第28話『トーナメントの真相』
5人は、学園長室で話していた。
ヒロトが、リズレのある一言に呆れて声をあげる。
「俺とラビットの実力を測っただぁ~?」
「ああその通りさ。北校舎から生還した君たちの実力が知りたかったんだ」
ヒロトは今回のそれの真相を知って、ますます呆れた様子だった。
「じゃあ言葉で伝えることもできたはずだろ!こんな戦闘狂クソ女にボコされる身にもなってみろ!」
「おいクソ女とか言うなや!」
「黙れェ!」
「おうおう言うやないか!表でろや!しがらみを切ったお前と全力で戦ったるわ」
「まあまあ…落ち着いてくださいよ」
抗議する二人を何とかなだめるカリン。
そこで落ち着いたと思われたが、メイプルだけはそれを止めず、ヒロトはアッカンベーといった様子だった。
リズレは二人に向けて頭を下げる。
「その件については、私も本当に悪かったと思っている。君の意見も無視して、私の自分勝手が、君の秘密を全生徒に明かしてしまった」
「わかったならいいがな…つうか、あの夜のことを盗み聞きとは趣味が悪いなぁ」
それを聞いて、ラビットの表情も少し陰った。
リズレはそのラビットの様子に罪悪感を覚えた。
「悪かった…ではお詫びとして、君たち二人の要望を聞き入れようと思う」
「学園長…」
そこでヒロトがお願いした要望は、鬼の力の判別と解析であった。
「…なぜそんなものを?」
「それは…俺が魔法を…えーっと」
ヒロトは自分が日本人だということは、メイプルとカリンのいるこの状況下では言いづらかった。
ラビットもそれを感じ取っていた。
だが、カリンは予想外の一言を放つ。
「日本という国の人なんでしょ?魔法という文化のない別次元の世界の…」
「なっ…何で知ってるんだよ!」
驚くヒロトに、メイプルは笑いながら言う。
「今回のトーナメントは、リズレからお前の詳細を知らされてから行われとるけぇのお」
「…どこまでも勝手だなぁリズレ」
「いやぁー、すまないすまない」
笑って言うリズレにヒロトは呆れつつ、その要望についての説明を続ける。
「俺に、魔法を教えてくれないか?」
その言葉に、ラビットは驚く。
「ひ…ヒロトさん!それって、カリンさんやメイプルさんにも手を借りるということですか…?」
ラビットの予感は的中していた。
だが、ヒロトは悪びれない様子だった。
「何か問題でもあるのかぁ?」
「はぁ…?」
ヒロトは笑いながら言う。
「こんだけ迷惑かけられたんだし、てめえら二人にもこっちから迷惑かけさせてもらうぜ」
ヒロトのその表情を見て、メイプルとカリンは目配せをする。
そして、カリンの方から答えが返ってきた。
「いいですよ。手取り足取り教えてあげます」
「…っしゃあッ」
ヒロトは嬉しさでガッツポーズをとる。
「どれだけ無謀なお願いをしてくるのかヒヤヒヤしましたよ」
「よかったわー。スケベーな依頼とかするやつかと」
「俺をどんな変態だと思ってるんだよ!っていうか、今回のお願いはまんざらでもないって感じか?」
「ああ、大歓迎やで」
すると、二人はラビットにも目を向けた。
「ラビットはどうするんや?」
「えっ!わたくしですか!」
「魔法のレクチャー、お前も受けるんかって聞いちょるんやないかぁ」
「!?──はっ…はい!」
学園屈指の実力者のレクチャーだ。喉から手が出るほどに欲しいに決まっている。
リズレはそのやりとりを面白そうに見つめながら、この場を終わらせた。