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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第2章『物語の再開! 名家の才女ラビットの受難 力を失いし弥上ヒロトの不幸』
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第13話『職員会議とラビット』

「さあ、ラビットさん、座って?」

「えっ、ど…どこに」

「どこってあそこよ」

 ちなみに2席空いている。

 2人の先生の間の席と、楕円のテーブルの一番端の、リズレと向かい合うような席だ。

「うふふふふ」

 グンメティは笑って、先生の間の席に入っていった。

 その行動によって、ラビットが座れる席は1つに絞られてしまった。

「まあまあ、座りたまえよ」

 グググ…

 リズレが魔法の力で椅子を机から引き出した。ここに座れということだろう。

「…はい」


 ラビットはとにかくそこに座って、そこで一気に様変わりした視界の情報に驚いていた。

 学園長リズレに向かい合うだけでなくその周り8人にも注目されているようだ。

「ねえちょっとみんな怖い顔しないでよ、ラビットさん怖がっちゃってるでしょ〜」

 グンメティがそう言うと、周りは少しだけ緊張の空気を緩めるように徹した。


「──いやぁ、ごめんな。今日の話は、結構真剣なものでね」

「…は、はあ」

 一組の担任であると同時に、ラビットの担任でもある、ガンダー。

 時には10組の旧担任の代役も務めていた程に、できる先生である。

 いつも笑顔を絶やさないが、先程までの表情は真剣な色味を帯びていた。

「──大丈夫だよ。ラビットさんには質問に答えてもらうだけだからね」

「──今すべき謎の解明には、ラビットちゃんの証言が必要なんだ。別に無理にとは言わないけどね」

 バウンサーとルキャミスが言う。

 前者は活発な話し方だが、後者は落ち着いた様子だ。

「そうだよね、秘密はできるだけ守ってもらっていいよ」

「でもどうしても話してほしいこともありますけど…」

「その時はその時ですよ」

 女性とは見えても男性のワンターマ。

 アンリーナたちの担任のニュイェール。

 冷静なイケメンのミラード。


「…あれ?」

 ラビットは違和感にかられた。

「テンカさんは…?」

 彼がなぜか居ない。

 彼は割と重要な役割の筈だが…。

「ま、じきに来るよ」

「…?」

 グンメティの返答にも違和感を感じていたが…。


「──じゃあラビット君、早速だけど質問を始めるよ」

「…はい」

 リズレがまずは質問をするらしい。

「元気かい?」

「え…いいえ…」

「…だろうね…相当追い詰められているらしい…──悪夢を見たと聞くけど」

「はい」

 テンカに悪夢について伝えたことがあった。情報はリズレだけか、いや教員全員に回っているらしい。

「…あの夜の夢です…」

「なるほど…」

 ラビットの語る“あの夜”で、教員に何のことかわからぬ者はない。

 言うまでもなく、ムーン家の悲劇のことだ。

「…君はあの夢で、少年の背後から出る、巨大な人形の何かを見たんだね…?」

「…はい」

 あの夢で、その事件当時の年齢に若返っていたラビットの前に、一人の少年が現れた。同い年くらいの少年の背中から、巨大な影が現れたというのだ。

 これも、ラビットがテンカに語ったことだ。

 …だが不思議なことに、ラビットの救出にも関わったリズレも同様、あのとき巨大な影を見たというのだ。


「じゃあ、次の質問だけど…──」

 リズレは次の質問を聞こうとしていた。

 だが…。

「…」

「…?」

 なかなか切り出さない。

 他の教員と目配せまでして、言いづらそうにしていた。

「どうしたんです」

「じゃあ、私から言っちゃうね」

 何食わぬ顔で手を上げたグンメティが、彼女らしくこう言う。

「この質問は、ちょ〜っと無粋かもだけどね…」

「…?」

 グンメティを止める者はない。

 彼女は一気に切り出した。

「最近弥上ヒロトくんを避けているらしいけど、今回の夢で彼を疑ってるの?」

「なっ!?」

 ラビットは驚愕に顔を歪ませた。


「そんなことあり得ません!」

 彼女は机を叩いて立ち上がってそう叫んだ。

 その様子には、教員も全員驚いていた。

「…──!あ…いや…これは」

 ラビットは、今になって我に返る。

 急に自分が抑えられなくなったのだ。

「いや、いいんだ」

 リズレがそう言う。

 他も気にした様子はないという様子だ。

 …むしろ、待ち望んだ返答だという様子だ。


 ──ガチャ…

 その空気を断つように、ドアが開いた。

「来たね…」

 リズレがそう言うので、ラビットはそこを見る。

「…よう」

 テンカがドアから入ってきて、ラビットの方へ歩いてくる。

 そしてその手には、何やら箱が握られていた。


「テ…テンカ先生…」

「…ラビット様よぉ、この中のモノに見覚えがあるんじゃねえか?」

 テンカに箱を渡される。

 ずっしりと重い…──どうやら中に何かが入っているらしい。

「…何があるのだろう…」


 ──パカ…

 箱を開けると、そこには…

「…ッ!」

 ラビットはしばらくそこに佇んで…のちに…──

「…うぅ…ぁあ…」

「「「…」」」

 …教員達のいる中で、涙を流し始めた。

 その箱の中にあったのは…。

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