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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第1章『全てはここから始まった! 最強の日本人ヤンキー 異世界の魔法学園に転移!』
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第65話『クズどもの意志』

「ぐおぁッ?!」

 …結局、ヒロトは一同の期待を背負いつつも、即刻床に倒れた。

 汗だらけの体を情けなく大の字に倒し、そこで精一杯の呼吸を行うのであった。

「…ぐっ!はぁっ…」

 ヒロトは、目の前のテンカにコテンパンにやられた。

「ヒロト!」「大丈夫!?」

 仲間たちが駆け寄って、人数がかりでヒロトを癒やす。

 だが、やはりラビットとは違い、回復が遅すぎる。

 魔法の実力だけで、こうも違うものなのか。


「偉そうな口叩く割に全くダメだな…」

「クソッ…どっちが偉そうだ!」

 ヒロトに忠誠を誓うバーギラでさえ、テンカから感じる威圧感で、足が前に出なかった。

「鬼神のオーラに頼ってばかりだったお前は、こういうときに一気に弱体化する…お前のライバルとも差が開く一方だな」

「なっ…!」

「ふっ…図星か」

 やはり、こいつにはリズレからも色々な告げ口が吹き込まれていたのだろう。

 だがここまで偉そうにされると、さすがに気分が悪い。

「そこのテメェらも、そんな魔法では何も癒せねぇな…」

「「「!?」」」

 先程といい同じく、テンカは厳しく現実を突きつけてきた。

 そしてテンカはため息をついて、ヒロトに回復魔法をかけた。

 自分たちのスピードでは測れない速さで傷が治ったことに、10組は目をそらしたくなった。


「これが、1ヶ月間怠惰に学園生活を送ってきたテメェらの成果だ…」

「「「…」」」

 一同は、より表情を暗くした。

 サルマとマーニ、キサクにいたっては、涙を堪えてさえいた。

「お前たちには、ここに入学するにあたり、重要な志を持っていたはずだが…?」

 そのテンカの一言が、一同の態度を急変させる。

 俯いていた一同は、一気に焦燥を顕にし、テンカを見た。

 そして、それはバーギラも同じだった。

「ど…どうしたんだ、みんな」

 ヒロトは驚いた様子で立ち上がって、一同を見た。

「「「…」」」

 だが、一同は答えられないと、口をつぐんでいた。


 その代わり、たった1人の口から、驚きの一言が出てきた。

「そんなこと、わかっとるねんボケェッ!!」

 教室に響きわたる甲高い声。

 耐えかねた立ち上がったマーニが、テンカに声を上げたのである。

「「「!?」」」

 マーニが声をあげるのに、一同は驚きが隠せなかった。

「そんなもん私やって、この学園に来る前も散々努力してきたんや!それでも全部無駄やったんに、どないすりゃあええねんッ!!」

 一同は唖然としてそこに静止する。

 そしてマーニはふと我に還り、顔を青ざめさせた。

「あ…私…何を言うたん…」

 震える足に、彼女はくずおれた。

 加えて、こんなことを言ったら、テンカにどんな目に合わせられるのか、想像してしまうだけで震えが止まらなかった。


「…」

 テンカは、マーニの方へと闊歩する。

「ちょっ…!」

 マーニを守るように、10組は彼女を抱きしめる。

 ヒロトとバーギラは、その一同の前に立ち、テンカとの臨戦に備える。

「…っ」

 バーギラも、テンカの威圧感を直に受け、声も出ずに、思わず足が震える。

 そして、目の前にやって来たテンカ。

「…」

 彼は無言であった…──だがなぜだろう、その表情は、睨んでいる様子はなかった。


 ──ゴーン…

 正午を伝える鐘の音がなる。

「ちょうど今から昼休みだ…午後からの授業に備えて、1時間20分無駄にすんなよ?」

 テンカはそう言って教室を出ていき、一同は心そこにあらずといった様子であった。



「くっそっ!何だよあの野郎は…」

 ヒロトは食堂で10組の者たちと一緒に、不機嫌そうに腹を立てながら、大量のご飯を頬張っていた。

 バーギラは思ったより少食のようだが、他のみんなもそれは同じであった。

「…俺たち…本当にこれでいいのか…?」

「…?」

 コウは、ため息混じりに言う。

 ヒロトは、他の皆もため息をついていることに気づいた。


「ああ…アンタらには、ここにやって来た志ってのがあるんだな?」

「…?ああ」

 10組のみんなも、ヒロトに目をやる。

 そして、ヒロトは自分の過去を思い出す。

 鬼神のオーラを見に宿した彼が何よりも渇望したのは、普通の人として世界に溶け込むことであった。

 ただひたすらに、一人でオーラのコントロールの訓練に明け暮れた日々…──それこそが、ヒロトによる、志に向けた努力であった。


「志があるなら、やっぱり努力が必要なんだ…志に届くまで手を伸ばし、逃すまいと必死に掴み通すのが大事なんだ…」

「ヒロト…」

「まあ、力を失った俺が言えた義理じゃないかもな…」

 ヒロトはそこで、少し自嘲気味になる。

 すると、そこでマーニが再び声を出す。

「んなことないわっ!」

「!?」

 食堂に声が甲高く響く。

 マーニは机を立って、ヒロトに指をさして叫んだ。

「忘れてへんぞ!10組の自己紹介で、お前が言うたこと!」

「えっ…」

 10組のみんなも、それを覚えていたことに驚く。

「現実みろやと!?もうそんなのうんざりするほど見とるんや!いくらやっても結果は同じやった!そんな大口叩けんなら弱音吐くなや!ボケ!」

「…っ」

 ヒロトはマーニのその言葉に衝撃を受けつつ、鼻息を荒くした彼女を見て、口角をあげて微笑んだ。


「ふっ…そうだな」

「え?ちょっ…なにわろてん…」

「お前がそんなに言葉を荒げるほどに、お前は重大な志を持ってるんだな?」

 ヒロトは立ち上がって、食堂を出る。

「どこ行くん?」

「会いたいやつがいる…お前らは自由に、お互い目標をハッキリさせときな」

「目標…」

「努力には、目標が絶対に不可欠だからな」

 バーギラもヒロトと一緒に食堂から出る。


 そして、食堂に残るみんなは、そこでハッとしたように話し合った。

「もう迷ってられへんやよ…」

「ああ、俺たちはみんな…夢を掴むために努力をしないとな…」

 キサクとコウがそう言うと、みんなは涙を堪えるようにしながら、それに頷くのだった。

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