第71話『10組の成長』
「よし、どうだお前ら」
「「「はい、順調です!」」」
授業を始めてから、まさに2時間というところだろう。
10組が一斉に答えるように、全員の実力は、この短時間で驚きの進歩を遂げたのだった。
「すげぇ…魔力がスイスイ体を巡ってる!」
「ウチも、こんな感覚初めてや…!」
テンカの指導に従うだけで、異様なまでにうまく成長できていた。
なぜ、ここまでにもうまく行くのか。
「お前らの今の実力は、ほんの平凡な魔法使いぽっちだが、今までよりも格段に実力が上がった…──だが俺はただ、それを引き出しただけに過ぎん」
「…」
そこで、グンメティの言葉を思い出す。
テンカの修行は、1を2にするものというよりかは、0を1にする方に特化しているというほうが適当である。
0とは平たく言うなら、何の成果もあげられない人間の素質だ。もちろん10組も例外ではなかった。
今までいかなる努力をしても頭打ちだったその0は、テンカの修行で初めて1となったのだ。
「とはいえ、魔法の実力はまだまだ下の上ってとこだ。お前らには、今よりもさらに高い次元に行ってもらうぞ」
その言葉に、一同はまさしく生唾を飲んだ。
自分の実力の上昇に浮かれる暇もなく、さらに次のステージが待っているのだ。
「お前らは、ここで満足できるようなちゃっちい人間じゃねェだろう」
「「「!」」」
10組は、そこで現実に戻ってきた。
この学園にやってきた理由は、魔法を極めることではない。
魔法を極めたその先において、夢を叶えることだ。
「…とはいえ、今日はちょっと時間が押しているらしいな」
テンカがそういうタイミングピッタリで、チャイムが鳴る。
「「「あっ…」」」
その音に現実に引き戻された一同は、一気に体から熱が冷めるのを感じた。
「今日はここまでだ」
「えっ、俺らはまだ…」
「安心しろ、今回の授業でお前らの基礎は全て固まった。明日は一気に発展させたカリキュラムを実践するからな」
「発展…!」
一同は、自分たちの可能性に思わずワクワクが止まらなかった。
「あと…そんでヒロトだが…」
「いやっ…ちょっと今集中してるんだわ」
ヒロトは、なかなかに手こずっているらしい。
「お前は魔力を使うのにも日が浅いからな…」
「おぉ…もうちょっとでイケる!いやダメか──…あら?」
その一連の流れを見て、テンカは分析する。
「今日、教師は全員会議がある…放課後はお前らを見ることはできない」
「マジか…なら仕方ねェな」
「まあ、いつもの所に行くんだな」
「ああ…そうさせてもらうか──バーギラ、コウたちと一緒に部屋に戻って…──えっ!?」
ヒロトはそこを見て驚く。
彼女はなんと、ヒロト以上に魔法を使いこなしていたのだ。
「わかった…」
バーギラは、手に光を灯しつつ返事をした。
「俺も頑張らねぇとな…」