第53話『弥上ヒロトの死』
※暗い、暗い、漆黒…
「──ここ…は…」
ヒロトが目を覚ますとそこは、漆黒の闇に支配される空間であった。
静寂に支配されるその空間に、何やら声が響く。
『ヒロト君…!』
クレアが、ヒロトの名を必死に呼んでいるのがわかる。
その声に応えることはできない。
なぜならヒロトは、死んだのだから。
『我がオーラは、すでに限界か…』
ヒロトの目の前には、ひどく衰弱した鬼神がいた。
体からオーラが漏洩しており、今にも消えそうであった。
『小僧め…貴様がオーラを使いすぎたからだ…』
「…」
ヒロトは、先程まで自分が暴走していたという事実を思い出し、鬼神が衰弱している理由にも納得がいった。
『貴様がオーラを使いすぎたせいで、ワシとうぬの両方の身を滅ぼしたのだ…』
「俺も…──死んだのか」
ヒロトにとっては、オーラが暴発しそれに飲み込まれたというだけの話だ。
ラビットも少女も逃がしたのだが、自分は耐えられなかったらしい。
そして、オーラの使用限度を超えたせいで、ヒロトは死んだのだ。
──突然視界が明るくなる。
ベッドに寝かされたヒロトの視界には、眩しい電灯の天井があった。
体も口も動かず、恐ろしく寒い。
「ヒロト…!大丈夫か!──はっ!?」
「ウソやろ!ヒロトっ!ウソって言ってや!」
10組のコウ、キサクもやってきて泣いていた。
視界が動かないせいで見えないものの、マーニ、サルマ、アシュの泣き声も聞こえてくる。
しばらくして、カリン、メイプルら生徒会もやってくる。
10組のみんなの涙する様子に、生徒会は目を背けながら、部屋に入る。
だが、コウはカリンに質問を投げかける。
「カリンさん…なんで、ヒロトは…」
「…ごめんなさい…私にもわからないわ…」
カリンが横を見ると、メイプルがそっぽを向いて肩を震わせていた。
「すまん…あんまこっち見んなや…」
「…」
カリンは、気の毒そうに目を背けるのだった。
そして、ラビット、クレア、少女もやってくる。
ヒロトが死んでいる様子に、3人は再度胸を痛めながら彼に近寄る。
「「…」」
ラビットと少女は、ヒロトの顔を見下ろし涙を流しはじめる。
そしてクレアは、ヒロトのすぐそばに立って、彼の冷え固まった手を握る。
「うぅっ…くっ…」
彼女はその手を抱き寄せ、さらに涙を流すのだった。
──10組の人間は、当然彼女を知らない。
だが、クレアの流す涙が本気だということは、否応なしに感じ取れた。