第17話『眠れぬ夜の動き』
11人は、男女に分かれて絨毯の上に眠っていた。
いい感じに固くてそれなりに弾力もあり、寝心地はなかなかに悪くない。
この1ヶ月、コウとキサクのベッドとして活躍した代物の価値は伊達ではない。
「ぐがぁああっ…!かぁッ!?」
「ああ…おぉぅ…いいねェ…」
信じられないイビキと信じられない寝言…──ヒロトを含めたある4人は眠れない様子だ。
「なぁー…眠れねぇヤツいるかー?さっきからクマみてぇなイビキで寝れねえよ…誰だよこの声の主」
返事は帰ってくる。
「…キサクだよ…この部屋に慣れたのか知らないけど急に女を捨てた…」
暗い中、惜しくも眠りに辿り着けなかったコウが答えてくれる。
「元から男勝りな性格は露見してたし…不思議じゃねえだろ?」
「でもうるせえよコイツ」
「へへっ、まあな…」
「ぬぉぅ…っ、ふぅ…いいよ…」
それにプラスして、可笑しな寝言…言ってることはオジサンっぽいのに低音の女声っぽい。
「さっきからオジサンがうるせぇんだけどさぁ…」
「アンリーナですよね…ほんとに何この寝言…」
「お前が知らんとなるとどうしようもねえ…」
リゼレスタからの返事だ。
「授業中居眠りとかしようって時にも、凄いですからね彼女」
「どんな寝言だ…?」
「胸に手で巨大な丸いドームを作るようにして…『私のキョパイに溺れろぉーっ』なんて言うんですよ」
「まあ夢くらいは見せてやれよ…キョパイなんだからよ」
「…漢字が違いますよ…」
「ヒロト…どうしてねむれないの」
「おおバーギラ…起きてたか」
バーギラはトコヌイの元から立って、ヒロトのそばにやってくる。
「ラビットのこときにしてるの?」
「…──お前に嘘はつけねぇよなぁ…」
ヒロトの声から、陽気さが消える。
「これからどうやって仲を戻すんだ?」
コウがそんなことを聞いてくる。
「…別に…無理に戻す必要なんかねぇ…」
「えっ、それは…」「悲しくないですか…」「ヒロト…」
「あいつは特別な事情を持った人生を生きてんだ…俺はそいつを酌量してやらねぇといけねぇ…」
3人はヒロトの話を聞いて、思うことが多すぎた。
「でもヒロト…」
「…どうした」
「そういうリクツでは、ヒロトがラビットからはなれるりゆうにはならない…」
バーギラの意見は的を得ていた。
ヒロトがあっち側を酌量するとなっても、そもそも、ラビットがヒロトを避けるほどの事情を持っている確証はない。
ましてやヒロトに幻滅したなら、ラビットは敵意を向けるのではなく、無視するはずだ。
「だったら、ちと今から付き合えや」
ヒロトは起き上がると、ドアの方へと歩いていく。
「ヒロト?どこに行くんだ」「もう0時ですよ?」
そうとは言うが、他2人も起き上がっていた。ヒロトに付き合ってくれるらしい。
「まあ一先ず付いてきな…無理にとは言わねぇがな…」
「「「…」」」