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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第2章『物語の再開! 名家の才女ラビットの受難 力を失いし弥上ヒロトの不幸』
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第16話『ラビットの喪失』

「…とまあ、今のラビットは俺を避けているんだ…」

「「「…」」」

 話し終えたヒロトは、憂鬱げな表情のまま、俯いてしまった。

「これをいうことで、たのしみはきえるけど…ひみつはいつか、ぜったいにバレるものだから」

「…ああ、いつまでも突き通せる秘密なんてあり得ねえ」

 他の9人も、バーギラを責めなかった。

 逆に変えようのない真実を突きつけられ、反論も述べられなくなった。


「何か理由の心あたりってあります?」

 リゼレスタが聞いてくる。

「ちょっ…リゼレスタはん!」

「その質問はさ…」

「えっ…あっ…!もしかしてプレミ!?──ヒロトさん!?」

「…はぁ…」

「うぇ!?」

 急に溜め息をつかれリゼレスタは驚くが、どうやら説明してくれるらしい。


「…確証はねえが、鬼神のオーラが消えた俺に幻滅したかもしれねえな…消えてから2日は優しく接してくれてたんだけどなぁ」

「ええ!?でも不自然じゃないですか?」

 クレアがヒロトにそう言うと、ヒロトはそれに反応を見せる。

「だよなぁ尼野」

「え?ええ…」

 クレアの見解では、ヒロトは原因を究明するため、ずっと悩んでいたらしい。

「ずっとライバル関係を続けてきたんだ…俺ならどんな理由があっても去りしを追うつもりは無いがな」

 すぼみきったヒロトの背中を見て、他の皆も彼の心中をお察し刷るのだった。


「…じゃあさ──」

 クレアがヒロトにさらに問う。

「ラビットさんは、ヒロト君を避けるとき、どんな感じだったの?」

「っ!」

 ヒロトは、クレアからの思いがけぬ質問に驚愕することとなった。

「…むぅ…」

 クレアの質問に、ヒロトはラビットとはちあった朝を思い返す。

 記憶が確かならば、あの顔は…──

「悲しそうだった…?」

「いや…」

「辛そうだった…?」

「違う…──あの顔は…」

 クレアに言われて初めて、この事実に傷つくことになった。

「恐れていた…」

 全員信じられずという様子。


 マーニとキサクも食い付いてくる。

「えっ!?なんでなん!」

「俺だってわかんねぇんだ」

「思い違いやあらへんの」

「…もしかしたらそうかもしれない…だけど今になって思い返すと、ラビットの恐怖した顔が、脳裏にベッタリと張り付いて剥がれねぇんだ」

「「…」」

 アシュも違和感を覚えたかこう切り出す。

「そもそもヒロトの何を恐れるんだ?」

「ありえないよな…?オーラも今や無いし」

 サルマも便乗する。みんなこう言うが、ラビットには特殊な事情があるのだろうか。


「ラビットさんが、ヒロト君を嫌がってるとしても、困っていたら手を貸してあげましょうよ」

「ああ、そのつもりだ…」

 ヒロトにとって、彼女に受けた恩に報いるため、やれることはすべてするつもりだ。その思いは変えるつもりはない。


※職員会議


 ──カツ…カツ…

 ラビットは、テンカと一緒に部屋へと戻っていく。

「そのロケットは、お前に渡しておく…──つうか、元はといやあムーン家の血を引くお前のモンだ…」

「…ありがとうございます…」

 彼女は先程から、ロケットの両親の顔に釘付けになっていた。

 ラビットは、ムーン家の事件の解決の資料として、両親の写真一つさえ残されなかった。

 両親の顔を見たのは、これで2年ぶりとなる。


 カッ…

 ラビットが足を止めた。

「…どうした」

 テンカが振り返ったとき、ラビットはこちらを見つめていた。

「言ってくんねえと始まんねえぞ…」

「…わたくしは初めに蓋が外れているのを見たとき、きっと炎の燃える屋敷で倒れた屋根や柱で、都合よく上だけが紛失したものだと思っていました」

 ラビットの注目は、写真から蓋の外れた部分に移る。

「この蓋はホック状になってますね…」

「…やっぱりえらく勘がいいんだなぁ」

 上の蓋のホックも、下の穴を一切傷付けず外れていた。

 これが何を意味するか、分からぬものは無いだろう。


「…間違いない…これは人為的に外されたんですね…!」

「ああ、ご明察だなラビットのお嬢」

「でも、なぜこんなことを…」

 テンカは憶測を語る。

「そのタイプはムーン家の特注タイプだ、遺品の倉庫から裏に回って高値で取引されても可笑しくねえ…」

「…」

「…なあ、俺からも質問させてもらうぜ」

「?」

 ラビットは、テンカと目を向けあった。

「ちと野暮かもしれねえが…──もし俺の推測が正しかったとして、誰かがそのロケットを盗んでいたとしたら…」

「…え?ふふ…変なこと聞きますね──」

 表情を急に綻ばせるラビット。

 テンカは気になって、彼女を凝視する。

「…許さないに…決まってるじゃないですか…」

「…」

 その声は、ラビットから何の抵抗もなく顕れていた。


「…あれ?わたくし…何を言って…」

「…なんにも言ってねえよ…お前は」

 092号室に到着した。

 ラビットが部屋に入ったのを確認して、テンカは廊下を戻るのだった。

「(面倒くせぇー…)」

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