第52話『受け入れられない現実』
「まさか…そんなっ──ヒロトさん!ヒロトさんっ!」
「おきて!おねがい!」
ラビットと少女は、ヒロトの体を涙ながらに揺する。
だが、ヒロトの体は動かずに、目は虚ろになっていた。
「オーラを使いすぎたからって…!こんなのあんまりですよッ!」
ラビットはヒロトの鳩尾を、何度も衝撃で圧する。だが、ヒロトはその体に力を戻さなかった。
そして、ついに彼女らは現実を受け容れる。
──弥上ヒロトは今、この場で息をひきとったのだ。
※しばらくして救助隊がやって来て、3人は救助された
街を通って、1つの車が学園の入り口前に到着した。
カリン、メイプルらの生徒会、クレア、リズレもそこにきて、その車が到着するのを見届けていた。
「…」
しばらくして、車からラビットと少女が降りてくる。
ラビットはカリンに気づくと、その目を潤ませて彼女に抱きついた。カリンはラビットが震えているのに気が付いた。
だが、生徒会は全員、ラビットの隣の少女の正体がわからず不思議そうだったが、リズレは少女を目にしてしばし見つめた。
だが、彼は再び車に目を向ける。
「…」
車から救助隊が、何かを運んでやってくる。
ストレッチャーに乗せられた、布で覆われた縦長の物体。
クレアはその運ばれるものに目を向ける。
「…!」
そこでクレアが見たのは、その布からはみ出る足だった。
クレアは、驚いてそこに走り出す。
止める周囲の意見も聞かず、クレアはその布を取り払った。
そこにあったのは…──
「…っ!」
呼吸をしない、血の気のひけたヒロトだった。
「ああ…っ、ぁあ」
クレアは震えた声を漏らしながら、そこに力なくくずおれた。
救助隊たちはそれを気の毒に見ながら、逃げるように進んでいった。
それを見ながら、クレアは倒れて涙を流し、嗚咽をもらしていた。
生徒会もヒロトの死に胸を痛めながら、カリンは震えるクレアの背中を擦るのだった。