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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第1章『全てはここから始まった! 最強の日本人ヤンキー 異世界の魔法学園に転移!』
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第73話『ラビットの変化』

「で、今日はどういった御用なんですか?」

「…いやぁ…実は魔力コントロールがなかなかうまくいかなくてな…──決して2人のシャワーの会話を盗み聞きしようとしたわけじゃなくてな…」

「ウフフ…」

 カリンは、すっかりしおらしくなったヒロトを笑ってから、タネ明かしへと入る。

「遠隔視覚の魔法を使って、ヒロトくんの様子を見てました。単純な男の子の反応が見れて面白かったですよ」

「クッソ…」

 まさかここまでコケにされるとは…悔しくてたまらなかった。

 だが、ヒロトは最後まで抵抗する。

「まあ、俺は女の胸部の駄肉に興奮するコタぁねェけどなぁ…」

「でも私、あなたのズボンの膨らみまではっきり見えてましてね」

「すみませんでした」


「──まあ、今日は生徒会はお休みなのですが、私はヒロトくんのために、特別にトレーニングを行いますね」

「他のはいねぇのか…いや、なおさらよかったか」

「んー?」

「いやっ、何でもない」

 カリンの聞こえていないような言動とは裏腹に、彼女の表情は先程と変わらなかった。

 間違いなく聞こえているだろう。

「いや、本当に助かる」

「ヒロトくんには、今までのパワーを取り戻すにも、魔法を完璧にマスターして貰わないとですからね」

「ああ、魔法でラビットの度肝を抜くくらいにはなってやりてえ」

「その息ですね。あと、鬼神のオーラと魔力は似ているところがあるから、感覚的には持ち前のでいいと思います」

「なるほどな」


「…こうしてヒロトくんの修行を持つというのは、意外にも初めてですね」

「…確かにそうだな」

「オーラの修行はメイプルの方が適役だったけど、魔法だと私の方が上かもですね」

「期待していいんだな…」

「もちろんですとも」



 ラビットは、足早に廊下を歩いていた。

 そこにいるのは自分1人だけ、いつもと違う道なので電気はあまり通っていないのか、どこかほの暗く感じられ不気味であった。

「なぜ…わたくしはヒロトさんをあそこまで退けるんでしょう…」

 その疑問は、ラビットにも疑問だったらしい。

「いつものような恋情なんかじゃない…無意識に出ている敵意に近い…」

 だが、どのように考えても謎は深まるばかりであった。

「昨晩の夢を見てからだ…わたくしはあのときから、ヒロトさんのことを考えるだけで、なぜだかイライラする…」

 そのイライラとは、ヒロトへの恋情を自己否定するものでも、ライバル関係内での心地良いものでもなかった。

 確実で完全な敵意だったのである。


 なぜかは知らない。

 だが、あくまで1つの憶測を上げるのなら…──

「あの悪夢の謎の人物…そして、背後から現れた巨大なモノ…」

 まさか、そんなはずはない。

「わたくしの両親を殺したのがヒロトさんだなんて…そんなこと、あり得ません…」

 ラビットは何度もかぶりを振るのだった。

 ヒロトはおよそ一ヶ月前に、別世界からやって来た人間である──そんなことはとっくに知っている。

 だからこそ、背後に現れた巨大なモノが、鬼神のオーラであるとは思わない。

「はぁ…そんなこと、あり得ないのに…」

 ラビットは、失笑するようだった。


 ──そうしてしばらく考えてから、ラビットは再び歩き出す。

「…」

 …閑静な廊下に、靴底のコツコツ音が響く。

 コツン…コツン…

 その音は、ペースも何も一切変わらないで続いている…その筈だった。

 コツン…コツン…──カタン…

「…?」

 ラビットは、音の違和感に気づくと、振り返った。

「…?」

 気づくと、電気が点滅し始める。

「生徒…?」

 生徒の制服をきた同い年ほどの少女が、そこに静止して立っていた。

「…」

 ラビットがそこを見つめていると、彼女はこちらに振り返った。

 そこにいたのは…まるで、自分自身のようだった。

 髪型も身長も、ラビットそのもの。だが、その顔はまるで…──

「…ひっ!?」

 その人形細工のようなくしゃくしゃの顔は、ただ虚ろな笑みを浮かべていた。


「…ッ!?」

 全身の毛穴が、恐怖で閉ざされる。

 未だかつてないただならぬ戦慄を受け、ラビットは本能で走り出した。

「うぐっ…!うわァあアーッ!!」

 走る最中、後ろは振り返らなかった。

 ただただ無我夢中で走りながら、後ろからたびたび近づいてくる足音から逃げるのみであった。

「(もし捕まったらわたくしは…どうなってしまうの!?)」

 後ろを振り返ると、ソイツは猟奇的な爆速でこちらに迫ってきていた。

「くゥっ…!」

 ラビットはそこから何とか切り離し、角を曲がった。

 そして、そこにあった教室に、静かに身を隠すのだった。

「暗い教室…──でも、すぐにヤツが来てしまう…!」

 そこでラビットは、すぐそこにあった教壇の裏へ隠れる。

「っ…!」

 息を殺し、何とか自分を落ち着かせる。

「…」

 その何かは廊下を通り過ぎたらしい。

「(もう…いいの?)」

 ラビットはそれでも、そこから出なかった。

 だが、どうやらそれは賢明だったらしい。

 ──ギィ…

「(嘘っ…!?入ってきた!)」

 それだけでなく、足音はどんどんラビットに近づいてくるのだった。

 声も出せずそこにうずくまり、時だけが過ぎていく…。


 ──…そして、時間はいくらか経過した。

 時の経過によって、少し冷静になったラビットは、教壇から顔を出して、恐る恐る教室全体を覗き見渡す。

「…」

 ただただ、静かで暗い教室。

 他の角度からも見直しても、何も動くものはない。

「…ゴクリ」

 静かに教壇を出て明瞭な視界で見るも、やはり何もいないらしい。

「よかった…何だったんでしょうか…あれは──」

 ラビットは不審に思いつつ、ほっと一息ついて立ち上がると、出口のドアにあるき出した。

 そのところ…──

 ペタ…

「…ッ」

 肩に乗る…──手。

 言葉も出ず、全身に寒気が吹き抜けた。

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