打ち〟があると、わたしが感じたからよ」とそっぽを向きながら答える。


「オレにそんな値打ちってあったかな?」


 剣技に多少の自信はあるが、上には上がいるだろうから絶対の強さなどない。それに騎士の条件には指揮力など剣技以外もあるだろう、たかが高校生の分際の翔太にある訳がない。

 しかしレーアの意見は違い「自分のことを卑下し過ぎよ」と真っ向否定。


「アンタの価値はウチの筆頭騎士たち以上よ」


 きっぱりと言い切った。

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