表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第1章『全てはここから始まった! 最強の日本人ヤンキー 異世界の魔法学園に転移!』
68/96

第67話『10組の語る意志 その1』

※食堂…


「──…みんな、夢があるんやな…」

 一同の中で初めて語るのは、マーニだ。

 それに、みんなも彼女を見る。

「私は、家族に認められたいんや!」

「家族…──シキヤズ先生みたいな?」

「そうなの、家族はね、私とママとパパと、弟が1人おるんよ…でも…──」

 マーニの顔は少し落ち込んだようになった。

「実力がなくて、認めてもらえない…とか」

 キサクが聞く。

「そうなの!でもね!」

 だが、マーニは一同の誤解を解くように続ける。

「認めてもらえないっていっても、見放されてるわけやないで!」

「ああよかった!」

 一同は皆胸を撫で下ろす。


「期待に応えたいってこと…?」

「そう!そうなんよ!」

 アシュの訂正に指をさして、マーニは頷く。

「弟は魔法をうまくできるんやけど、私は全然ダメで…でも、パパとママは私に期待しとるねん…」

 だが、他のみんなは優しく声をかけてくれる。

「…大丈夫だよ!シキヤズ先生が期待してるんだし」「きっと才能があるはず!」

「みんな…ありがと…」

 涙を拭って、マーニはみんなに向き直った。


「──俺にもさ、夢があるんだ…」

「「アシュ…」」

 意外にもアシュが手を挙げて、夢を語る。

 いつも内気な彼が声をあげるとは、彼の本腰の入った覚悟が否応なく感じ取れた。

「俺は、魔物によって流行した新興病を治すために、医療魔法をマスターしたいんだ」

「新興病…?」

 この世界の魔物の侵攻で、人類が受けてきた被害は、何も全てが被食というわけではなかった。

 魔力をもった生物で厄介なのは、DNA組織が魔力と連結してしまうことで、体に異常が発し、ヒトには想像もできない有害ウイルスが発生てしまうことだ。

 魔物による生態系の破壊には、これが強く起因していると言っていい。


「魔物には、独自のウイルスを持つやつがいて、そいつに噛まれたりすると、人間動物関係なく感染するんだ…」

「じゃあ、ゾンビ映画みたいになったりするんやろか…」

 マーニが恐れるように挙手して質問する。

「今のところ、そういうのはないかな…?」

「はぁーっ、よかった」

 一同そのやり取りに笑みがこぼれる。

 だが、アシュはそこで表情を変える。

「でも、まだ発見されていないだけで、これから生まれる可能性もあるんだ…実際に、多くて1ヶ月に1つ2つのペースで、新しいウイルスが生まれてるんだ…」

「…それを、変えたいってことか…」

 アシュは頷く。


「俺はその夢を、生まれて来て6年も願ってきた…」

「じゃあ、10歳のときから…」

「俺はその時から、魔物のデータやウイルスの科学までを網羅してきた…」

「「「すげえ…」」」

 もはや一同が馬鹿と思えるほどに、アシュはなかなかの努力家であったことに、一同は驚嘆する。

 だが、アシュはその反応を振り切って言う。

「しかし…俺には魔法の才能がない…でも努力はしてきた──俺が魔法のテキストを引いてたの見たろ」

 初めて出会ったときのことだ。

 あのときは、この10組によくガリ勉がいられたものだと思ったが、こうして話を交わしてみると、彼の葛藤がたびたびわかってきた。

「魔法の才能がないと、医療でもダメなんだ…だからこそ、この学園に入学したチャンスを、無駄にできない…」


「…」

 だが、彼は俯いて、声を震わせて続ける。

「でも、ここにいるみんなを見てたら…そんな気もなぜか薄れてきたんだよ…」

「えっ…どうして」

 突然の話の機転に驚く一同に、アシュは顔を上げて言う。

「だって、しょうがないだろ!」

「「「!?」」」

 ずっと声の小さかった彼が、そうやってドスを効かせた大声をあげるのを、誰が想像できただろうか。

「こんな平和な空間…いるだけで気持ちが緩やかになってよ…学問も魔法もできたもんじゃないっ!」

「ちょっ…落ち着いてやよ」

 キサクが優しい手で抑えようとするが、彼は意地でも続ける。

 震えた声で、一歩間違えれば泣きじゃくりそうな調子で…。


「子供の頃からガリ勉だった俺に、友達がいたと思うか!こんな空間が欲しかったんだよ俺はよォ!」

「マジ抑えろや!」

 ブレーキが効かなくなった滑走車のようなアシュに、キサクは止めに入ってみようとする。

 だが、それを止めたのは、別の生徒の魂の叫びであった。

「──俺だってそうだよ!」

 横を見ると、サルマが叫んでいた。

「俺にだって、子供のときからの夢があるんだよ!でもこのクラスに来て、どうでもよくなったんだよ!」

 重要な志を語る3人目だ。

「俺にだって…変えられない意志があるんだ…──負けられないヤツがいるんだよ!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ