第27話『鬼神のオーラ再び』
ラビットも、コウもキサクも、生徒会の全員すら、それに言葉を失う。
カリンもメイプルも、突然一歩後退した。
そこで他と違った反応を見せていた者が一人いた。
「…ヒロト…くん」
クレアはただ一人、その鬼の出現に溢れんばかりの涙を流していた。
ただしその理由は、恐怖とは別にあった。
「…フゥ…」
ヒロトがため息をつく。
すると、鬼神のオーラは消え去った。
「「「「…?」」」」
予想外のそれに、ラビットやクレアやコウとキサクら10組、メイプルとカリンも含め、全員が呆気にとられた。
「…何でやめたんや?」
ヒロトは、落ち着いた目元でメイプルを見つめた。
「──そうだ、北校舎から生き残れたのは、このオーラがあったからだ…」
「…」
ヒロトはメイプルに近づきながら続けた。
「確かにこの力は強力だ…でも、だからこそ無闇に発動するものじゃない。…俺が北校舎でこれを使ったのは、自分の力ではレベル12の実力には及ばなかったからだ」
「だからしがらみを切らんかったんか」
「ああ。俺がこの力を出すことで、きっと誰かが傷つくんだよ…」
その言葉の意味を知るラビットは、なんとも言えない表情になってしまっていた。
ヒロトはメイプルに近づいて、どういうわけかメイプルに手を差し出した。
「これは…どう言うことや?」
「せめてここは…引き分けってとこでどうだ?お互いの実力はわかったっつうことで」
「…まあ、ええやろう」
メイプルは、ヒロトの手を握り返した。
すると、ヒロトの口角が歪んだ。
「…っと、言うと思ったかー!」
ヒロトは目を開けて笑うと、防御魔法を解いていたメイプルの頭に、思いっきりの頭突きをしてみせた。
──ごチンッ!
「痛ったあーッ!」
痛む頭を抱えながら、メイプルはヒロトを見直す。
「どうだクソ女ッ!これでおアイコだぜ!」
ヒロトも腫れた頭を抱えながら、ニカッと笑っていた。
そしてメイプルも…──
「ひひっ…──アーッヒャッヒャッヒャッ!」
その二人は、呆然とする一同と似つかず哄笑していた。
「──その勝負、そこまでっ★」
その場にいた全員が、その声のした方に目を向ける。
スタジアムの高台には、リズレがたっていた。
困惑する一同の中には、ヒロトとラビットも含まれていたが、カリンとメイプルは驚かず、予想的中といった様子だった。
「ヒロトくん、そしてラビットくん、カリンさんメイプルさんと一緒に来てちょうだいね☆」