第66話『ヒロトとクレアの会話』
「てなことがあってな…」
「その新担任の人、結構怖いんですね…」
ヒロトは、クレアと一緒に屋上で話し合っていた。
「俺はあいつにバチボコにやられたけどな…」
「お気の毒に…」
だが、ヒロトは彼にも認めているところがあった。
「あと、あいつは俺たちの知らないところまで、俺たちを理解していた…──10組のみんなは、あいつの言葉一つ一つに図星をつかれてた」
「…例えば、どんなことを?」
「…10組のお前らは、志の達成に向けた努力がない…──だとさ…みんなも叶えたい夢があって、それも平和な学園生活で風化しちまったのかもな…」
クレアはそこで、ヒロトに聞く。
「ヒロトくんも、頑張ってきたんでしょう?」
「…え?ああ…どうなんだろうなぁ」
「あっ、ごめんなさいっ…ヘンな質問でしたよね…」
クレアは焦ったように言いよどむ。
だが、ヒロトはそれに大笑いする。
「ハッハッハ!」
「ぇえ?」
「努力なぁ…ンなもん散々して来たが、今はもう全部水の泡なんだよなぁ」
「ああっ…本当にひどいこと言っちゃいました…!?」
「フッ…いいや?」
呆気にとられるクレアに、ヒロトは口角をあげて振り返る。
「もう一度ゼロからのスタートだ…鬼神のオーラもきっと元に戻る」
「えっ!ビジョンがあるんですか」
そして、ヒロトは満面の笑みになって、ハッキリと言う。
「実はねェんだよなぁ」
「あらら…」
「──で、その先生の名前って?」
「名前?確かテンカって言ってたけど…」
「えっ!?」
クレアは声をあげて驚く。
訳がわからなかった。
「実はその人、私を引き取ってくれた人なんです」
「なに!本当か」