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魔法学園と鬼氣使い(ヤンキー)  作者: みっしゅう
第1章『全てはここから始まった! 最強の日本人ヤンキー 異世界の魔法学園に転移!』
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第60話『ヒロトと魔法』

 放課後…──


 2組で机に座るクレアの目の前には、ヒロトが顔を近づけていた。

「その…いったいどういう状況なんですか?」

「いやぁ…尼野にちょっと聞きたいことがあってさ」

 2組の視線が全てそこに集中する。

 クレアは、教室の中でもかなりの美少女として注目が集まっていた。本人には自覚などなかったが。

「クレアちゃん…あの弥上ヒロトさんと付き合ってたんだ…」「彼氏とかいないと思ってた…ちょっと意外かも」

「俺、あんなヤツからクレアを取れる自信ねぇよ…」「あってもやめとけ…命が惜しいのならな…」

 そんな教室内のやりとりに耳を傾け、苦笑しながらクレアはヒロトを見た。


「ちょっとここじゃあ言えんことがある…二人っきりで屋上に行こう」

「えっ!」

 2組の雰囲気が騒然とした。

「嘘っ!まさかそこまで!」「屋上でとか、絶対ガチじゃないっ」

「うらやまじぃいっ!」「お、おい泣くな!ハンカチと一緒に歯が折れそうだ!」

 ヒロトの表情の真剣さが、一同の想像力をかき立てる。

 そして、それはクレアも例外ではない。


「ど…どうしたんです?」

 困惑するクレアに、ヒロトが手を握ってくる。

「!」

「なるべく早く聞きたい!来てくれ!」

「うわあ!意外に強引!」「でもアリ!」

 見送る2組のみんなの言葉も聞き入れず、ヒロトはクレアを連れて屋上へ走るのだった。



「どうしたんです?そんな剣幕で」

「…いや…実はさ」

 クレアは首を傾げ、ヒロトの質問を聞く。

「俺、実は魔法が使えないんだ」

「使えない?」

「…ああ。俺は、日本人だから魔法が使えないんだろうとタカをくくってたが、現に日本人のお前は、2組にはいってるだろ」

「…なるほど、そういうことですか」


 だが、クレアはそこから、間髪いれずにこう言う。

「私、この世界に来てすぐに魔法使えましたよ?」

「えっ!」

「というか…逆に使えないんですか?」

 クレアが指に謎の光を纏わせると、鳥が寄ってきた。

「ここに来た時点で、魔法が使えてた…」

「一応2ヶ月くらい修行があった上でですが、ヒロトくんはここに来て日も浅いし…」

「そうともいかないんだ…今の俺は、もうすでにオーラが使えない」

「え!ホントですか」

「…ああ。だからその分魔法が使えないとダメだ…もしかしたら、退学もあるかも。今日だけでも新担任のおかげで、10組で魔法の才能が乏しい奴は全員退学になった」

「…そう…なんだ」


 クレアは、少し返答に悩みつつ、だがしばしして笑顔でヒロトを見た。

「でも、大丈夫ですよ」

「お?そう言い切れる理由があんのか?」

 ヒロトが笑いながら聞くのに、クレアは自信満々に続ける。

「ヒロト君の実力が本当にないなら、今頃この学園にいないでしょう?」

「…確かに…」

「きっと、ヒロト君もできます!私みたいに、魔法が絶対使えますよ!」

 彼女のその目を見ると、なんだか出るはずだった弱音も全てが消え去った。

「ふっ…そうだな、ここで諦めんのも性に合わねぇ」

 二人は見つめあい、互いに微笑みあった。


「──そうだ、放課後はカリンさんに修行をつけてもらうんだった!」

 ヒロトが用事を思い出したタイミングで屋上のドアは開き、ラビットが出てきた。

「やっぱりここにいましたか」

「ワリぃ、ラビット!今ちょうど思い出したところだったんだ!」

「いえ、別にそれはいいのですが…」

 ラビットは、ヒロトの隣のクレアを見る。

「こんにちは!ラビットさん」

「ど…どうも──んー…」

 ラビットは、クレアを静かに見つめる。

「…?どうしました?」

「その…ヒロトさんとは仲がよろしいのですか?」

「え?ええ…まあ…」

「…」

 クレアはラビットの質問がわからなかったが、彼女より怪訝そうな表情をするのは、間違いなくヒロトなのであった。


「──じゃあな尼野。またいつか話そうぜ」

 ヒロトがラビットとともに、いつもの場所に向かうその途中。

「待ってください、ヒロト君」

「…ん?」

 クレアに呼び止められ、ヒロトは振り返る。

「私も付いていっていいですか?」

「んぇ?なんで」

 ヒロトは問い返してみる。

 すると、クレアはモジモジしてこう言う。

「ヒロト君の日課が…気になっちゃって…」

「別にいいけど…カリンさんは許してくれっかなぁ…」

 ヒロトは頭をかいてそう言う。

「ダメでs──」

「まあ来るだけ付いて来な」

「!?」

 ラビットの返答を遮って、ヒロトが言う。

「え?何かあんの?」

「い…いえ」

 まるで、目の前のこのクレアに負けてしまったような、そんな気持ちになるのだった。

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