表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第1章『全てはここから始まった! 最強の日本人ヤンキー 異世界の魔法学園に転移!』
74/96

第72話『成績不調のヒロト』

 ヒロトは、いつも通りに地下ジムへと向かっていた。

 その姿はどこか、不機嫌そうにも見える。

「(このままだと、ラビットに負けられないだの言ってられねぇな…)」

 彼の言うことは、至極全うであった。

 魔力コントロールもろくにできないこの現状では、ヒロトとラビットは同じ天秤の上には乗れそうにない。

 今の10組全体の実力は、どうやら下の上らしい。

「このままじゃあ下下下の下じゃねえかよ…」

 なぜ人は、自嘲のときに限ってギャグセンスが上がるのだろうか。

 座布団などいらないからハンカチがほしいなぁなどと思いながら、ヒロトはついに地下ジムのドア前に到着し、そのドアを開けるのだった。

「このギャグでラビットも風邪引いて打倒できるか…──んぁ?」

 ヒロトがドアを開けると、いつもは出迎えてくれる生徒会が来なかった。

 そして、中はすっかり閑静としていた。

「すげえな…俺のギャグは生徒会にも通用するのか…」

 ヒロトはとりあえず、中に入って生徒会を待つことにした。

 いつもは放課後にはしっかり待ち合わせてくれるが、きっとまあ予定も食い違うことはあるだろうと思ったのだが…──


「大丈夫だった?ラビットさん」

「ええ…昨晩はいろいろありましたが…」

 どこからか聞こえる2人の声。

 ラビットとカリンである。

「なんだいるじゃねえか」

 会いに行こうと、ヒロトは声のする方へと向かう。

 だが、ドアを開けると、そこは更衣室。

 2人が脱いだと思われる制服は、そこに整頓されて置かれていた。

「──とはいえラビットちゃん、相当打ちのめされてる風じゃないですか…背中は私が洗いますからね」

「──あ…ありがとうございます…」

 どうやら2人は一緒にシャワーを浴びているらしい。

 ここにいるとまたラビットに難癖をつけられそうだ。

 さらに、彼女の声にはあまり活力がない。彼女を不機嫌にさせるわけにはいかない。

 ヒロトは更衣室を出ようとした、その時である。

「──えいっ!」

「──ひゃあっ!」

 カリンの声に続いて、ラビットの高い声が響いた。

 ヒロトは驚いて立ち止まる。

「──ちょっ!どこ触ってるんですか!」

「──ラビットさん、前より大きくなったかもね」

「──ホッ…ホントですか!──…っていや、そんなことよりやめてくださいっ!」


「ッ!?」

 ヒロトの脳内に、妄想が鮮明に現れ始める。

 健全というよりかは少し変態寄りの思考回路の彼は、この奥での2人を勝手に想像できてしまったのだ。

「(大きくなったって…いや…あのペッタン子もトレーニングで成長するものなのか…)」

 カリンの発言に何やら妄想が捗ってしまう。

 彼女が手を止めたのか、ラビットは落ち着く。

 そして、カリンは語り始める。

「──かと言って、大きすぎるのも困りものなのよね…」

「──え?」

「──実は私、I以上はあるの」

「「──!?」」

 一斉に驚くヒロトとラビット。

 ヒロトは衝撃の事実に声が出そうになるのを押し殺していた。

「(あ…Iカップだと!?想像もつかねぇ!)」

 ヒロトは巨乳に目がない男であった。

 この世に存在しないものと思っていたが、こんな近くに楽園があったとは…。

「──ここまで来ると、これをどうにか制服に収めないといけないんだけど、これがまたすごい弾力で、どんなブラもすーぐ外れるの。ほら触ってみて」

「──…確かに、すっ…凄い弾力!」

 ここまでやられると、もはやヒロトのヒロトも現気になってしまう。

「(ヤベッ!鎮まれムスコ!)」

「──わ…わたくしそろそろあがりますからっ!」

「(なにっ!ソイツはヤベえ)」

 ヒロトは急いで更衣室を出て、最悪の事態を免れたのであった。



「…あら?」

「…!ヒロトさん…」

「よ…よう2人とも。今来たとこだよ」

 ヒロトは笑みを引きつらせて、ラビットに手を振る。

「…」

 だが、ラビットはヒロトから顔を逸らしてしまった。

 表情は、怒っているでも恥ずかしがっているでもない。どこか物憂げであり、彼女にはある変化も見受けられた。

「…?ラビット、そのクマは…──」

「…!」

 ヒロトが言うとおり、彼女の目の下には、深く刻まれたクマがあった。

 彼がそう言うと、ラビットはなぜかさらに目を隠した。

「な…何なんだよいったい…」

「何でも…ありませんから…」

「?」

 いつもなら、今日の彼女のようではないのだが。

 彼女はどこか呼吸が安定せず、足早に出口へと向かっていくのだった。

「今日は、わたくしもう帰りますっ!」

「…気をつけてね」

 カリンは一言を伝えてから、彼女をその場から見送るのだった。


「──…なんだか心配だな」

「ええ、朝からずっとあの調子でね…授業も早めに抜けちゃって、ここに来て修行をしたいって言ってたけど、流石にあの様子じゃ無理なので、ちょうどさっきシャワーを浴びさせてたの」

「…」

 何の予兆もなく訪れたラビットの変化が、ヒロトは気になって仕方がなかった。

 だが、カリンは大凡は知っているらしい。

「あの夜のことが、夢に出てきたらしいわ」

「“あの夜”…──ムーン家のあの事件か…」

 パッと頭に浮かんできた。

「でも、この学園に来てラビットと出会ってから、こんなことは初めてだぜ?」

「ええ…私も心配でならないわ」

 嘆息を漏らすヒロト。

 ラビットはライバルである。彼女がどうにかしてしまうのは嫌でしかたがない。


「ところでだけど、ヒロトくん」

「…え?」

 カリンにそう呼ばれ、ヒロトは彼女を見る。

 表情はどこか、からかうような笑みを見せていた。

「実はね私の胸、別にIもないのよねぇ」

「ッ!?」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ