第29話『10組のみんなの反応』
「大丈夫かなあいつら…」
10組のドアの前に立ちながら、ヒロトはどうやって顔を見せようかと悩んでいた。
「あいつらが逃げ惑うことがあるとマジで恐いんだけど」
本当にそういうことがあるのがなぜか想像できた。
メイプルに怒りを高められ出てきた鬼神は、かなりの恐怖の対象になったはずである。
「どうするかね…──ん?」
ヒロトは、ドアが空いてそこからコウとキサク、マーニ、サルマ、アシュが覗いていることに気付く。
「た…ただいま」
「「「「「おかえり…?」」」」」
別に気にせず出迎えてくれた。
「──どっ…どこも怪我してないやんけ!?」
キサクとみんなはヒロトの体を見回して驚愕する。
鬼神のオーラを染み込ませ傷を回復したのだから、当然である。
「──あのオーラ何やったん!?マジかっこよかったんやけど!」
「いろいろと突っ込みどころの多い反応だが今回は大歓迎だぜマーニ」
ヒロトのオーラは、その怒りの対象に恐怖を与える技だ。周囲のみんなには、巨大な鬼が現れたようにしか見えない。
「なあ、あれって何だったんだ?」
「…俺の中に宿ってる鬼神。怒りで発動すんの」
「ツッコミが追いつかねえな」
だが、ヒロトはみんなを見て言う。
「──…でもよかった。お前らがあんまり怖がってなくて」
「…え?」
ヒロトが心底嬉しそうに笑うのを、みんなは不思議そうに見つめていた。
「まあとにかく、これからもよろしくな!」
※その次の日…
「じゃあ、今日の授業はここまでだな」
ガンダーの言葉で、みんなが背筋を伸ばす。
「よしヒロト、食堂行こうぜ。キサクも」
「ええやよ~」
だが、とうのヒロトは何かソワソワしていた。
「どしたん?」
「…ごめん、今日は無理っぽい」
「え!?どうして」
キサクは尋ねるが、返答はない。
釈然としない二人。
「えへへっ…ご飯っ!ご飯やぁ♡…──ウワァアアアアアアッ!!」
夕飯に意気揚々としてドアのぶに手をかけたマーニは、布を裂くような悲鳴をあげた。
「どうしたマーニ!?」
転がったマーニに駆け寄ったみんなも、思いっきり絶叫した。
ドアの小さな窓から覗けた光景に驚いたのである。
「ヒロトぉおお出て来いやぁああッ!!」
そこにいたのは、窓にに顔面を押し付けるメイプルだった。
「うるせえな!迷惑を考えろ!」
ヒロトが乱暴にドアを開けると、10組一同はメイプルの後ろにもいる信じられない面子に目を見開く。
ムーン家の生んだ天才ラビットに、昨日恐ろしいまでの実力を見せた、カリンを含む生徒会。
10組だけでなく、この学校の生徒が大きく驚いていた。
「弥上くん、約束の時間ですよー」
生徒会長カリンが呼ぶと、それにヒロトが出てくる。
「…これはいったいどういうことだ?」
ガンダーですらも、訳のわからない様子である。
「俺こいつらと用事があるんすよね」
「「「「「──“こいつら!?”」」」」」
10組はヒロトから出たその一言に騒然とする。
生徒会は一切食いつかなかったが、ヒロトはその面子の中に平気で混じっていった。
メイプルを先頭にしたその一列は、生徒たちの間をたびたびすり抜けていった。