第12話『みんなで楽しい場所』
コウとキサクやバーギラ等のいつもの6人に、修業の予定のないヒロトも加わり、クレアやアンリーナ達もやって来た。
現在のこの部屋の人数は、11人。
まだ日も暮れないという時間帯、コウの部屋はワイワイと賑わっていた。
「うわあ、トコヌイちゃんの髪ええ匂い〜」
「キサクはんわかってはんなぁ〜実はこれ、今流行のあれなんや!」
「ええ!あの特注ブランド!?」
「ちゃうちゃう、マーケットの」
「なんやね〜ん」
「アハァ〜」
あんなキサクでも、時には女の子らしい一面を見せるのだなぁと、コウは不思議な面持ちだ。
「ヒロト…なんでみんな、かみにこだわる」
「髪は女の命とか、そんなのも言われてっからなぁ…でも俺にはわかんね」
「わたしも…チンコないからおんなだよ」
「じゃあ、お前もちっといいシャンプーでも使ってみるか?──なあキサク、マーニも含めて3人でシャワー浴びてるんだろ?バーギラにはどんなシャンプー使ってんだ?」
「そこそこいいの使ってるやよ〜」
「だってよ」
「…だから、いいにおいなんだ…──わたし…はじめはかみをあらうものだとおもわなくって、あまいにおいもしたからノミモノだと…」
「ブハハハハッ!!」
ヒロトは大哄笑した。
それに相対して素っ気ない対応をするのが、リゼレスタだ。
「いやシャンプーは飲み物じゃないからね」
いかにも正論といえるべき答えだ。
だが、バーギラはそれに…
「え…?」
「…えっ!?」
一度この場に沈黙が訪れる。
「どうりでいい匂いがするわけだな…(?)」
「「「きゃあああーッ!」」」
バーギラの友達3人も一気に悲鳴をあげた。
サルマも汚そうに苦虫を噛み潰したような顔になった。
──一応その疑惑は、後に嘘だったとわかって安心した。
シャンプーを飲み物だと判断したのではなく、髪を洗うもの兼飲み物だと思っていたらしい。
「一応それも問題だかんね?」
アンリーナが冷静なツッコミを呆れながらするのだった。
「キサクとマーニにとめられてたりゆうって…それだったんだ…」
「ありがとなホントに…」
「「せやな」」
口にシャンプーを運ぶバーギラを止める2人が目に浮かぶようだ。
「気になったんですけど、皆さんシャワーってどうしてるんです?」
クレアが首を傾げてそう言うと、キサクとコウが答える。
「交代制やな、女子男子の順番で浴びてるんや」
「ちょっと変かもだけど、もうみーんな家族みたいなもんだからな」
その答えを聞いて10組の様子を見れば、もはや疑う余地もあるまい。
※
「ラビットさん、じゃあここに入って」
「は…はい」
ラビットとグンメティがやって来た部屋のドアには、このような紙が立て掛けられている。
「“現在職員会議中…?”」
「ええ」
「ちょ…いいんですか!」
「まあまあ上りなさいな」
グンメティはラビットの肩にしっかり腕を回して掴み、右手で扉をノックする。
「ラビットさん連れてきたよー」
軽い声に、鍵がガチャっと音を立てた。
「じゃあ、入るわよー」
「…わかりました」
職員会議にお邪魔する生徒など、きっと初めてのはずだ。
グンメティがドアを開け、ラビットはそこに足を踏み入れた。
「し…失礼します」
そこには、楕円状のテーブルに座る大人が9人。
「待ってたよ?ラビット君」
この学園の学園長リズレを筆頭に、この学園の有力な教師が雁首を揃えていた。