第06話『クレアと10組の親睦』
コーラを合間にハンバーガーを次々と頬張っていき、ポテトのオーダーが止まらない。
その元凶弥上ヒロトがジャンキーな巨大肉バーガーを食べ進めるのを見つつも、10組のみんなはハンバーガーをごく一般のペースで食べ進めるのだった。
「いやあ美味え!俺はジャンクフードが大好きだからよぉ、この世界にもあって助かったぜ」
「「「そりゃよかった!」」」
もはや10組の連中もこの光景も見慣れたらしい。
「どうだバーギラ、うめえか」
「わたし…こういうの好きかも」
バーギラは特に野菜ベースのバーガーを気に入ったらしい。
「あ…あはは…」
クレアはポテトをゆっくり食べ進めながら、その光景を見続ける。
幼き頃と見違えて声も出ない様子だ。
「ん?どうした」
「その…変わったなぁって」
「ま、8年もありゃあ変わるだろうな」
「そういう尺度なんでしょうか…?」
虚弱体質だった8年前のヒロトは、小さいバーガーも食いきれなかったろう。
あまりにも劇的な変わり映えだ。
「──んんー…」
ヒロトは、自分を境にクレアと10組に生じた隔てりに気づく。
「ああそうだ、尼野はまだ10組と交流がねえんだ──どうにか仲良くなってもらいてえな」
「せやなー!」
まずはじめに食いついたのは、口にマスタードをつけたマーニだ。
「ソースついてんで」
「あっ…ちょっと拭いてや!」
「しゃーないなぁ」
キサクにナプキンで口を拭ってもらってから、再び語りだす。
「友だちは多いほどええ!他のクラスといれば、魔法の勉強にもなるしな!」
「せやな!みんなも脂も乗ってきたしな!」
「はいライン超え」
「えっ?」
そんなやり取りを見て、クレアは口に手を携えて笑った。
「活動に拍車がかかるってことですよ!」
「は…はくしゃ…?」
10組全体の楽しい雰囲気は、簡単にクレアを惹き込んだらしい。
クレアも笑って、10組全体も一気に笑った。
ヒロトの心配は、嬉しいことに必要なかったようだ。
「「「あはははは!!」」」
※…一方、かの少女には、笑顔などなかった。
「はぁ…」
人などいないであろうジムに居座りながら、ラビットはため息をついていた。
いつかの夢を見てからかスランプに陥った彼女は、ここ最近は生徒会のもとで修業に精を出すつもりだったのだが…。
「…」
身体面でも精神面でも、彼女から活力が抜き取られたかのようだ。
「──ラビットさん、ちょっといい?」
声がしてから、ラビットが前を向くと、そこには落ち着いた風貌の女がいた。ラビットよりも一周年上というところか。
後ろにも彼女の仲間らしい人間はいるらしく、こちらに注目してくる。
「「「…」」」
「ラビットさん?」
「…なんでしょう…カリンさん」
ラビットがカリンと呼ぶ女を見る。
こちらを心配そうに伺う様子だ。