第31話『トレーニング場』
「ここが、二人のトレーニング場よ」
カリンがドアを開いたその先にあった光景に、ヒロトとラビットは驚きの声をあげた。
ボディービルダーなら血涙を流すほどの充実した設備。スポーツジムなどの比ではなかった。
「どうやってこんなものが…?」
生徒会の中から、フラワーとチーサンが答える。
「えっと、学園長が生徒全員で体力を向上させるって意味でトレーニング器具を用意したんだけど…使わなかったって」
「こんだけのハードな器具を使うのも少ないしねぇ」
「マジか」
これだけの充実した器具を活用しないのは、ただの宝の持ち腐れであろう。
「それでもいいでしょ?ヒロトくんの…その自慢の筋肉を鍛え上げるには」
カリンがヒロトを見て言う。
「…ふっ、そうだな。──えーっと」
ヒロトの目に止まったのは、パンチングマシーンであった。
「どうやって使うんだこれ」
ヒロトが考えていると、生徒会の中からソードとピースが出てきて、そのパンチングマシーンを殴る。
かなり強めにいったらしく、132,127と表示されている。
「生徒会っつうだけあって、結構強いなぁ」
「へっ、だろう?」
誉められて嬉しそうな二人の次は、カリンも本気でやってみる。
「よいっしょっ!」
スコアは、91。ヒロトは結構驚いていた。
「えっ、結構あるな」
「そうでしょー?──ラビットさんもやってみる?」
「は…はい!」
ラビットも思いっきり拳を握り、思いっきり叩く。
「えいやっ」
気の抜ける声とともに、パンチを叩き込む。
小さな音とともに表示された数値は、36。
「フっ…」
「あんまりもの殴らないんですよ!」
鼻で嗤うヒロトにぎゃあぎゃあと抗議するラビット。
それを見るみんなは、かなり愛称がいいのではないかと思っていたのだが。
「じゃあヒロトさんやってくださいよ!」
「いいよ?」
ヒロトが腕に力を込めると、その腕が筋肉で膨らむ。深呼吸をし、足を後ろにやる。
「おうらっ!」
パンチングマシーンが大きく震え、数値が表示される。
「…405…!?」
「どうなってんの…」
「わたくしの…18倍…」
困惑する生徒会一同とラビット。
「どきいやヒロト。次はワイの番や」
みんなが驚愕するなか、メイプルもヒロトを退けてぶん殴った。
「アーっりゃあーッ!!」
表示された数値は、449。
「くっそーっ!敗けたぁー!」
「どうやお前ーっ!」
「──恐ろしい次元で争わないでくださいっ!」
ラビットはヤ◯チャ視点で感想をあげることしかできなかった。
ヒロトとラビットは、カリンにそのジムを通った奥へと案内された。
「ここが、一番紹介したいところよ」
ドアを開けると、そこにはさらに下に続く階段があった。
それをみんなで一緒に降りると、またドアがあった。
カリンはそれに鍵を通し、開ける。
「まだ暗いわね…」
そこは暗くて何も見えなかったが、カリンは少し奥に進んで電気をつける。
──カチッ
明かりがつくと、その向こうには想像以上の光景があった。
「うおーっ」
「…!」
これには二人して驚く。
そこには、ひとつのトラックグラウンド半分にも負けないような、恐ろしい広さの大広間があった。
二人は階段を降りて、そこに立つ。
「いいところだな」
そこで、カリンがひとつ教える。
「実はこの石煉瓦製の床とか壁には、壊れにくくなるように呪いがかけてあるの」
「おおっ…じゃあ、よっぽどのことがねえと壊れねえってことか」
「核兵器ほどの威力でも滅多に壊れないわよ」
「…」
唖然とするヒロトとラビットに、カリンはニコニコするのだった。