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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第2章『物語の再開! 名家の才女ラビットの受難 力を失いし弥上ヒロトの不幸』
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第15話『夕暮れに差し当たり』

「…日もとうとう沈んで来たか…」

「だな…」

 窓から外を見て、ヒロトはコウとそう言った。

 結局一人も欠けることもなく、部屋に残っていた。

「私たち、別に帰る理由ないけど…」

「だよね」

 3組の3人も言う。

「まあ…意地でも拘束すっけどな!」

「ウェーイ!」

「パリピみてえなノリでイキんなよリゼレスタ」

「ひどくないですか」

 そんなやりとりがあった中、みんなの表情にも笑顔がもたらされる。


 トコヌイやアンリーナ、バーギラも、楽しそうな彼女の様子を見て嬉しそうだ。

「リゼレスタがこんなに楽しそうなのを見るの初めてやぁ」

「こいつ、陽キャとは絶対につるまないってずーっと言ってるのに」

「だってこの空間居心地いいんだもん!」

「かんきょう…てきごう」


 10組もそれに頷く様子だ。

 マーニとコウが同意してくる。

「そりゃそうやろぉ、何だか変に照れくさいけど、ヒロトって何かそういうのあるよなぁ」

「なんだか初対面でもうまく馴染めたよな!」

「へへっ、なんだよ“そういうの”って──みんなわかるかぁ?」

「「「めっちゃわかる!」」」

「えっ!?わかんの!」

 どうやらヒロトの知らないところで、彼のイメージは膨らんでいるらしい。

「まあ!悪い気はせんが!がはは!」

「「「あははは!」」」

 結局ヒロトは他の言いたいことはわからなかったが、悪い気はしなかったらしく笑っている。

「ヒロト君、ホントいい人になったよね」

「あ、尼野!いや…照れちまうっての」

 笑いに包まれる10組の中、一人、バーギラはヒロトの様子に違和感を覚えているらしい。


「──…」

「ん?どうしたバーギラ」

 彼女はヒロトを見つめている。

「…ヒロト…すこしきになることがある」

「え?どうした」

 その反応を見てから、バーギラの脳内の疑惑が確信に変わった。

「なにか…かくしてるよね」

「は…はぁ?」

 他のメンバーは状況の変化に困惑している。

「ど…どうしたのバーギラちゃん」

「…そ、そうだぜらしくない──」

 アンリーナに便乗するヒロトの言葉に、バーギラがこう重ねる。

「ラビットは…さいきんどうしてるの」

「っ!?」

 ヒロトは強く動揺したかに思えた。


「確かに最近会ってないなぁ」

「どうしたんだろ…」

 気付けばそんなやりとりも始まった。

「さっきからずっと、ようすがへんだった」

「流石、野生の勘つうのは恐ろしいな…」

 ヒロトは重たげに溜め息をつく。

 ラビットのことを忘れようと徹していたが、まさか彼女の勘に最初から見抜かれていたとは。

 そんなヒロトも、ラビットはやはり忘れられずという様子だ。

 バーギラを責めることはなく、ヒロトは逆にみんなにひっそりと、今のラビットとの関係を教えることにした。

「一応教えとくか、いずれバレることだしな…」

「え…何この展開…」


※その一方…


「あ…うぁ…ぅう…」

 会議室の席に座らされ、ラビットはテンカの運んできた箱の中身を見せられる。

 すると突如、泣き始めてしまった。

 箱を受け取り、その中身を拾い胸に押し当てたかと思うと、もうすでに泣き崩れていた。

 その手に強くと握られているのは、黒ずんだ金属…──その形を見るに…


「「「…」」」

 教員達は、ラビットに対して何の声もかけはしなかった。あのグンメティでさえもだ。

 それは、目の前のたった一人の少女の慟哭が、本気であると信じて疑わせなかったためである。

 だが、グンメティが声を掛ける。テンカに。

「テンカ、あれは何…──?」

「あれか…あれはな…」

 ラビットの手に握られているのは…──

「…ロケットだ」

「ロケット…?ジェット機の破片?」

「違えよ、パカパカ開く装飾品だよ──それとこいつは、ムーン家の遺品だ」

 ラビットがなぜ涙したか。

 その黒ずんだロケットに、両親の写真が写っていたこと。

 そして、開閉の蓋の役割を持つ、上部分が外れてしまっていることだった。

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