第03話『ヒロトの急成長』
ヒロトとクレアは、10組から別のクラスへの移動となり、一緒に廊下を並んで歩く。
「すまねぇ…俺の実力が乏しいばかりに迷惑かけちまって」
「そんなことはありませんよ。テンカさんからヒロト君の現状について聞いて、どうにか力になりたいと、今日のこれに進んで参加したんですよ」
「えっ…そうだったのか!──いや、どっちにしろホントにありがとう!」
彼女がこれから授業をしてくれるというが、ヒロトにとっての尼野の実力は未知数だ。
解き放った魔力で手に入れた2組クラスの実力──ラビットの1組クラスの実力は見てきたが、純日本人の引き出された実力というのが判断を悩ませる点だ。
「尼野は、オーラの使えねえ今の俺より、強いのかねェ」
「えっ、私がヒロトくんより…ですか?」
「その可能性もあるのかなってな…喧嘩したらどっちが勝つんだろ」
「…考えたくもないんですけど、多分私には、戦う力は備わっていませんよ」
「え?それって…どういうこと?」
「私にできるのは、人を癒やす能力ですので。傷を直したりだとか、毒とかの作用の除去だとか…お医者さんみたいなものですね」
「何だか、お前らしいな」
ヒロトからのその言葉は、特に考えなしに出ていた。
「その夢も、私がやりたいと熱望していることなんです…ですが当然、生徒会レベルの繊細な魔法を使えなくてはなし得ない夢です」
「取り敢えず、目標は高く持つもんだな」
「ですよね!」
ヒロトは彼女の話を聞いて、逆に燃えてきた。
「負けてらんねえな…」
「え?」
「…フッ」
「…?」
釈然としなかったが、クレアはヒロトの心情の変化を感じ取っていた。
※修業を受け始め、30分が経ち…
「なっ…──何だこれ」
「えっ、まさか…もう掴めました!?」
ヒロトの魔力に変化が訪れはじめる。
「蟠りが解かれたみてえに、体中を力がスイスイ泳いでやがる…」
「…!やっぱり、ヒロトくんはすごいですね」
テンカや生徒会の修業は素晴らしかったが、今回のクレアの授業は、それを踏まえた上での埋め合わせとも言える。
重要なピースの抜けた今の実力に、クレアの授業がピッタリとハマったのだ。
今やヒロトの魔力操作は、現在のコウたちとも引けをとらぬだろう。
「──基礎は完璧ですね、では早速、一気に魔法を使いましょう!まずは簡単な魔法から踏んでいきましょう」
「基礎的な魔法…?魔法ってどう使うのよ──俺ちょっと不安なんだけど」
「ふふふ──大丈夫ですよ。魔力さえ流れれば、あとはそれに合わせ、“イメージ”すればいいんです」
「イメージ…」
「まあ、習って慣れましょう!きっとすぐにわかりますから」
「ホントかねぇ…──まあいっちょやってみるか」