第14話『裸の付き合いへ』
※シャワー室
「バーギラはんシャンプー流すな〜」
もこもこのシャンプーを被ったバーギラにシャワーを思い切りかけると、彼女は目を開いてその全裸体を犬のように震わせて水を飛ばした。
「うわっ!あはははっ」
辺りいっぱいにお湯が飛び散って、女たちは楽しそうに笑い声を上げるのだった。
──そんな音や黄色い声は、部屋で坊主の修行をするように居座る男にも聞こえてくるのだった。
まあ、その頭は煩悩に満ち、棒を持った師範があれば、もう既に肩を脱臼しているのだが。
「何だか今バカに聴覚が冴え渡ってるな…」
「わかるわぁ」
ヒロトがそう言うと、コウも頷く。
「いやこれさ、絶対どこかのドア閉め忘れてるよ」
「絶対そうだよ。じゃなかったら今の聴覚イルカくらいあるよ」
サルマとアシュも、ますます耳が冴えるようだ。
『──…んっ♡』
「「「ん?」」」
急にとびきりの嬌声が聞こえてきた。
「この声聞き覚えが…」
「く…クレアさんじゃない?」
コウとサルマの言うとおり、その声はクレアのものであった。
だがその声に気づくのはヒロトのほうが早かった。そのセンスはまさに、コンマ24秒。
「何が起こってるんだ?向こうで」
「バカヤロー見に行くなよ」
「行かないよ!──大体ヒロトはどうしたの!大概こういう現状だと、一番に鼻の下を明かすのは君だと思うけど」
「…そうだな」
サルマの問いかけに、ヒロトは答える。
「この状況で立ち上がらない息子など斬り捨ててやる」
この4人の中で一番欲に忠実だったのは、ヒロトだったようだ。
──ちなみに、今シャワー室ではこんなことが起きている。
「ああっ、アンリーナさんキサクさん!何をっ」
「さっきからブルブル揺らしとるこのケしからんブツは何や!」
「もぎ取ってやる!」
「ひぃいーっ」
貧は富に対し、磁石の両極のように激しい執着を発揮していた。
「ちょっ、アンリーナやめてあげてよ!」
「せやアンリーナはん!」
「キサクちゃんもやめんかい!」
3人がかりで止めに入るも、2人の暴走は止まらない。
奥で倒れてビクビクと震えるクレアを見逃したが、アンリーナとキサクは3人を一気に見た。
「わっ!ちょっ…アンリーナ!?」
襲いかかるようにこっちに来たアンリーナに、リゼレスタは避ける間もなく押し倒される。
「この胸かァそんなこと言うんわァ!?」
「いや意味わかんない!!」
アンリーナがその胸を揉みしだく。
その大胆な手つきに、リゼレスタの中で何かが暴れ出した。
「ちょっ!アンリーナ…っは…激しッ…!」
「リゼレスタの裸こんなんになってんだ!ナマイキだぞこの!いいオッパオしやがって!」
「オッパオ!?イヤっ…私それほど大きくないし…ッ!」
「サイズの問題じゃねぇ!こっちはあるか無いかの話なんじゃあーッ!」
「いや意味わかんないんだけど!」
そして、戦争はこちらでも勃発する。
マーニはキサクに見られ仰け反っていくが、度々にじり寄られていく。
「いやホンマ落ち着けって!おムネなんか脂肪よ脂肪!キサクちゃんのがスリムでええって!へへへっ!」
「ウチはそれが欲しいんやァーッ!!」
「いぃーっ!?」
気付けば壁に抑えられ、リゼレスタ同様揉みしだかれていった。
「何やこのブツ!ダイエットして引っ込ませろや腹ごとよぉ!」
「おいッ…それェ…ライン超えッ!!──ンホォおおアー!?」
そして、残されたバーギラとトコヌイだったが…。
「この状況どないしよかバーギラはん…」
「…」
「…?バーギラはん?」
バーギラがこちらを見つめてくるのに、トコヌイは不思議そうな様子だったが…──
「トコヌイちゃん…」
「…ん?」
「わたしのかあさんになって」
「…──え?」
驚きのスピードで間合いを詰められると、突如として胸をガッと掴まれた。
「えっ!?」
思考も追いつかぬまま、口が先端に寄せられ…。
「ズゴゴゴァーッ!!」
「アッハァアアア〜ッ!!?」
「ジュォオオーッ!!」
「やっ…やめてやぁ〜っ」
──だが、その声が聞こえてきたのもつかの間…。
「でけえ嵐だったなぁ…」
男どもの鼻に丸めたティッシュは、赤く染まっていた。
※
「ど…どうだったシャワーは!?」
「ず…随分と遅かったなァ!?」
「「アハハハッ!」」
ことの顛末は耳でしっかり追っていた男子共だったが、女性陣は…。
「「「…」」」
ただ無言であった。
「ど…どうしたの」
「「「何が」」」
「いや…何かアンリーナとキサクとバーギラの頬に…手形が…」
「「「何でもないッ!!」」」
「「「ハイぃっ!」」」
コウが触れた話題は、触れない方がいいらしい。
「おいおい尼野、しっかりしろよって」
「ほわほわほぇ〜」
さっきの会話を聞いてからだと、イメージが全然違うものだ。
ニヤニヤしながら、ヒロトは言う。
「お前も成長したなぁ…」
「ほわぁあぃいああ〜」
「じゃあ男子たちも浴び行きいや」
「え?」「いや、今はその…」
「何で立たへんねや」
キサクとマーニは、なぜか立たない男子を不思議そうに見るのだった。
「男にも事情があんだよ!察しろ」
「え?」
リゼレスタは頭の上に?マークを浮かせるが、アンリーナは気づいた様子だ。
「まあ落ち着くまで座ってたほうがいいっすよ」
「理解頂いて助かるぜ」
「またからとくしゅなにおいする…たぶん、いまイタチくらいはボッキしてる…」
「言うなやバカヤロー」
「ボッキってなんや」
「知らんでええやよー」
「?」