第34話『メイプルとの修行』
「はぁーっ…!うォラッ!」
ヒロトはオーラを纏い、腕に集中させて力を込めてメイプルに殴りかかった。
「ふっ…!」
メイプルは身体強化の魔法によって、それを腕を交差して容易に受け止める。
「やるやないの!昨日に比べて対応がはええぞ!」
「それにしては余裕綽々って感じだなっ」
「せやでぇッ…──ぇえエいやあッ!!」
「んのァ…!」
メイプルのパンチがめり込むのを、ヒロトは腕に力を込めて、オーラを一気に蓄積させる。
その腕でメイプルに殴りかかると、メイプルの交差した腕を殴った瞬間、とてつもない威力となり、爆発した。
「なにっ…!」
ヒロトにとっても、これは予想外だった。
「おうっ…」
なかなかのダメージが入ったらしく、メイプルは満足そうに笑っていた。
「──はっはっ!たった5日で随分と成長したのぉ」
「へっ…だろう?」
だが、これでもメイプルは呼吸すら乱さない。
そして生徒会のみんなやカリンの実力も、あのトーナメントからもほとんど未知数である。
「5日間でこれだけの特訓もこなせるようになるとは、これは驚きました…」
カリンもヒロトに、ペットボトルの水を差し出して言う。
ヒロトは思い返すように言う。
「始まった頃はひどかった。メイプルのパンチを受けられずに顔面にめり込んで気絶するわ、シャワー中のところをスズーカに覗かれるわ、メイプルへの怒りのあまり昼食中握ってるコップを割るわ──」
「かなり苦労してたみたいね…」
カリンが苦笑いしていると、生徒会の中でスズーカだけが目をそらしていた。
「俺たち止めたんスけどね…」
「なんかヒロトがタイプみたいで…」
ソードもピースも止めたらしいが、目を離した隙にやられたらしい。
「でも、ヒロトくんの筋肉は日を増すごとにすごくなってますよ」
スズーカが言うそれには、カリンも興味があるようだ。
「…見てもいい?」
「べ…別にいいけど…」
ヒロトは上のウェアを脱いで上半身を見せる。元から素晴らしいナイスバルクは、5日間にわたる超ハードな特訓によって、驚くほどに進化を遂げていた。
「すごっ…どうなってるのこれ」
「筋肉ってこんなキレイにつくの…?」
「腕の筋肉もすごい…」
フラワー、チーサン、アキニームという美少女3人に躯を見られるのは正直照れくさい。
だがカリンだけは、少しだけ様子が違った。
「ヒロトくぅん…スゴいですねぇ、この筋肉…」
「ッ!?」
ヒロトは驚く。
舌舐めずりをするカリンは、ヒロトを優しく抱いて脇腹を撫でた。
「ちょっ…何だっ!?」
状況の察せないヒロトに、メイプルは笑って言う。
「すまんのぉヒロト、カリンはムキムキの男に目がないんや…」
「生徒会は随分と個性派だな──っていうか、いい加減離してくれねえか!?」
「もう…しょうがないですね…」
ヒロトがようやく解放されると、そのジムに一人少女がやって来る。
「特訓中失礼します…」
ラビットだ。
彼女はヒロトの特訓の調子が気になるらしく、カリンに質問する。
「ヒロトさんの調子は順調ですか?」
「かなりいいですよ。お互いに少し油断するだけで、足元を掬われるくらいに」
「…」
そして、ラビットはヒロトと再び見つめあう。
生徒会もこの二人の関係には、どこか興味がありげだった。
だが、ラビットはそこから目をそらし、話を続ける。
「どうやら、学園長がわたくしとヒロトさんに、学園長室に来てほしいと」
「学園長が…──ヒロトくん、ラビットさんと一緒に向かって」
「お…おう」