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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第1章『全てはここから始まった! 最強の日本人ヤンキー 異世界の魔法学園に転移!』
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第68話『キサクの語る過去』

 昼休みも大体終盤に差し掛かる。

 ヒロトとクレアは教室へ戻ろうと、階段を下りていた。

「ありがとよ、モチベ上がったわ」

「よかったです。また困ったら、いつでも相談に乗りますよ」

「助かるなぁ」

 優しい笑みのクレアに、ヒロトは心の底からそう言った。

 彼女はヒロトと話しながら、笑顔を絶やさなかった。

 空白の8年間、彼女がヒロトを忘れたことはなかったからだ。

 この二人の再会は、運命を越えたようなものだったのだろう。


「──…ん?」

 ヒロトは道中、何かを見つける。

「おい尼野、あれ…」

「…?」

 クレアもそこを見る。

 2人が見ているそこでは、元気のない一人の少女がふらふらと足取り悪く歩いていた。

 その足取りの悪い少女を支えるように並行するのが、カリンだった。

「アイツ…ラビットか…?」

 カリンに隠れてうまく見えなかったが、それは間違いなくラビットだった。

「大丈夫か…アイツ」

「何かあったんでしょうか」



「残るは、2人だね…」

「「…」」

 改めて残ってみると、恥ずかしい気持ちがするものだ。

 コウとキサクは、お互い赤らんだ顔を見合わせた。

「じゃあ、ウチから言うかな…」

「え?どうぞ」

「ええんか?コウ、ウチの後はラストスピーチやで」

「あっ…!」

「まぁゆずらんがなぁー」

「くっそぉっ」

 だが、コウは彼女の表情の変化に気づいていた。

 キサクはそう笑いながらいうが、その表情にほんの少しの陰りがあったのだった。


「──…ウチには、仲の良かった友達がおったんや…」

「えっ!」

 サルマが驚く。

「えって何やサルマぁ!」

「いやっ、俺のとどこか似てるなぁって思ったんだもん!」

「…まあ…確かにその友達との距離が空いたってのは、もちろん変わらへんのやけど…」

「「「…けど…?」」」

 その後、キサクは発言を渋るようだった。

 だが、彼女は勇気を振り絞って言う。

「…その友達は、急に消息を絶ったんや」

「「「えっ!?」」」


 予想外の話の展開に、一同は声をあげて驚く。

「本当に…?」

「マジや…急に姿を消しよった」

「その後については、誰も知らへんの?」

「せや…身の周りのみんな、口を揃えて知らんと言うんや」

 サルマとマーニの質問にも、キサクは淡々と返していく。

「闇が深そうな事案だな…」

 アシュすらも、この事件の不詳さには、持ち前の推理力もどうなるだろうか。


「ウチには予感があるんや…」

「「「予感…?」」」

 キサクはどこか、焦燥する様子で続ける。

「その友達は、他に3人の友達と1人の妹がいて、ある寮に5人全員入っとったんやけど…──」

「「「…」」」

 一同は全員それに聞き入っていると、キサクは衝撃の発言をする。

「5人全員、その寮から失踪したんや…」

「「「ッ!?」」」

 一同はあまりの衝撃さに、まるで声も出なくなってしまうのだった。

「何の前触れもなく、5人は寮から消えてしもうた…でも、ウチにある予感ってのは…──」

 全員が息を呑む。

「ウチらを残して消えたその5人が、どこかでふらふらと生きているのかもしれへんのや…」

「何か確証があるン?」

「…ない…ただ、ウチにはその予感が、頭に強く張り付いとるんや」

 マーニにいざ質問されると少し揺らぐかと思いきや、彼女はどこか迷うところは見せつつも、はっきりと伝えてみせる。


「アイツらがウチに残したものはないが、アイツらと仲良く暮らした日々の思い出は、ウチの中で消えることはないんや…」

 その少しはにかむように笑いながら、一同を見渡した。

「でもウチは、魔法を極めることで、その5人の行方をどうにか追えると信じとんねや…でも──」

 キサクの声が震えはじめるが、彼女は目から溢れる涙を拭いながら、笑みを絶やさずに続ける。

「ウチもアシュとサルマみたく、この10組での学園生活が最高やったんやなって…」

「「「…」」」


 だが、キサクは今になって照れ隠しをする。

「…ああもう、やめややめっ、恥ずかしくてやってられへん」

「…へへっ」

「んんー!?何笑いよるんやコウ?」

 その意見に、笑い声が帰ってくる。

「えっ、いやいやっ…」

 思わず笑いをこぼしたのは、コウだった。

 だが、彼には当然キサクの言葉を笑うつもりはなかったが、彼には実は、シンパシーがあったのだった。

「お前も、俺と似た部分があったんだなって…」

「えっ!それって…どういうこと」

「いや…俺も驚いたんだ」


 ──コウは真剣そうに、真実を語るように話す。

「俺の友達にも、失踪したやつがいた…」

 キサクも他も、信じられないという様子だ。

「冗談じゃないんやな…?」

「ああ…だけど、どこか記憶の曖昧なところがある」

「えっ…?何それ」

 何かおかしな言い回しだ。

「これは、ちょっと信じられないものかもな…」

「信じるもなにもないで…」「コウの記憶が曖昧じゃあなぁ…」

 キサクとアシュが、コウを見つめる。

 他もポカンとしていた。

「でも、話す前に断っておきたい──この話は、どこかメルヒェンちっくで現実味にかけてるかもしれないけど、全て俺の身に起きていたことだ」

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