第59話『円卓の職員会議』
※会議室
そこには、学園長リズレをはじめとした教員たちが、楕円型の大きな机を囲って会議をしていた。
6組担当シキヤズ、2組担当グンメティ、1組担当ガンダー、そして10組の新担任テンカ。
他にも何人か教員はいるらしいが、話がすぐに始まる。
「久し振りねぇ?テンカ」
「まあな…」
グンメティの言葉に、テンカは腕を組み、落ち着いて返す。
グンメティは声を出して笑う。
「まあいいよそんなこと、ボクも別のところから転勤して来た人間だし」
自分をボクと呼ぶ女性は、テンカにフォローを入れる。
5組担当、ワンターマ──一見明るそうな女性だが、アキニームと似て服が男だ。
「私もそうだしね、わからないことはいつでも…」
ワンターマに続いて親切そうに言う女性が、7組担当のバウンサー──黄金色の髪の少女の表情は、依然としてにこやかだ。
だが、テンカは「ああ…」と踵を返すだけしかしなかった。
「前はもうちょっと元気だったのに…」
「別にンなこたァねェよ」
4組担当のルキャミスの心配そうな表情にも、彼は笑みを見せなかった。
「──というより、今回の会議の要件って何です?」
その大きなバストが目を惹く、グラマラスな体躯でなおお淑やかな女性──3組担当ニュイェールは、リズレにそう問う。
そしてそれに頷くのは、華奢な体躯の絵に描いたようなイケメン──8組担当のミラード。
「最近いろんなこと多すぎですよ、おかしくないですか?私たち教員が、驚異から生徒を護らなければ」
教員たちは、皆大きな責任をもっているらしい。
「それじゃあ、そろそろ会議をはじめよう☆」
リズレは手を叩いてから笑顔でそう言って、教員たちの視線が彼に集まった。
「今回の議題は3つ…“10組の教育方針”、“弥上ヒロトくんの魔法の才能”…そしてあと1つは、…わかるね…?」
意味ありげな含みで言う彼に、教員たちは真剣にうなずいた。
「──さあ、まずはヒロト君の魔法の才能についてだけど…」
リズレがそう言うと、教員一同は皆無言になる。
「正直…絶望的というか無謀というか」
はっきりというニュイェール。
それに一同はうなずく。
「彼の唯一無二の武器である鬼神のオーラで、なんとかこの学園に繋ぎ止めてるけど…」
「それも無くなっちゃったしなぁ…」
バウンサーとワンターマもため息混じりに言う。
「…で、俺にはそんなヤツの教育をしろってのかよ?あ?」
テンカはため息とともに眉根をひそめ、リズレに言う。
「魔法が使えねぇってなら、こんな学校いさせる必要ないだろうが。魔法が使えねぇなら、実力も志も微塵もないアイツらみたいに、退学処分にしちまえばいい」
「…フフ」
リズレは口角を上げて笑う。
「何がオカシイんだ…?」
「いや…そういう君が、次にボクの言うことにどういった反応をしてくれるのか楽しみなんだ…」
「チッ…わかった、聞いてやるよ」
リズレはそれを聞いてから、テンカに顔を近づけ、笑みをたたえて言った。
「ヒロト君は、2組のクレア=S·マディア君と同じ出身なんだよ」
「…っ!何だと」
テンカはまるで、強い驚きを抑えきれない様子であった。
※
バーギラと仲の良くなった3人と、ヒロト、ラビットは話を弾ませていた。
「えっ!オーラが出なくなったんですか!?」
アンリーナが驚いて言う。
鬼神のオーラのイメージが相当強いヒロトからオーラが消えたということは、3人にかなりの驚きを与えたらしい。
「俺は一度死に、鬼神の力で復活を果たしたが、そんときにはもう鬼神のオーラは使えなくなっていた…」
「一度死んだ…?」「ゾンビか何かですか?」
「一応ホントだぜ?」
もはやヒロトにですら理解できない話である。
3人にとっては、もはやSFであった。
「まいったな…俺は魔法が使えねぇってのに」
ヒロトが頭を抑えて言う。
「使えないって、何して使えへんの?」
「俺、異世界人なんだわ」
トコヌイの質問に、ヒロトは笑って返す。
「ゾンビで異世界人…ファンタジーもここまで来るとギャグですね」
ラビットも笑っていう。
「ですが、一応は、ホントですよ」
「ラビットさんが冗談を言うなんて…」「まさか…ホントなんですか!?」
「…どうかなー?」
リゼレスタの質問に首を傾げるヒロトに、3人は苦笑するのであった。
「俺が元いた世界は、ここみたいに魔法がポンポン使えない世界だ」
「「「異世界人前提なんだ…」」」
「つうか…魔法のない世界で生まれ育った人間が、魔法なんて使えるわけがねぇしな。だろ?ラビット」
「ええ?」
「ええ?──って何だよ?」
ラビットは何やら、ヒロトの質問を受けて疑問を持ったらしい。
「日本で暮らしてて、この魔法学園にきて、魔法が使えるやつがいるなら連れて来いって感じで…」
ヒロトの口の動きが、そこで止まる。
そして、ラビットも感づいてから、ヒロトは口を再び開く。
「──いたァーッ!!」